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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

咲きどき。

作者: 天狗
掲載日:2020/09/12

特筆すべきことはなし。

 筆者はよく授業の暇なときに、自問自答していたのだが、そのなかでひとつ興味深いのが思い浮かんだ。欲望にまみれた人間か、無欲な人間。どちらが優れているのか、についてである。いかにも中~高校生が思い浮かびそうな、一般的で、誰もが一生に一度くらい考えそうな課題である。大抵こういったハリボテ哲学は、考えていると自分に嫌気が差してきて眠くなって考えることをやめてしまう。しかし私は(自慢ではないが)これを半年ほどずっと考えていたのである。最近暇だからなのもあるが、わりとめんどくさがりやな私にとっては、とても珍しいものである。だが、答えと言うものは未だ出てはいない。それもそのはず。本来哲学とは明確な答えなんてものは存在せず、個人の考えに一任されているからだ。この不変の理について、年を取っても取っても、理解できないでいる。脳では理解できているものの、体では理解できていない、といったとこであろう。なので今でも寝る前に、ふとこの事について考え出してしまい、寝れないなんて言うこともしょっちゅうである。どうして私はこんなに誰もが考えうる哲学にとりつかれてしまったのか… 

 ここからは私の幼少期のお話し。


             無欲


 「誕生日プレゼントは何がいい?」

パパはいつも冬ごろになると思い出したかのように聞いてくれる。私の誕生日が近くなってくるといつも聞いてくる。母を幼い頃に亡くし、男手ひとつで私を育ててくれた。そんな私の返事は決まって

「今特に欲しいのないから、今度買って。」

である。はたしていくつぶん滞納されているだろうか。決して

「要らない。」

とは答えない。というか答えたくない。パパには迷惑をかけたくなかった。故の行動である。ここで

「要らない。」

などと答えてしまうと、パパに無理しているのだと悟られてしまい、よけい悲しませてしまう。私なりの配慮といったところだ。他にも、クリスマスプレゼントは誕生日プレゼントと兼用にしたり、欲しい文房具や服といったものは、お小遣いでやりくりしていた。1ヶ月たったの数千円のレベルだから、友達と遊ぶお金なんてない。もっとも私には友達がいない。というか、要らないに近い。これにはちゃんとした理由があり、ひとつが純粋に時間の無駄。ふたつは人間と一緒にいたくない。みっつが人間との相性の悪さである。強がってるわけではない。好きなアイドルも、歌も、ゲーム、食べ物、何もかも興味が無さすぎて、話しかけてきた子すべてに苦い顔をされた(そんな顔が好きでたまらないのだが)。そしたらクラスのみんなは、私を変人?扱いしてきたのである。最初はそれをネタとか、わざとそうやって周りの人の興味を引き付けたくてやっている、と勘違いした人間が喋りかけてきたが、素でそれなのですぐに私の周りから消えた。そんなこんなで、入学してから1ヶ月でひとりぼっちである。まぁ平均していつもこのくらいでぼっちになっていたから、今年もなんなくやっていけそうだ。話はまた家庭の話に戻してしまう。

 唐突だが、パパの稼ぎが悪いらしい。確かあのとき。パパが酒でベロンベロンに酔って帰ってきたとき、そのとき私は偶然ナンプレを解いていたのだが、私の前で正座して、急に仕事の愚直とやらを話だし、終いには

「実はなぁ…あんま家にお金ないねん…」

と言った。というか言ってしまったに近い。今思えば、子供にそんなこと言ってはならんだろうと。子供によけいな心配させないようにすんのが親の責任だろって。けどそのときの私は、私のわがままとか、そう言ったことを言うのは控えようって思ってしまった。この家には二人。たったの二人。だからこそ二人で節約すればいいんだ。そう思って、誕生日プレゼントもクリスマスプレゼントも、私の身の回りのものも、そうやってどんどん自分の欲望を押し込んでいった。最初はというもの、とても辛かった。まだ幼い私に取って、欲望はまだむき出しの時期である。けどそんな自分に鞭打って、何とか2年くらいこらえたら、意外にも欲望がなくなった。というより興味がなくなってしまった。そしたら、今まで大切にしてたおもちゃ(ボロボロの人形)、友達、全部が無駄なものと思えて仕方なかった。だってどうせ死ぬじゃんって。

今思えば、そんな小学二年生くらいが言いそうなひねくれた考えを、高校生が終わるくらいまで引きずっていた。


             序章


 確かあれは、高校一年生の時だったか、お昼ご飯を食べたあとの無性に眠たい現代社会の時間だったとき、先生は

「どうして宗教は生まれたんでしょう」

と、みんなに質問した。ちょうど宗教的な所を勉強しており、その質問をするのは分かる。しかしみんな眠い中どうしてそんなくそくだらない質問をするのか。余計眠くなるだけではないか。みんなせっせかせっせかと先生のよくわからん解説を板書して、あくびを圧し殺していると言うのに。まるで私は先生が生徒に間接的に寝ろと言ってるようにしか思えない。思えば、非常にこの先生は無能で教科書の余計なところまでも解説しまくり、量の多い板書をさせ、かといってテストには出さない。しかしたまにそういうところから出題しやがるから、みんな全て写さなきゃならない。受験に出るわけでもないのに。非常に無駄。こいつは無駄の塊だ。

 まぁ、彼の批判はここまでにしておいて、質問の答えである。みな板書に集中しすぎで、ぽかん となっている。

「誰でもいいぞ。間違ってもいいからな」

いやいや、そんなこと言うとみんな挙手しないから。ほんとにわかっていないな。そうして沈黙が一分くらい続いた。だいたいわかってる。こんなとき私が指される。

「じゃぁ○○、何でもいいから答えろ」

私は心のなかで舌打ちをした。周りに聴こえてなければいいが。私がいつも成績のために猫被ってるからって、都合のいいときだけ、利用しやがって。(まぁ私も先生を利用しているが)しかも「答えろ」って何様だよ。てめぇの力量不足でこんな状況作っといて、偉そうにできる立場でも何でもないのに。まぁここは成績の為。(成績悪いと父に心配されるから)当たり障りのないことを私は言った。

「お金儲け」

そう答えた。一瞬静まり返り、やんだかと思えば、みんな一斉に笑い出した。吹き出すやつもいれば、腹を抱えるものまで。何故?そんな変なことを言ったか?

「お前ww いいこと言うじゃん。」

と先生が言うとさらにみんな笑い出した。もう何なのかさっぱりだ。しかしだいたい理解できた。私が言ったことがおかしかったのだろう。そんなことは何度もある。価値観のずれなんてものは当たり前だ。先生は続けた。

「もっとましな答えがあるだろ。例えばさぁ、誰かを助けたいだとか、誰かを信仰して助かりたかったとかさぁ。」

さらに鼻高げに

「みんな、弱いんだよ。誰かを頼んなきゃ生きてけないんだよ。」

彼はまるで名言風なことを言い残して、私を見た。チョークの粉がマスクについてて、めちゃくちゃダサい。とは言えない。まぁその考えにはどちらかと言えば賛成である。誰かに頼らなければ(生きててそんなことは思わないが)今みたいな生活は維持できない。電気も、ガスも、家も、食事も、誰かがやってくれるお陰で私たちは生活できているわけだから、あながち間違えではないのだろう。そんなことは小学生で習うことだが。

 ちょうどチャイムが鳴った。みんな一斉に動き出して、友達のところにいって、しゃべっている。私だけを残して。


             転機


大学生になった私は、約十五年ぶりのに友達ができた。とはいっても、顔はしらない。性別すらわからない。年齢も…。いわゆるネ友とか言うやつで、私はそこがとても居心地が良かった。だいたい人と会う必要性がなく、自分がしゃべりたいときだけ喋って、発散する。お互いにとって、利点しかないこの関係に、私は安心していた。しかし、ある日そのネ友(今後はA君と呼ぶ)から、

「自殺したい」

と言われた。たいして私は驚きもしなかった。A君は前から死にてぇ死にてぇ って呟いてたからだ。まぁ今回も軽く流せばいいかと思ったが、次の長文を読んで私のその考えは塵のごとく吹き飛んだ。

「実は死のうと思ってるのにはわけがあって、俺、今ニートってこの間言ったじゃん。親にもさんざん迷惑かけて、近所じゃ俺のことママ友がバカにしあって、父からさんざん、でき損ないだ。とかいい学校に進学させてやったのに。とか言われて、どんどん自分が嫌になって、けどそれでも死んだらもったいないって思ったからここまでやってきたんだけど、昨日お母さん自殺しちゃってさ。お父さん酒に潰れて、家はもうぐっちゃぐちゃで、地獄みたい。最近知ったんだけど、お父さん、お母さんに暴力してたらしくて。俺なんにも気づいてあげられなかった…。オカルトでも何てもないけどさ、地獄って存在するんだなって思っちゃった。けど、今になって、やっとお父さんのいってることが理解できた。俺はほんとのでき損ないで、駄目なヤツで…。もう死にます。別に後ろ向きな自殺じゃない。前向きな自殺です。来世にかけるしかない。いい人生はきっとある。僕の代わりにこの世で頑張ってください。

さようなら」

さすがにこれを読んで、どうしようか悩んだ。一般的な人間ならここで

「まだ人生長いんだから、大丈夫だよ‼」

とか言うんだろうな。ほんとに頭の悪い奴らだ。そんなこと言ったって彼らにはなんも届かない。かえって逆効果。ではこんなとき何をすればよいかって?答えは なにもしない だ。これにつきる。私たち普通の人間はお医者さんでも、魔法使いでも何でもない。俺がA君の今の状況を何とかできるわけでもないし、第一彼には一ミリの興味もないため、彼が死んだとてどうだっていいのだ。私の人生には何のデメリットもない。ただ唯一の共感者であった彼を失うのは、心惜しい。まぁ仕方ない。永遠に失わないものなんてのはこの世に存在しない。そう割りきって、彼にチャイルドラインのURLを送った。彼とはそれ以降話してはいない。

「親の期待かぁ…」

Aから返信が返ってこないで一週間、ふと天井に向かってこの言葉を吐いた。親の期待なんてのは一番子供を殺す。たまに学校は、生徒の自由を制限しているとか言われているが、もっと恐ろしいのは親だ。まぁ親のそういった気持ちはわからんでもない。実際、私も親に、

「勉強しろ~勉強しろ~」

と呪いをかけられていたので、子供を擁護する側だが、親の気持ちとしては、将来いい職について欲しい。と自分ができなかったことを子供に押し付け、子供がそれを達成し、あたかも自分(親)が満足したいのだろう。異論は認めない。親の身勝手な感情で、自分のやりたいこと、欲望を圧し殺すなんて、ひどいなぁと思ってしまったのだ。そんなAが可哀想だと同情した。てかAは優しすぎなんだよ。親の言うこと聞いちゃってさ。

 けど、自分もAと同じじゃね?とこのときから、疑問に思い出した。


             最期


 大学生活も慣れて一年、私はバイトをして、少しでもためたお金は、父に返上した。大学のお金はバカにならんくらいたかくて、正直生きていくので精一杯だ。けど大学に行きたいと言ったのは自分だから、自分で何とかしなきゃなんない。けどある時全てが狂いだした。

 父が、会社の同僚と飲み会でベロンベロンに酔って帰って来たときである。あいつはタクシーにのって帰ってきやがった。レシートをみれば会計が一万五千くらい。しかも飲みの席で、居酒屋だけでなく、キャバクラ、風俗、しかも多分後輩と行ったため、全部あいつが奢ったらしい。これには頭が来た。私が、せっかく我慢して我慢して我慢して我慢して、ためたお金、ここ二十年くらい圧し殺した感情、全てを踏みにじられた気分だった。けどこいつにはまだ働いてもらわなくてはならない。担いで布団まで移動させようとおぶったとき、あいつはこう言った。























「お前なんか生ませなきゃ良かったわww 」


















はじめて湧いた感情?欲望。私は笑った。

何もかもおかしかった。ひどく面白くて、周りの風景全部ぐちゃぐちゃに混ざって、酔いそうで、けど楽しくて。

血まみれで立ちすくむ私。

高揚感。

原型をとどめていない虫けら。

体の内側から沸き上がるむずむずした心。

私は思わず家を飛び出して走りまくった。裸足のまま出てしまったから、小石が足に刺さる。

思わず公園で踊った。というか舞った。感情のままに。あたりに散らばる血がわたしをより美しくする。止まらぬ微笑。何かから解放された気分だった。


             端書き


 まぁ私がそのあと捕まったことは容易に想像できるだろう。かなり夜も更けていたため、職務質問を受けた私は、血まみれの服を咎められ、連行され、家から死体が発見されたため、あっけなく逮捕された。別に容疑を否認する訳でもない。逆に罰は受けてやる。そっちの方が清々しいというか、死ぬ前くらいは、正々堂々としていたい。しかし判決は私のそんな決意を裏切り、終身刑となってしまった。これから永遠と臭い飯を食うのは嫌だが、まぁ許容範囲である。

 あれから一年。時が経つのは意外と早い。牢獄はコンクリート造りで蜘蛛の巣なんかがあるが、非常に居心地がよい。まるで。私の心のように、汚く醜く。もう夜も更けてきた…。ベットに転がり、私はコンクリートに問いかけた。

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