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第4章 3 幸せを感じない理由  

「さて・・・出掛けようかなぁ・・・。」


ショルダーバッグを肩にかけて日傘をさすと里香さんに前もって言われた通りに歩いて町まで出かける事にした。

空は青く澄み渡り、鳥のさえずりが聞こえてくる。綺麗に並べられた石畳の上を歩きながらポツリと言った。


「うん、里香さんの言う通り・・・歩くのって気持ちがいいかも。」


クルクルと日傘を回しながらぶらぶらと10分ほど歩き続けているとやがて屋台通りが見えてきた。今日は日曜と言う事もあり、時刻はまだ9時なのに通りは人込みで溢れていた。


「へぇ~日曜日だとお店の種類も増えるのね。」


普段では見る事のない、子供が好きそうな綿飴の店や、リンゴやイチゴに甘いチョコや飴をかけて売っている屋台、当てくじのお店・・・見ているだけでワクワクしてくる。そしてふと思った。


「誰かと一緒だったら楽しいのにな・・・。」


思わず口に出していた。

よくよく振り返ってみると私には恋人もいなければ、友達と呼べる存在も・・・。


「そっか・・・いまだに友達も恋人もいないから・・・幸せを感じていないのかなぁ・・・。」


空を仰ぎ見るとポツリと呟く。

だけど、里香さんにだって里香さんの生活があるのだから・・・私としては何とか元の世界に帰してあげたいけれど、こればかりはどうすることも出来ない。


「はぁ・・・困ったなぁ・・・。」


溜息をついたところで、背後から突然声を掛けられた。


「ロザリアちゃんじゃないか。」


「え?」


慌てて振り向くと、そこは何とナッツさんの屋台の前だった。


「ナッツさん!」


「だから俺はナッツって名前じゃ・・・まぁいいか。ロザリアちゃんには何だかその名前で呼ばれていたい気がするしね。」


何故か意味深な言い方をする。


「今日は屋台を出しているんですね。」


「そうだよ、でも午前中で屋台は畳むつもりだけどね。午後は別の用事があるから。」


「え?そうなんですか?」


別の用事・・・何だろう?気になるけど・・・でも私とナッツさんは何かを親しく聞けるような間柄じゃないし・・。


「ところでロザリアちゃんは誰かとデートなのかな?」


ナッツさんはニコニコしながら私を見て尋ねてきた。


「え?あ?ち、違いますよっ!デートなんて・・する相手もいませんからっ!」


慌てて手をブンブン振る。


「へぇ~そうなんだ・・。てっきりめかしこんでいるから、誰かとデートなのかと思ったよ。そうか・・・でもデートする相手がいないのか・・。でもロザリアちゃんならデート相手の一人や二人・・・すぐに見つけられそうだけどね?」


ナッツさんは頬杖を突きながら言う。


「い、いえ・・・そ・そんなまさか・・わ、私なんて・・。」


そこへ小さい男の子を連れた女性がナッツさんの屋台にやってきた。


「いらっしゃいませ。」


ナッツさんが笑顔で対応する。


「えっと・・・ピスタチオ200gとカシューナッツ300g、そしてドライマンゴーを200g下さい。」


「はい、ピスタチオ200gとカシューナッツ300g、そしてドライマンゴーを200gですね?少々お待ちください。」


そしてナッツさんがケースを開けて、トレーによそっていく姿を見ながら私はそっと屋台を後にした。忙しそうだから邪魔しちゃ悪いものね。


「よし!それじゃ・・服でも買いにいこうかな!」


そして私は屋台通りを離れて洋品店へと足を向けた―。


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