エルの推理 二
『異世界なら魔法とか使えるんじゃないのー?』
今度はビーさんが呆れたように口にするが、そこは鈴ちゃんがフォローを入れてくれた。
「私達、異種族同士が意志疎通できてるって事が既に魔法みたいなモノじゃない? ついでに、前世の記憶を引き継いじゃっている所も」
記憶の引き継ぎはきっと魔法と言うよりは、たちの悪い呪いみたいなモノだと思う。
神様の仕業か、悪魔の仕業か、それとも……自分でもハッキリとした答えは出ていない。
「エル君、続けていいよ」
鈴ちゃんの促しに、僕はコクりと頷くと話を続けた。
『次の疑問は、転生者の繋がり』
記憶持ちの転生先は、死因と大きく繋がっている。
ここまでは強引な理論でも、二人ともある程度の納得は出来ているみたいだ。
『僕は、前世の記憶を引き継いだ人って、死ぬ前にこの世に少なからずの理不尽や不条理を感じた人達だと思うんだ』
人間だった頃の僕は安月給で日々生きるのが精一杯。頑張れば報われると
死に物狂いで働いたのに、こんな間抜けな死に方があるかと、神様を恨んで前世を終えている。
僕がそれを口にすると、鈴ちゃんとビーさんは黙りこくってしまった。
「その理不尽や不条理は話した方がいいのかな? その、エル君のを聞いちゃってからで申し訳ないんだけど……」
鈴ちゃんがとても申し訳なさそうに口ごもる。
いや、うん。大丈夫わかってた。
言ってくれるかなーとか少し賭けに出たけど、わかってたから大丈夫。
悲しくないよ。泣いてないよ僕。涙腺ないもん。
『オオカミ娘ちゃんはエルちゃんよりももっと大きな理不尽感じてそうだしねー』
ニョロニョロ黙れ。うるせぇ。わかってるんだよ!
僕だって理不尽だと感じた理由が結構ありきたりでショボいことわかってるんだよ!
『えっと、うん……無理にとは言わないよ。僕もまだ答えに辿り着いてる訳じゃないし、理不尽の理由が重要かどうかはわからないから』
少なからず、ビーさんも鈴ちゃんも理不尽や不条理を感じて前世を終えている。
と言うのが知れただけでも先に進めたと思うべきだろう。
それに、鈴ちゃんが協力して話してくれても、昨夜の態度からビーさんが協力してくれるようには思えないし
ここは想定の範囲内……想定の範囲内。
別に自分に言い聞かせてる訳じゃないもん。
『まぁ私もその理不尽とか不条理ってのは喋りたくないかなー』
ビーさんは本当に想定してたから大丈夫。黙ってろ。
『まぁ、とりあえずそこは一旦置いといて、本題がここ。もし、ここが異世界なら』
『魔王倒すー!』
なんかもう本当に黙っててくれないかなビーさん。蹴るよ?
きっとダメージ喰らわないだろうけど。
「…………記憶をリセットする方法がある?」
鈴ちゃんが本当にマトモで助かる。
出会った当初こそ鈴ちゃんにもお母様に似た恐怖を感じたけれど
ビーさんと違ってシリアスモードに切り替えた時の鈴ちゃんはかなり頭が回る。
そう。これだけ僕達……いや、鈴ちゃんに理不尽な世界だ。
このまま人生が終わるなんて、絶対許してはいけない。
例え、それがこの世界を作った神様と言う存在の意思だとしても。




