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ウデラウ村へようこそ!

「せ、聖獣様!?」


 コリトコの住んでいた村に向かう途中、僕らは途中で出会った村人に声をかけて村長とコリトコの父親への連絡を頼んだ。


 最初その村人は僕たちが歩いてくるのを見てかなり驚いて、そして落ち着いた後も話すら聞いてくれなかったのだが。

 それもそのはずで、コリトコによればこの島にはレッサーエルフの村が一つあるだけで、他に人は住んでいないはずらしい。

 なのに、突然見たことも無い人たちがやって来たのだから驚くのは無理もない。

 結局彼が話を聞いてくれるようになったのは、後から遅れてやって来た聖獣ユリコーンと、その背に乗ったコリトコの姿を見てからだった。

  

『うむ、久しいな村長よ』

「お久しぶりです聖獣様。お話するのはいつ以来でございましょう」

『お主がまだ青年だった頃であるから――』


 聖獣様が村長に長話を始めたので、その間に僕たちはコリトコの父親であるトアリウトに事情を説明していた。

 最初コリトコを見た瞬間に走り寄って、その体を抱きしめながら涙を流し、なんどもコリトコに謝罪の言葉を継げていた彼だったが、コリトコから僕たちのことを聞くと、泣きはらした顔を拭いてから立ち上がり深く頭を下げた。


「偶然僕たちに彼の病気を治せるだけの力があったに過ぎません」

「……」

「貴方が自分の息子を村から追い出した負い目を感じていらっしゃるのは重々承知の上で言わせていただきますが」

「はい」

「これからはそのことは忘れて、昔のようにコリトコと親子で居てあげて下さい」

「ですが……」

「それがコリトコの願いなんですよ。彼は村を追い出されたことを恨んではいません。あれはこの村を守るために必要な決まり事だったと彼も理解しているんです」


 そう。

 テリーヌによるとスレイダ病は一度発症すれば後はどんどん悪化して体力を奪って、末期になると感染力を持ちだすという特徴を持っている。

 そしてその病を治す方法はこの村にはない。

 村の人々が唯一出来ることは、スレイダ病を蔓延させないこと、それだけだったのだ。


「でもこれからは違う」

「えっ」

「これからは僕が。いえ、僕たちがそんな風習が必要ない様にしてみせます。この薬でね」


 僕はそう言ってポケットからスレイダ病の特効薬が入った瓶を取り出す。


 そう、彼らにとって未知の病気であった『スレイダ病』は、今はもう未知ではない。

 僕たちはその特効薬の作り方を知っている。

 もちろん僕がクラフトせずとも、テリーヌが書き出したレシピさえ知っていれば誰でもあの薬は作れるのだ。


「なので、これからこの村の村人全員をどこかに集めてもらえませんか?」

「私の見立てでは、発症に至らなくても潜在的にスレイダ病の病原菌に掛かっている村人が何人かいるはずですので、全員診断させていただきたいのです」


 そうテリーヌがトアリウトに診断の必要性を説明すると、彼はコリトコの頭を撫でて「皆を呼んでくる」と告げて村の中へ駆け込んでいく。

 その背中を見送った僕たちは、さっそく簡易診断所を作るために動き出すことにした。


 なお、延々と聖獣様の長い語りを聞かされていたらしい村長が、僕たちに助けを求めるように駆け寄ってきたのはそれからしばらくしてのことだった。

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