84-2 観劇、『みずおと』第二話第二幕!
※ラスト部分がちょっとこわいです。
997部分! 緊張します^^;
懇親会を兼ねたランチパーティーの会場は、ほどよい賑わい具合。
モニターの中では、白リボンズとシオンによるトークが終わるところだった。
いよいよ『みずおと』こと、『湖の乙女と七つの魔神』第二話の上映が始まる。
ここで長々スピーチするのは野暮だ。笑顔で会場のみんなに一礼し、席に座った。
チェシャたちから『任務完了、あとを引き継いだ。詳細は後程』とのメールが携帯用端末に届いたので、感謝とよろしくの返信を打つ。
そうして目を上げると、大画面の中、第一幕が始まった。
新築の湖の館。その居間で語られたのは『七つの魔神』の正体、かれらが生まれる理由だった。
ほぼまんま、3Sとミッション『エインヘリアル』といって差し支えなかった。
『エインヘリアル』と違うのは、神の定めた使命の詳細。
戦争ではなく、人生そのものを通じて成長するべし、とされてある。
さらに、戦いの中生まれた『憤怒の魔神』すら、人間同士の戦いに対して肯定の立場をとってはいない。
これは、おれたちの目指すところとも一致している。
プロパガンダといっちゃなんだが、グッジョブシオンである。
イケメン魔神たちによるちょっとの茶番も盛り込み、最後はけなげなコトハさんの旅立ち宣言で、第一幕は終わった。
第二幕。『数日前』のプラカードを持ったお仕着せスーツのチナツが、手を振りながら上手から下手へと歩いていく後ろで幕が上がる。
笑ったのはそのあとだ。チナツはプラカードをひょいと下手隅に置くとそのまま、舞台中央に立つ人々のもとに走って行った。
それだけでなんか笑える。チナツならではのコメディ感たっぷりムーブである。
『遅いぞチナツ。もう殿下がいらっしゃるんだ。
丁重にお見送りをしなけりゃな』
チナツに物申すのは、貴族や使用人たちとおぼしき一団の中で、一番豪華な服を着た人物。
クレハだ。しかし、その言い方は気だるげ。
どんなときも無駄にテンションを上げないのがクレハだが、こんなふうにだるそうにすることもまた珍しい。
ともあれ一団が待ち受けていれば、旅姿に装ったサクラさんとリンカさんが上手側から現れる。
こうべを垂れる一団の中、クレハは一歩進み出て見送りの言葉を告げる。
『サクラ王女殿下、どうか道中、くれぐれもお気を付けを。
リンカ殿、殿下をどうぞ頼みます』
『ええ、クレハ卿』
『クレっちゃんたちには苦労ばっか掛けるわね。
ゼニーを更迭したと思ったら、こんどはあたしが魔神にやられるなんて。
すぐに強くなって帰ってくる。しばらくの間だけ、お願いね』
『ははっ!
あとはお任せくださいませ。
われら一同、しっかりと国を守り、お帰りをお待ち申し上げております。
良き修行の旅を!!』
『いってらっしゃいませ!!』
クレハが最敬礼で声を張れば、従う者たちも一斉に頭を下げる。
サクラさんは「いってくるわ!」と手を振り、リンカさんは一礼し、ふたりして下手側へと消えていく。
そうして一秒、二秒、三秒。
クレハが頭を上げれば、ほかの人々もそれに倣い、三々五々消えていく。
見送るクレハにスポットが当たり、ミズキのナレーションが入った。
『この青年は、クレハといいます。
さきの大臣ゼニー・クレイマンの不正を暴き、その代わりに大臣に任じられた若者です。
相棒で助手のチナツとともに、毎日勤勉に仕事に励む姿は、人々の信頼を集めていました』
前大臣のネーミングにイツカが吹いた。会場でも笑い声があちこちで起こる。
名は体を表すというか、どれだけお金が欲しいんだという感じである。
『けれど、最近はすこし、お疲れ気味の様子。
チナツもちょっと心配です』
スポットライトが消えると、チナツがクレハに駆け寄ってくる。
『なあ、クレっちゃん。ちっと休んだら?
昨日もほとんど寝てないっしょ?』
『いや、……まだ、資料の整理が終わってない。
ゼニーの所業のケリは、後任の俺がつけなくちゃ……
わるいけど俺のぶん、やすんどいて……』
『っておーい、クレっちゃーん?!』
いつのまにか、舞台の上には二人だけ。クレハは疲れた足取りで、チナツはそれを追いかけて上手に消えていった。
『けれど、このときは予想もしていませんでした。
まさか、あんなことになるなんて。』
トーンを落としたミズキの声。舞台の照明も暗く落ちていく。
やがて舞台上が闇に包まれた時、それは始まった。
『それはクレハがひとり書庫に残り、資料の整理をしているときでした』
舞台中央にぽつんとスポットライトが落ちる。
疲労困憊した様子のクレハが、ゆっくりと光の輪に入ってくる。
『まだ……しごとがあるんだ……やらなきゃならない、ことが……
この程度で……くそ……疲れてなんか……いられない……のに……』
ふと、舞台奥側。闇の中に視線をやったクレハはびくっと身をすくませる。
一歩、二歩。後ずさるけれどそれ以上は動けず立ち尽くす。
『やっとここまでたどりつきやがったか……
単刀直入言うわ。オレを受け入れろ。オレの手足となれ』
聞き覚えのある声が響くと、闇の中に、黄色く光る目がふたつ。
『う、……うわあ――――――――!!』
絶叫の中ばん、と明かりが落ちる。
やがて舞台の上に、静寂が満ちる。
ナレーションが語るのは、まさかの事態。
『こうしてクレハは、七つの魔人の一人『強欲』に取りつかれてしまったのでした』
まだ、今日のぶん書けてない……わるいけど私のぶん、やすんどいて……orz
火曜日にワクチン接種三回目なのです。
申し訳ありませんがその日は念のため、お休みをいただきますm(__)m
次回は第三幕。グリード有能無双の予定です。
どうかお楽しみに!




