鈴とカエル
ーーまさか、こんな時間までかかってしまうなんて。
どしゃ降りのせいで、予定より帰ってくる時間が大幅に遅れてしまった。
私はお母さんに言われるがまま、お風呂に入り、思考を巡らせる。
エル君と出会ってから、本当に色々と進展した。
ビーちゃんがオカルト関連に詳しいことすら長い付き合いで始めて知った。
エル君は私達に沢山の希望と勇気を与えてくれる。
それが嬉しくて、甘えてしまっている自分がいるのは確かだけど。
でも私自身、気づいてしまっている事もある。
エル君は自分の事を一切考えない性格だ。
私の記憶は抜け落ちたとしても、きっと別の私はエル君もビーちゃんも大切な友達として飼い続けられる自信はある。
だけどビーちゃんやエル君はどうなのだろう。
元は天敵同士の二人。記憶が抜け落ちた途端に、二人は二人で無くなってしまう気がして、正直、それが一番怖い。
エル君は気付いているのだろうか。気付いてたとしても、彼の事だ。決意を揺らがせる事は無いだろう。
「キミは本当に間抜けだよ。私達の隠れた気持ちまで理解できないんだから」
パシャパシャと湯船のお湯を顔にかける。
わかってる。ビーちゃんに食べられてしまうような残酷な未来があるかもしれない。
それでも、私がここで記憶を消すことを拒んだらエル君はもっと傷付く。
だから、進むしかないんだ。
でも、出来ることならどうか……
もしも、そこに神様や妖怪がいるのなら、私は最後に、エル君の自由を約束させたい。
「記憶が消える前に、世界一カッコいいカエルだったよって伝えてあげようかな」
私は小さく、呟いた。




