Bonus Track_83-2-2 目覚めたゴーちゃんと、驚きの真相(後)~『マリオさん』の場合~
ゴーちゃんの体調は異常なし。むしろバトル前より元気になっているくらいだ。
それでも、明日(というか、もう今日)いっぱいは入院だ。
それは僕もで、チームのみんなが朝一でお見舞いに来てくれたあとは、いっしょの病室で動画を見て、おしゃべりして、のんびり過ごした。
未曽有の驚きがやってきたのは、その昼過ぎだった。
かわゆい看護師さんに呼ばれてミーティングルームに行けば、そこにはお医者先生と社長、さらにはもとエクセリオンで国立研究所長のエルカ・タマモがそろっていた。
あいさつと短い前置きの後に、先生に言われたことはこんなんだった。
「あなたがたお二人は『先祖返り』と呼ばれる人々だと思われます」
「『先祖返り』……?」
二人で顔を見合わせた。
先祖返り。頭の中をあさってでてきた知識はこれだ。
「おじいちゃんのハゲが孫に遺伝するってやつですか?」
「えっ、俺ハゲちゃうのっ?!」
あわてた様子でゴーちゃんは頭を押さえた。可愛い。
吹き出しかけた先生が、咳払いでごまかしていうに。
「あー、まあ。普通に先祖返りというと隔世遺伝のことですが、この場合は違いましてですね。
平たく言うなら、人間に転生する前。モンスターだったころの能力を色濃く残している方々のことを指します」
「……!」
「マジ、ですか」
ゴーちゃんが息をのむ。僕は疑問で水を向ける。
ぶっちゃけたハナシ『ウチらの前世はモンスターであるらしい』というエルカ所長らの発表は、イベントの一環としてのリップサービス、ってこともあるなと考えてた。
なのに、まさか、ドストライクで自分たちが。
「俺、……ゴーレムだったんですか」
「ええ。
お二人の前世は、アダマンタイトゴーレムコアと、アンデッドサマナーキングでした」
「ああ……」
驚いた。驚いたのに、言われてみると不思議と納得しかない。それはゴーちゃんも同じよう。
後を引き継いだのはエルカ所長だ。
「君たちだけじゃない。
『スケさん』はスケルトンロード、『ドラオさん』はフォレストドラゴンだった。
そのあたりは、『マザー』を通じて『グランドマザー』から情報をもらったから、確かなことと言っていい」
「ふおおお……!!」
ゴーちゃんは大興奮でふるふるしている。
僕も興奮しないでもない。でも、それに流されるきれるほどピュアでもない。
「それで。ウチらは今後どうされるので?」
ヘンなチカラを発揮した。で、研究所の所長がわざわざ来る。となればただ事で済むはずもない。
エルカ所長は人道的と聞いてるが、ソラちゃんをひどい実験に使ったやつらに苦労させられてるってのも聞いている。
所長は先生にかわって話始めた。
「そうだね、ここは私が。
率直に言うよ。国立研究所でスカウトさせてもらいたい。
『ダンサーズ』の皆さんに、私たちの一員になってほしい。そうして、世界を救う手助けをしてほしいんだ。
その来歴と力を分析し、応用することで、人々の成長をうながす道を探る。世界の人々が、すこしでもはやく戦いの運命から逃れられるように」
具体的にウチらがすることは、質問への回答とか、設定条件下でのバトルとか、そんなもん。
あくまで今までの勤務の合間、都合のつくときでいい。
あーちゃんハーちゃん、ソラちゃんもこれに加わっている。
あとすこしすれば、イザヨイのふたりやいずみんも加わる。
それをきけば、拒む理由もなかった。
ソラちゃん、イザヨイ、いずみん。
みんな、一時とはいえ地下で一緒に過ごした仲間だ。
いい子たちだった。問題を起こし放校になったということだが、そんなの信じられないくらいだった。
地下を出ると決まった時には、もう帰ってくるんじゃないぞと祝福しながらもさびしかった。
『わりのいいバイト』でハメられたと明らかになった時には、納得しかなかった。
学園に戻り、試合で活躍する姿を見るたび、うれしくなった。
そんな彼らと一緒に働けるなんて、うれしい以外の何物でもない。
だがもちろん、『ダンサーズ』として、というならみんなに相談しなくては。
前向きに検討させていただきます! と握手して、二人で退院したのだった。
庭師仕事をする羽目になり腰がつりかけました。ツライ。
次回再び島視点。そろそろ巻いていきたいところ。誰だこの章で旗揚げまで行きたいとか言った人。私だorz
どこまでいけるかお楽しみにっ!!




