ヒロインはロリっ子、僕様はカエル
『え、僕の声聞こえてたりするの?』
とりあえず少女に向かって問い掛けてみる。
「一応聞こえてるけど、お母さんと建君には聞こえてないからね。私が不思議ちゃん扱いされるから少し黙ってて」
どうしよう、同族以外でまともに意志疎通出来たと思ったら結構クールな扱い受けて泣きそう。
いやグワグワ鳴いてるけど、そういう意味じゃなくて
カエルに涙腺ないけど、そういう意味じゃなくて。
「…………お姉ちゃん? このカエル喋ってるの?」
建君がポカンとした表情で少女へ問いかける。
そりゃそうですよね。わかります。僕だって家族が唐突にそんな事言い出したら病院ぶちこみます。
もしくは中二病拗らせてんじゃねーよって突っ込みます。
「とりあえずこのカエルはお姉ちゃんが飼うね。お詫びに夕飯のハンバーグ半分あげるから、それで建もいいでしょ?」
鈴と呼ばれた少女が建君に向けて有無を言わせずと言った勢いで手を差し出す。
「んー、お姉ちゃんの言ってることよくわからないけど、ハンバーグくれるならいいよ!」
と少年は姉に僕の入った虫かごを手渡した。
少年はきちんと少年をしている辺り逆に安心。食べ物で釣られる辺り子供らしくてよろしい。
いや、そのせいで殺されかけたんだけど、なんかもう女の子のギャップが酷すぎて……ね?
いや、本当になんなのこの子。
見た目ロリっ子でクールでちょっと毒舌とか、何処の二次元の子なの。
ファンタジー展開期待したし、望んだけれど
僕はロリ気質とかなくて
どちらかと言うと望むヒロインの容姿はお母様の方だったりする訳で……
まぁお母様の性格もちょっと怖いけど
「それじゃ私、ちょっとこのカエルさんに色々聞いてみたいから部屋に戻るね」
……と、現実逃避をしている僕をよそ目に話は展開していた。
「ちょっと待って鈴、昔から不思議な子だと思ってたけど鈴、ちょっと鈴ってば!」
お母さんの言葉に、なんでもなーい! とニッコリ笑って鈴ちゃんは階段を駆け上った。
どうやら自分の部屋に向かうようだ。
走ってる時に虫かごをグワングワンさせないよう注意を払っている辺り
やはりそこらのお子様とは違った印象を受ける。
やがて階段を上り終え「すず」と書かれた部屋に入ると扉を閉めて鈴ちゃんはふぅ、とため息をついた。