夕食前は心穏やかに過ごしたかった!
レッサーエルフの歴史を聞き終わったあと、僕たちはあの穴をどうするかについて話し合った。
一度はその先にあるという秘密の入り江を見ておきたい。
だけどもう今日は日も暮れている。
穴の中の洞窟はどうせ光が届かないのだから関係ないかもしれないが、流石に今日は聖獣様のために色々やったり、村の人々の健康診断をしたりと大変だった。
特にテリーヌは見た感じではわからないが相当疲労をためているだろう。
それに明日は村人と聖獣様の許可を得てから着手する予定だが、泉の手前まで作った空中回廊からこの村までの道を整備するつもりでいる。
空中回廊の出口から泉までの道と、泉を渡る橋。
そしてそこから村まで馬車が通れるように出来れば、拠点……いや、領都からこの村までの道が出来ることになる。
そうすれば領都とこの村の間で色々やり取りも可能になるだろう。
村長を含め、レッサーエルフの人たちとの交渉はどうなるかわからない。
突然外からやってきた人間が「この地は王国の領土で、僕はこの島の領主として任命された。これからは君たちは領民だ!」と言っても反発されるだろう。
なので、これからじっくりと彼らと話し合って、領民になってもらえるように説得しないといけない。
もしそれがこじれるようであれば、僕より先にこの地に住んでいた彼らを尊重して何らかの対応をしなければ。
「それでは明日、この村の皆さんと改めて話をさせてください」
「わかりました。ところで今日は突然の来訪で何も用意できませんでしたので、是非明日は宴でも開かせていただきたい」
「宴ですか?」
「はい。それではまた明日お伺いします」
村長はそれだけ告げると立ち上がり、一礼してから家を出ていく。
「レスト様。それでは私は夕食の準備をいたしますね」
「手伝いますぞ」
『ふむ。では我はレストと話でもして待つとするか』
「いや、僕も手伝うよ! むしろ手伝わさせて!!」
顔を寄せてきた聖獣様から逃げるように立ち上がると、僕はテリーヌたちの後を追った。
『ならば我も』
その後ろを聖獣様が追いかけてきて――
「これでは調理ができないではありませんか。キエダと私だけで十分ですからレスト様と聖獣様は部屋でお待ち下さい」
無情なテリーヌのその言葉に僕たちはすごすごと部屋に戻るしか無かった。
『レッサーエルフの娘たちはエルフの血を引いているだけあって美しいのだが、多種族の血が混ざることによって純エルフの刺々しさが薄まってそれがまた――』
「ソウデスカ」
『もちろん我は純エルフと違い種族差別などせぬぞ。様々な種族の娘たちには様々な魅力がある。聞きたいか?』
「イエ、ベツニ」
『遠慮するでない。まずはドワーフ族の娘たちだが――』
それから僕は、夕飯の準備が終わるまでの間ずっと聖獣様による『どんな種族であろうとも、その子たちがキャッキャうふふする姿が如何に尊いのか』という話を延々と聞かされる羽目になったのであった。
聖獣様。そういうとこやぞ。




