終わりの地。始まりの場所
『良い天気だね』
先日、鈴ちゃんが一人で行ったときとはうってかわっての晴天だった。
太陽が眩しくて、思わず目を細めてしまう。
『うへー、暑いー。溶けるー』
まぁ、一応初夏ですから。
ビーさんの言葉には敢えて突っ込まずに、僕は樹海の入り口を見据えた。
けたたましく聞こえるセミの声。照りつける日差し。
だが、それとは裏腹に、樹海の奥は昼間でも薄暗く不気味な雰囲気を漂わせている。
『鈴ちゃん、ケースから出ていいかな?』
この空気を肌で感じたいと思い、僕はそう問いかける。
肌で感じた方が、色々と気付けるかも知れない。
「いいよ。ただ、落ちないように気を付けてね。間違えて踏んで殺したりしたくないから」
鈴ちゃんはそう言うと僕をひょいとつまみ上げ、肩に乗せた。
『うん、大丈夫』
肩に乗り、強く服を握って僕は返す。
「ビーちゃんはどうする?」
『んー、とりあえず社に着くまではこのままでー』
ビーさんはさほど外の空気に興味はない。と言った様子でケース内で丸まっている。
……狭いケースから出た方がまだ涼しいと思うんだけど。まぁビーさんらしいと言えばらしいのだろう。
あまり深く突っ込まないでおく。
「了解。それじゃ、ここからは道険しくなるから、ケースも結構揺れるよ。二人とも気を付けてね」
鈴ちゃんはビーさんに返すと、立ち入り禁止の区画へと足を踏み入れてゆく。
やはり木々に覆われてるだけあり、樹海の中に入ると、ずいぶん体感気温が違う気がする。
それは木々に覆われてるだけなのか、それとも、妖怪の類いが近くにいるせいなのか。
流石は元々生活をしていただけあって、揺れると言っても、そこまで大きくバランスを崩すこともなく、鈴ちゃんは軽い足取りで歩を進めていく。
無駄話は一切ない。鈴ちゃんも僕も、何かを見落とさないように気を張って歩き続けた。
そして、樹海に踏み入ってから数十分が経った頃だろうか。
唐突に、ケースのなかでぐったりしていたビーさんが声を発した。
『オオカミ娘ちゃん、もしかしてもう近い?』
いつものやる気のない口調とは違い、随分と真剣な声色だ。
「うん、そろそろだよ」
ビーさんの方が、そう言う感知する能力が高いのだろうか?
なんとなく気になって、聞いてみる。
『僕には全然わからないんだけど、ビーさん、どうしてわかったの?』
『いやぁー……ここまで来るとホントに偶然じゃ片付かないなぁ』
少し困ったように、続ける。
『あたしが自殺した場所が丁度この辺なのよねー』
ビーさんの言葉に、ふと上を見上げてみる。
流石に、ロープなんか残っているわけでも遺留品らしきものがあるわけでもないが……
他ならぬビーさんの言うことだ。
流石に勘違いと言うことは無いだろう。




