結局なんなの神様?
「随分と身勝手な言い方なのね」
彼女の言葉に、鈴ちゃんは少し怒りを見せる。
確かに、僕達の苦労が水の泡って感じはするけどね。
一番頑張って神様やら何やら調べてたの鈴ちゃんだし。
「そう言われちゃっても、ボクは名前もない不思議な生き物だからなぁ……」
こんなの生えてるし、と翼をパタパタと動かす。
『一応神様なのかしらねー? 使いのあたし達の像まで飾られてる訳だし』
ビーさんは彼女の雰囲気にも臆すことなく、いつも通りの口調で彼女に問いかける。
「ならもうちょっと神様らしい扱いして欲しいよ。全く」
そう言って彼女は少しいじけたように笑う。
言葉のわりに、あまりそう言うことは気にしていないように見える。
『ま、まぁまぁ。でも、こういう現象が多いって事は僕達みたいな生き物がたまに現れるってこと?』
なんだか調子の狂う神様だ。妖怪かも知れないけど、とりあえず神様ってことにしておいてあげよう。
変な話に行ってしまう前に、僕は本題を切り出す。
「そうだね。流石にこの辺でそう言う記憶引き継いで転生した生き物達は責任もって、ボクが対処してるんだけど、中には結構遠くの人もいるみたいでねー」
『ちょ、ちょっと待った! 責任持って対処って事は……その、』
喜ぶのを抑えて、神様に問いかける
「うん、ちゃーんと記憶消してあげてるよ。君達みたいに遠路はるばるやってきたパターンは始めてだけどね」
その言葉に、僕は思わず鈴ちゃんの方を見た。
「そっか……そうなんだね」
だが、不思議と鈴ちゃんの表情は優れない。
あれだけ記憶を消したがっていたのに、何故だろう?
「なんだか複雑な心境みたいだけど、どうする? 別に記憶消したくなきゃ消したくないでもボクは気にしないし、その時はこのまま回れ右で大丈夫だけど?」
心を読むことが出来るのだろう。鈴ちゃんが何を考えているのか、僕には理解できないが、神様はそれを理解しているようで
選択権はあくまで僕らにあると告げている。
「はい、そこのカエルと蛇! 君達がこの人間の悩みの種みたいだけど!」
鈴ちゃん一人では解決しないと考えたのか、僕達に話を振ってくる。
そこで、ようやく鈴ちゃんの悩みが、以前恐れていた僕達の関係性の事だと気付くことが出来た。
『ねーねー、神様? 神様でいいー?』
僕が口を開くより先に、ビーさんが神様に声をかけていた。
「神様って言われ方慣れてないし、天狗とか天女でもいいよ? たまにボク見た人間がそんな事言って騒いでるし」
天狗はわかるが天女は見た目全然違うと思う。少なからず僕の知識では。
いや、わざわざ神様的な存在を前に突っ込みはしないけど。
『じゃあ天狗さんー。ね、あたし達が前世の記憶を消したとしたら、あたし達の関係ってどーなるのかなーって』
やっぱり、そこなのか。……まさかビーさんまで気付いてるとは思わなかったけど
驚くと同時に、その優しさは必要のないものだと言いたくなってしまう。
せっかくのハッピーエンドの可能性をゼロにしてしまう。
ここまで辿り着いて、記憶を消さずに帰るなんて選択肢、僕には存在しない。
「残念だけど、君達の意識が消えた後の君達の存在ってのがどうなるか。って話は正直、ボクにもわからないんだよね」
残念、と言う割には他人事のように神様は言う。
いや、他人事なのだろう。そう、彼女が神様、もしくはそれに等しい存在ならば
そこまで僕達、地上の生物に関して興味を持つわけがない。
そんな事は前世で経験済みだ。




