第2章 4 馬車に乗って学校へ
「え?ロザリア様・・・な、何故馬車の中では無く、御者台に座るのですか・・?」
御者を務める男性は『ネロ』と言う名前だった。ネロさんは何故か隣に座った私をオドオドした目つきで見る。うん・・・使用人さん達の態度を見る限り、ロザリアは相当我儘お嬢様だったのだろう。
「あ、実はね。これからダイエットに励むつもりなの。食事制限と運動ね、だからこれからは歩いて学校へ行こうと思うからその道のりを覚えたくてね。」
「え?そ、そうなのですか・・・。それでは私はお役御免と言う事に・・・。」
途端にネロさんが悲し気な顔をする。
「え・・?ひょっとして・・・ネロさんは私専属の御者だったの・・?」
「はい・・・そうです・・。今ここでクビになったら、年老いた母と病弱な妻とまだ成人しない2人の子供を養っていく事が出来ませんっ!」
妙に具体的な話をするネロさん。そっか・・私が馬車を辞めればネロさんが職を失ってしまうのね・・。
「あ、そ・それならこうしましょ!雨の日は馬車で送ってもらう、後遅刻しそうな場合とか・・大丈夫!ネロさんの雇用なら守ってあげるから?ね?」
「ううう・・・絶対ですからね?約束して下さいよ?」
ネロさんは涙目で私を見る。
「ええ、勿論!だから安心してね?」
「分りました・・。それでは出発致しましょうか。」
そしてネロさんは馬に軽くムチを当てると馬車を走らせた。
***
ガタゴトガタゴトと揺れる馬車の上で私は辺りの景色をキョロキョロと見渡した。
良かった・・・・森の中を走られでもしたら歩いて通学出来ないなと思ったけども、ロザリアの屋敷は町の中にあったらしい。これなら歩いて通学できそうだ。
「ネロさん。家から学校まで何キロ位あるのかな?」
舌を噛まないように隣に座るネロさんに尋ねてみた。
「そうですねえ・・恐らく片道2Km程かと思いますよ。」
「そっか・・2Kmか・・・。」
なら歩くのに丁度良い距離かな。それにしても・・。
「ネロさんも知ってるかもしれないけどさ、私一時死にかけて・・目覚めたら記憶喪失になっていたわけよ。」
「はい、存じておりますよ。」
「馬車ってさ・・・こんなに揺れるものだっけ?」
「ええ、そうですよ。」
「うん・・やっぱり車輪にゴムが無いから揺れるんだろうな。ゴムが有れば衝撃を吸収してくれるけど、木や鉄だけの車輪なら道だって傷つくし、振動が響き渡るもの。」
「ロザリア様・・・どうされましたか?」
ネロさんは不思議そうに尋ねて来る。
「うん。ネロさん。この馬車・・・もっと快適にしたいと思わない?」
「快適・・ですか。例えば?」
「うん、例えばね・・・殆ど揺れを感じない馬車とかさ。」
すると俄然興味を持ったのか、ネロさんが話に食いついて来た。
「ロザリア様、お願いですっ!実は私は酷い腰痛持ちなんですよ。このガタガタ揺れる振動が腰に響いて実は大変つらかったのですっ!」
「うん・・確かにねえ・・御者台には背もたれもないし、雨よけもないしね・・・。椅子だって堅いし・・。そうだ!この町には馬車を作っているお店はあるの?!」
「ええ。ございますよ?」
「そっか!それじゃ、帰りに2人で馬車を作っているお店に行きましょうっ!そこで発注するのよ!こんなデザインの馬車にして下さいって!」
「おお!それは素晴らしいアイデアですねっ!」
ネロさんも乗り気だ。でもそれは当然かもしれない。何せ彼はこの先もずっと御者の仕事に生涯を捧げるのだろうから。フフフ・・・放課後が楽しみだなぁ・・・・。
私は登校前から既に放課後の予定で頭がいっぱいになっていた―。




