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第1章 9 嫉妬して欲しいの?

ガラガラガラガラ・・・・。


「へえ~・・すっごーい!これが馬車なんだ~。でも乗り心地は悪いね!」


揺れる馬車の中で舌を噛みそうになりながらも私は窓から見える景色に夢中になっていた。


「「・・・・。」」


そんな私にイラついているのか、向かい側に座るジョバンニとセレナは何だか険悪なムードで私を見ている。


「そうか・・・道が舗装されていないのも原因の一つなのかもしれないわ。そうだ。この車輪にゴムを取り付ければ振動を抑えられるじゃない。あ・・でもこの世界にはゴムなんて存在しないのかなあ・・・。でもゴムの木位はあるのかも・・。」


ブツブツ振動の激しい馬車の中で呟いていると、見るに見かねたのかジョバンニが声を掛けてきた。


「おい、さっきから何をブツブツ言ってるんだ?うっとうしい・・・。それに馬車に初めて乗ったみたいな言い方だな?今まで散々馬車に乗って来たと言うのに・・。」


「だから・・・私、一時的な記憶喪失になってしまったって言ったでしょう?当然馬車に乗った記憶も無いわけよ。それにしても・・・乗り心地悪いなあ・・・。」


窓の外を眺めながらため息をつくと、乗り心地が悪いと言われたことが気に入らなかったのか、ジョバンニが声を荒げた。


「あのなあ・・・この馬車は特注品なんだぞっ?!普通の馬車よりもずっと乗り心地はいいんだっ!それにゴムならあるぞ!」


「え?嘘?ゴム・・・あるの?」


驚いて尋ねるとジョバンニは腕組みすると言う。


「ああ。ゴムはある。だがな・・・ゴムなんて子供が遊ぶボールのおもちゃで利用されているだけだ。あんなものそれ位しか使い道が無いだろう?」


「何言ってるのよっ!あんたはゴムの素晴らしさを知らないから・・そんな事いうのねっ?!」


思わず馬車の中で立ち上がり、バランスを崩しそうになる。途端に大きく傾く馬車。


「キャアッ!ジョバンニ様っ!」


セレナはチャンスとばかりにジョバンニにわざとらしく掴まり、ジョバンニはまんざらでもなさそうにセレナをギュッと抱きしめ、チラリと2人は私の方を見た。

は~ん・・・つまり・・この状況は、わざと自分たちの仲良さげな様子をロザリアに見せびらかして、反応を楽しんでいるのだな?だが、あいにく今の私はロザリアではないし、本人は眠って?いるのだから。


「おい・・お前、この状況を見ても・・何とも思わないのか?」


ジョバンニは私に尋ねてきた。


「え・・?ジョバンニ様・・?」


セレナはジョバンニに抱きしめられたまま、不思議そうジョバンニを見る。


「べっつに~・・・。何故2人がいちゃついているのを見て、どうにか思わないといけないの?まあ・・しいて言うなら、あまり人前でそう言う事はしない方がいいかもね。恥ずかしくない訳?もう少し場をわきまえたほうがいいと思うけど?」


しれっと言うと、途端にジョバンニは顔を真っ赤にさせるとセレナを離して、抗議してきた。


「な、何だ?お前のその生意気な態度は!大体・・・場ならわきまえてるぞっ!」


「ほーう。一応まだ婚約者の私の前で別の女性を抱きしめる・・・。これって場をわきまえている事になるの?」


頬杖をついて、窓の外を眺めながら私は言った。


「なるほど・・その言い方・・・やはり俺とセレナの仲を嫉妬しているのだろう?」


ニヤリと笑いながら、再度セレナを抱きしめる。


「ジョバンニ様・・・。」


セレナは頬を赤くしてジョバンニの胸に頬を押し付け、これ見よがしに私をチラリと見る。だが、そんな事をされても私の心は少しも動じない。


「何故、あなた方に嫉妬しないといけないのよ・・・。」


「「え?」」


2人は同時に声を上げて、私を信じられないものでも見るかのような目で凝視する。


「私はそれよりも馬車の乗り心地を改善する方法を考えたいから到着するまで話しかけないでよ。全く・・・鬱陶しい人達ね・・・。」


そしてため息をつくと再び、窓の外へ目を向けた。







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