むしろ転生特典持ちはロリっ子でした
「改めまして、こんばんわ。人間の知識持ってるくせに子供に捕まる間抜けなカエルさん」
虫かごから僕を出し、可能な限り自然を意識した形の……えっと、テラリウムって言うのかなこれ。
たまにネットとかで見た気がする。
結構立派な形のそれに僕を移し変えてから鈴ちゃんは呆れたように呟いた。
見た目はまだ小学生高学年くらい。だけどその口振りや仕草はその年齢以上に感じられる。
妖艶と言うほどでは無いが、幼さの残る大人と言った感覚に近い。
『えっと、本当に僕の声が聞こえるの?』
まずは第一の疑問である問いを彼女にかけてみる。
さっきから何度も聞いてみて殆ど確信に近いものはあるけど、念のため。
「聞こえてるよ。私にも前世の記憶があるからなのか、なんなのか詳しい理屈はわからないけど、ね」
そう言って鈴ちゃんは少し悪戯な笑みを見せた。
前世の記憶があるという面に関しては、僕自信もそうだからなのか違和感を覚えることはなかった。
同じような人……いや僕はカエルだけど、ともかくそういう生き物が僕以外に居ても不思議はないだろう。
前世って言い方的に、やっぱりファンタジー展開は期待できないのかと少し残念に思ったのは秘密。
『ちなみに鈴さんの前世ってなんだったの?』
「野生のニホンオオカミだけど?」
『お、オオカミ!? ニホンオオカミって絶滅しちゃったあれ!?』
「あー、やっぱり絶滅してたんだぁ。人間になってから色々調べたり聞いたりしたけど……うーん、やっぱちょっとショックかも」
ある程度は覚悟していたのか、ショックと言うわりにはそこまで落ち込んでいないように見える。
オオカミから人間の女の子に転生かぁ……。
うん、格が違いすぎる。
そもそもオオカミだったとか格好良すぎる。僕もそっちがいい。
ちなみにルックスもあのお母様にしてこの子ありみたいな感じで普通に美少女だし。
「そんなカエルさんこそ、前世はなんだったの?」
『いわゆる底辺ですよ。作業中に事故でペッチャンコ。……にしても僕たちみたいな前世の記憶を引き継いでいる人、いや人なのかな? 動物とかって結構いるの?』
僕たちみたいな……とは言ってみても立場的には見事に僕の方が理不尽すぎるくらい弱者なんだけど。
前世も現世も弱者です。この世界は残酷過ぎます。やっぱり滅ぼすしかねぇ。
「カエルさんで二人目かな?」
鈴ちゃんは少し悪戯な笑みを浮かべて水槽越しに僕をじっと見つめている。
……二人目? じゃあもう一人誰かいるってこと?
その言葉を口に出す前に、急に地面がモゾモゾと動いた。
『うわっ!』
慌ててジャンプして水槽の壁にへばりつく。
何気にこのカエル能力初めて使ったかも。
うっわ、すっげー! くっついてる! 僕、壁にくっついてるよ!!
と地面が動いた事よりも別の事にびっくりしている呑気な僕を殺す一言。
「一人目は、そのヘビさん」
『えっ』
少女の言葉に、そっとさっきまでいた地面を見てみると
大きな……いや、人間サイズからしたら小さいよ。20cmくらいだよ。
だけど、カエルサイズの僕からしたら、それは大蛇で
ついでに言うと、おたまじゃくしの頃に同胞がこいつに食われる姿を何度も見ているわけで
『食われるぅ! 助けてえええ!!!!』
死に物狂いで水槽の壁をよじ登る。
人間、死ぬ気になればなんでも出来るもんだね。
今は僕人間じゃないけどさ。めっちゃ早いスピードで壁よじ登ってるよ。
ロッククライマー目指せるよこれ。世界一狙えるよ。
あ、人間じゃないしカエルならこれ普通なのかな……。
ちょっと落ち込んだ。