Bonus Track_84-3 虚栄の都、雁首揃えて! 『みずおと』第二話第三幕!~アスカの場合~
998部分!!
当然僕たちも、雁首揃えてそれを見ていた。
セレネさん、エクセリオン。ミソラちゃん先生、のぞみん先生、エルエル。
各党の代表格。町の偉いさんでもある、高天原学園の評議会メンバー。
その他、いろいろ活躍した人。
もちろん、『ティアブラ』運営本社分社の社長に役員も。
みんなしゃれめかして、ほとんどが笑った顔をして。
『魔王軍』にまつわるあれこれは、月萌の一般国民向けには『ティアブラ』のリアル連動イベント。
すなわち、国が作り、運営し、配信するVRMMOのお祭りだ。
運営側の人間としては、エンジョイする顔を見せないわけにはいかないのだ。
もっとも僕や数人は、純粋に楽しんでいたのだけれど。
謎なのは伯父リュウジ。どこか、演技でなく楽し気に感じるのは気のせいか。
余裕かましてるのか。それともついにブッ壊れたか。
愛すべき金銀の番犬たちの様子を見るにつけ、そうも思えない。
やはり、ドMなのか。いや、その方向については深く考えたくない。
彼の息子が飛ばしてくるウインクをなまぬるくスルーし、じろっとけん制するハヤトをどうどうとなだめ、僕はふたたび大型スクリーンに視線を向けた。
画面の中幕が上がれば、明るく照らされた舞台の奥から半ばを、城の人々がてきぱき忙しそうに行き交っていた。
舞台手前、両端では、噂をする人々。
すべて、ミュージカル調にコミカルに。
『ねえねえ、いったいどうしたの?』
『ほんとにいったいどうなった?』
『すっごくすっごくはかどるよ!』
『とってもとってもまわってる!』
『なにが?』『しごと!』『おしごとよ!』
噂をしあう人たちが声をそろえると、行き交う人々が全員ぴょんっとはねる。
『いったいぜんたいどうしたの?』
『クレハ様よ、クレハさま!』
『城のみんなの、得意不得意』
『まるっと把握で仕事振る!』
『急に覚醒しちゃったね!』
『いったい何があったやら!』
舞台両袖に展開する花道部分にスポットライトが落ち、働く職人たちの姿がひとつひとつ浮かび上がる。
料理をし、庭を整え、お城の壁を修理する。
トンテンカンと鉄を打つ職人。弓を張り、矢を作る職人。
剣の素振りをする騎士。槍の練習をする兵士。
騎士と兵士が『これはいいや!』というようにうなずくと、下働きたちが剣と槍を回収していく。
職人たちが剣を作り、槍をこしらえ、弓矢を束ねて持ってゆく。
いつしか舞台の上にも、武具を作る職人たちが並んでいた。
舞台中央に、せりあがってくるベッド。
その上に、クレハが半身を起こしている。というか、でっかいクッションにでれんと背中を預けている。
疲労を押して働く男のりりしさは消え、ダボダボのパジャマ姿とめんどくさげな表情。まるっきり別人だ。というか僕もここまでダレダレなクレハは見たことがない。あきらかにグリードが中にいた。
『クレっちゃーん! でーけたでけたー!
剣と鎧、盾と槍、それに弓矢が1ダースー!』
ちゃかちゃかと走ってきたチナツが報告すれば、グリクレハはダルそうにあくびする。
『じゃア、行くか。
これだけは俺がカオ出さなきゃだからな……ふぁ……』
『アイアイ!
それじゃあお着換えしましょうねー!』
グリハがダラダラバンザイすると、チナツがぽーんとパジャマをすっぽぬく。
周りのみんなが『キャッ』と一斉に顔を覆い、指の間からはずかしそーに注目するが、残念、出てきたのはりっぱなスーツ。
そのままひょいっと輿に乗せられたグリハ、『れっつらごー!』と楽し気に先を行くチナツが舞台下手に消えていくと、ミズキのナレーションが入った。
『あれから数日。『強欲』に取りつかれた大臣クレハは、恐るべき計画を進めていました。
城の仕事を効率化して、できた余裕で武器を作り、よその国に売りに行こうとしていたのです。
それだけではありません。
その国や、周りの国をけしかけて、お互いに戦わせ、どんどん武器を買わせようとしていたのです!』
明るくはねるライトはいつしか落ちて、人々を照らすのは青白い、冷たい地明かりに。
たのしげだった舞台は、薄気味悪いものにかわっていた。
『もちろん、みんなにそんなことは言っていません。
あくまで、いま世界のあちこちで起きている争いから、仲良くしている国々を守ってあげられるように。
ひいてはそれが、自分の国を守ることでもあるからと、あまくやさしい、嘘をついていたのです』
淡々と流れるナレーション、薄暗い舞台。
その中を、飛ぶ鳥の速さで駆ける人影一つ。御庭番役のユキさんだ。
上手側、ほのかにともるサスペンションライトをくぐるように、舞台袖へと消えてゆく。
ゆっくりと落ちていく照明とともに、ひそやかに幕が下りた。
童話や児童文学を愛するシオン。彼の書くシナリオは、その色合いが強い。
すなわち、やさしい語り口ながら、まぎれもない悪も描く。
シオン個人はどこまで行っても、悪だくみさえしない子なのに、まったくふしぎなものだ。
もしかしたら逆に僕も、ピュアで清らかなポエムなんか書けたりして。
いや、ない。ありえない。ぶっちゃけむり。
ぶるぶると頭を振ると、ハヤトが不気味そうに僕を見た。
とりあえず、うさみみパンチをくらわした。
ほんと投稿しようとすると重くなる^^;
次回、続き。ソリステラス組がゲスト出演の予定です。
どうぞ、お楽しみに!




