眠りのキスでさようなら
全ては作り物かも知れない。全ては夢なのかも知れない。
だから、自身の存在も、記憶も、人生も全ては自分次第。
『ダメだー難しいー』
ビーさんがぐったりと根を上げていた。
全く、本当に最後の最後までビーさんらしい。
そう思うと、ここまで悩んでいる自分がとてもバカらしくなって
それは鈴ちゃんも同じだったみたいで
僕と鈴ちゃんはクスクスと目を合わせて笑っていた。
『自分次第だってさ』
そう。ならば、ハッピーエンドの可能性も。自分次第だ。
「ふぅ……ごめんね、エル君。ここまで来て困らせちゃって」
鈴ちゃんは優しく僕を手のひらに乗せて、顔を近づける。
『いや、僕も色々勉強にっーー』
瞬間、ふわりと、優しい温もりを唇に感じて。
僕はそこで思考が止まってしまった。
え、えっと……
「おとぎ話ならこれでキミは人間になれるよ」
あの、その、つまり……
僕がパクパクと何も言えずにいると、今度は僕を下ろして、ビーさんに軽い口付け。
「私は、忘れない。エル君の優しさも、ビーちゃんのマイペースさも」
『あららー』
ビーさんはまぁ、女性同士だから、うん。慣れているのだろう。あまり動揺を見せずに笑っていた。
僕はーー
「神様でいいかな。お願い。私達の前世の記憶を、消して」
僕はまた最後の最後で変な後悔が残りそうなんですけど。
「ラジャー。じゃあ、皆目を瞑って」
神様の声につられるように目をーーいや、ダメだ。
僕は瞳を閉じた鈴ちゃんに跳び移り、鈴ちゃんに向けて叫んでいた。
『僕も、僕も忘れないっ! 鈴ちゃんは本当はとても優しくて明るくて、それでもってちょっぴり意地悪な事!』
『僕は忘れない! ビーさんはやる気がないように見えて、本当は人一倍他人を傷つける事に怯える可愛い女の子だって事を!』
視界が、白く染まる。目を瞑る必要なんて無いじゃないか。なんて少し神様に悪態をついて、言葉を続ける。
今度こそ後悔の残らぬよう。
『また、絶対! 絶対何処かで会おうねっ!二人とも!』
薄れゆく記憶。死を経験したあのときのような感覚。
『僕は蓮っ!』
『あたし、莉奈だよっ……!』
ボクとビーさんが叫んでいた。
それは失った人間だった頃の名前。今更、本当に今更思い出すなんて……やっぱり、ちょっと理不尽だよ。
「蓮君、莉奈ちゃん、ありがとう。本当に、ありがとう。その名前、忘れないよ」
鈴のなるような彼女の声。
テレビのスイッチが切れるかのように、僕の記憶はそこで途絶えた。
ーー小さなカエルの災難と日常。何処にでもある、小さなお話。
転生カエルの災難 完
とりあえず完結!
後日譚もあるよ!




