偶然の悪戯でした
「え、えっと、その、ただいま」
唐突にパチンと、部屋の電気がついた。
そして、そこには……
とても気まずそうな鈴ちゃんの姿があった。
『あ、あらー?』
『す、鈴ちゃん?』
びしょ濡れのまま、申し訳なさそうに立ち尽くすその姿に
僕は安堵なのか、なんなのか、急に力が抜けてしまい、しがみついていたビーさんの体から滑り落ちる。
「た、ただいま」
鈴ちゃんは改めて僕たちを見て、その言葉を口にする。
テレビでは、未だに鈴森家を助けようとレスキュー隊や救急が集まっている。
ええっと、つまり……
『あっははは』
ビーさんは大笑いしていた。
そう、つまり……そう言うことだ。
『本当の本当に、偶然?』
まだ腰が抜けたような感覚なのか、動くことができないまま
僕はそれを口にする。
「私、事態が把握しきれてないんだけれど……その、私も家族も、皆無事だよ?」
雨で濡れちゃったけど、と近くにあったタオルで髪の毛を拭きながら鈴ちゃんは言う。
『ビーさん、やっぱり希望はあるよ』
小さく、動けないままビーさんの体にもたれ掛かったまま呟いた。
『エルちゃん、それより先にあたしに八つ当たりしたこと謝ってー』
ビーさんもホッとしたのだろう。小さく返して笑っていた。
「良くわからないけれど、エル君が感情的になってるところなんて始めてみれたかも」
鈴ちゃんは濡れた服を着替えながら、可笑しそうに笑う。
いや、もうホント焦ったんだからね?
『僕だって一応人間……いや、今はカエルだけどさ。一応元人間なんだから、たまには感情的になるよ』
ふぅ、とため息をついて、鈴ちゃんの方を見ないように自分の水槽へと移動しながら返す。
『なんかそう言われるとあたしだけ人間らしくないーみたいな言われ方されてる気がしちゃうなぁ』
僕と歩幅を合わせるように、ビーさんも水槽へと戻る。
『いや、ある意味ビーさんは一番人間らしいと思うよ』
感情表現豊かだし、欲望に忠実だし。
流石にそこまでは言わなかったけど、僕はビーさんに返した。
「あ、着替え終わったよ。さて、とりあえず樹海での収穫なんだけど」
鈴ちゃんの言葉に振り返り、彼女の方をじっと見る。
そうだ。余計なニュースのせいで鈴ちゃんが生きていたって事実でもう精神的に安心してしまっていたけれど
本題はここからだ。
『なにかわかった?』
僕が返すと、鈴ちゃんはコクりと頷いて、携帯で撮ったであろう、とある写真を見せてきた。
ずいぶんとふるぼけた社が映っている。何年も手入れがされてないモノだと見てとれる。
そして、その社にはオオカミの像、蛇の像、カエルの像が置かれていた。
とても小さくて、どの像も苔むしていたけれど……
「偶然にしては、出来すぎてる社見付けたよ」
それを僕たちに見せながら、鈴ちゃんは呟く。
「古すぎて、なんの意図で作られたものなのか、そう言った類いの書物は全然見付けられなかったけど、ここで間違いないんじゃないかな?」
鈴ちゃんは少しだけ自慢げに、そう口にする。




