83-2-3 整備・ざ・魔王島!~一日目おわり~
「ひつじさんたちを薬のお風呂に入れてあげてたの。
そのとき僕、どぼーんって落ちちゃって」
「そ……それでっ……」
「これはひつじさんのお風呂だから、ひとは入っちゃダメなのよって言われたの。
それで、いそいで僕だけざーっと流してお風呂も入ったんだけれど、ひつじさんたちといっしょのお風呂、ちょっと楽しかったなあ♪」
ニッコニコのチアキ。露天風呂はなんともいえない沈黙に包まれた。
「………………そ、そっか、そっか……おう……」
「わっはっはっは、ひつじたちとお風呂か! それは確かに楽しそうだな!」
「だなっ!」
「あははは!!」
「よかったのう、チアキちゃん。
その後どこも悪くならなかったか?」
どこかきまずげながらも安堵した様子のトラオ。呵々大笑のイワさんと無邪気なイツカたち。
アルムさんはもはや孫でも見るかのような表情だ。
「はい、すぐによく洗ったから大丈夫でした!
念のために回復魔法もかけてもらったし!」
「そうかそうか。
あれは人間にはきつい薬だからの。大事なくてよかった。
おおそうだ、わし今幽霊だから問題ないな、今度はいってみるかな!」
そうしておちゃめなことを言って笑う。
一方でレンはぶくぶく沈みかけてる。
「どうしたのレン?」
「オレ……一瞬でもチアキがエアリーと一緒に入ったんじゃないかとか考えた自分を殴りたい……」
「ふあああ?! なっなっなにいうのレン?!
しないから! しないからねそんなえっちなこと――!!」
「ぶあっ! わりいわりいわるかったって!!」
チアキは真っ赤になっておおあわて。ばしゃばしゃっとレンにお湯をかける。
「いいのういいのう、青春じゃ!」
「青春だな!!」
「わっはっはっは……」
「わっはっはっは……」
アルムさんとイワさんが、肩を組んで大笑い。
ついでにイツカたちも加われば、チアキもつられて笑顔になった。
そのあと、おれたち四魔王とチアキ、レンはばんごはん。
すでに食事を終えていたトラオは農場の見張りの遅番のためにと仮設男子寝室で仮眠に入り、アルムさんは見回りに出てくれた。
館の探索に加わって疲れているはずのイワさんは、何のこれしきと余裕の調子。しかし、『明日もあるからにゃ?』と助手たちに説得されてお休みだ。
おれたちはもう(うっかりとはいえ)仮眠させてもらっていたので、イツカたちを先に寝かせて、今日の進捗のチェックをしてしまうことにした。
シーサイドエリアはすでに、八割仕上がったといっていい状態だ。
シャスタさまは本日結局、チャレンジャーなし。そのため、レンやフユキ、コトハさんとともに防衛フロートの配置を決定し、いくつか仮フロートを浮かべている。
本フロートは、明日到着の空の民に協力を仰ぎ、おれも加わって作成することになっている。
トビー、アッシュは古い灯台を修繕、管制塔として使えるようにした。
明日、シオンたち管制入る組が設備の配置などを行う予定だ。
とはいえ、あとは旧基地の管制塔をポータル接続しての微調整。早ければ午前中に終わる見込みである。
クレイズさまと神獣たちは、キャンペーン用のエフェクトをまとい華麗にチャレンジャーたちを翻弄。勝利を収めるとすぐに戻ってきて、すごい勢いでビーチの整備を進めた。
拠点となる海の家からはじめて、ビーチ全域を清掃。流木や海草、朽ちたボートとかなぞのポリタンクやすっかり穴の開いたドラム缶風呂なんかを撤去。
島の南から南東にかけてのびるビーチは、見違えるほどきれいになっていた。
船着き場や漁場などの整備は、これまた明日着の海の民にお願いすることになっている。イツカはこっちで手伝う予定だ。着々と漁師猫ルートが進んでいる気がする。
館のほうはかなり状態がいい。さすがに金属の配管、木造の階段やドア、窓ガラスなんかは素人目にもわかるレベルで交換不可避だし、モンスターを追い払ったり撃退したりも何度かあったが、石造りの構造部分はしっかりして見えるとのこと。
明日、隠れたひびなどがないかトビーとアッシュに検査をしてもらうが、アルムさんによれば地震などもほとんどなかったようだし、見通しは明るかった。
農場のほうも、羊たちに草を食べてもらい、食べ終わったところを耕して、と整備を進めていく予定。
その過程で何度か土を取りに森に入るが、この時に探索も進めたい。
忘れちゃいけないのが、職人たちの作業場。
クラフターズ・ラボはゼロブラ館と接続の予定だが、せっかく雰囲気のある作業場だ、手作業でやるクラフトはここを使いたい。
明日はソリス領・ステラ領の職人さんたちも来てくれる予定なので、彼らの意見を取り入れて気持ち良く使えるものにしたいものだ。
一通りのチェックを終え、コメントを書き込んで。ぐっと伸びをすると、仮設食堂の窓から心地よい風が吹き込んできた。
外を見てみれば、びっくりするほど澄んだ空、輝く満点の星に勇気づけられる。
あしたもがんばろう。二人してうん、と気合を入れ、おれたちも寝室に向かうのだった。
ネット大賞(流れたくないお星さまのおはなし)は一次落ちでした。
応援してくださった皆様ゴメンナサイ。実力不足にございます。
今は反省を生かしつつ、この連載に専念します!
次回、卒業を臨んだカルテットのお話を挟みます。
どうか、お楽しみに!




