83-2-2 整備・ざ・魔王島!~土うさ行進、星見風呂~
2022.05.24
奥様のお名前がそのう……もうしわけござりませんでしたっm(__)m
ユキノ→ユキナ
2022.05.15
あと二人どこ行った?! ミス修正いたしました!
二人の後ろには、暮れなずむ島の空。→ 四人の後ろには、(以下略)
エアリーさんのいる場所はわかった。そこまでチカラの『ルート』はつなげた。
あとは、それを利用して森の腐葉土を畑そばまで移送しようということに。
ただしこんな条件付きだ。
『せっかくだから、かわいいかんじにしましょう?
ただ、土の養分だけを移送するのじゃ、見た目にあまり楽しくないもの!』
「かわいいかんじ……ですか……」
一番簡単なのが土の養分だけを移送すること。
けれどこれだと、見た目にわからない。
せっかく動画も配信するのに、確かにこれではつまらない。
次に考え付いたのが、いっそのことクレイゴーレムにしてしまって、ここまで歩いてこさせるという方法だけれど、それだと『卯王の聖地』の練習にならない。
しばし考えて、おれはひとつの方法を思いついた。早速やってみる。
まず、森の地面から、根っこをある程度の間隔で出す。
根っこはある程度太らせ枝分かれさせ、小さな手のような形にする。
そいつを動かして、まずはそこそこの大きさの土だんごを作る。
そうしたらその根っこで土だんごをころがしてリレー。ここまで導く。
よし、これならいいだろう。完璧だ。
と思ったらイツカたちからクレームがきた。
「まってまってカナタこわいこれ!」
「なんかちっちぇー手がいくつも生えてる……やだこわいマジ怖い……」
「え、そう?」
ハルキくんにも意見を聞こうと目をやれば、彼の顔もひきつっていた。
「あ、あの、たしかにファンタジーな感じですけど俺もこれはどっちかというと怖いっていうかホラーっていうか……」
「えー…………」
そういうことならしかたない。おれはさらに頭をひねった。
途中が平地なら、一気に投げてくることもできるけどそれもだめ。
やっぱり、『歩く』方向がいいか。
となるとラクなのはやっぱりおれのツリーアーマーとして歩いてくることだけど、こっちもサンクチュアリの練習にはならない。
と、ここでエルメスさんが助け舟を出してくれた。
「カナタどの。ここは思い切って『かわいい』の方面からアイデアを出してみませんか?」
「『かわいい』ですか……
おれ的に一番かわいいのはやっぱりうさぎ、かな……そうだ!!」
おれはさっそくそれを実行に移した。
まず、さっきの『根っこの手』で、腐葉土を成型。ぽってりとした雪うさぎの形にする。
うさ耳とおめめは、今回は表面換装でゴメンさせてもらう。
そうして、さっきの手形の根っこで、ぴょんぴょん投げるようにリレーすると。
「かわいーい!」
「かわいい!」
「やるじゃんカナタ!」
「かわいいですカナタさん!!」
「う、うさちゃんに見える……!!」
チアキにイツカたち、ハルキくんにエルメスさん。みんな大盛り上がりだ。
『うん、とってもかわいいわ。
これで撮れ高もバッチリね!』
携帯用端末の向こうで、エアリーさんもかわいいピースで太鼓判を押してくれた。
おれは『尊い……!』とつぶやくエルメスさんに、ありがとうを言ったのだった。
さて、石とか枝は撤去した。豊かな土も持ってきた。
でも、それだけではだめだ。
まずは、茂りに茂った草を抜き、そのあとで土を作らねばならない。
撤去作業に先だって、特に大きい草木はエアリーさんがどうにかしてくれたというが、くるぶし丈の草たちは健在だ。
これを人手で刈り取るとしたら、どれほどかかることやら。
しかしここで強い味方が登場である。
「この草は、大丈夫。これも、大丈夫ね。
よしっ。みんなー、ごはんよー?」
農地の一角を区切ったスペースに、エアリーさんがつなげた異空間ゲート。そこから出てきたのは、ひつじ牧場の羊たちだ。
あふれだしてくるや否や、フレッシュな青草をむっしゃむっしゃと食べ始める。
「このくらいの広さなら、明日朝までにはきれいに食べてもらえるわ。
そうしたら、土を耕して腐葉土を混ぜましょう。
まずはわたしがひつじたちを見ているから、チアキは道具をかたして、休んでおきなさい」
「はーい!」
エアリーさんもクレイズさまと同じ迷宮之女主人。ひらたくいうなら、ボスキャラだ。
三人の妹女神たちのダンジョンを突破して、はじめてエアリーさんに挑むことができるという仕組みのため猶予はあるものの、いずれ彼女も島のしごとをぬけて、戦いに行かなければならない。
それまでに、やれることを。そんな気持ちがありがたくて、ありがとうございます、と頭を下げた。
チアキを手伝って手押し車やスコップをきれいにし、小さな仮置き小屋の前に干す。
そうして、おれとチアキは東屋でひとやすみ。イツカたちは、もうひと仕事のため『いってきます』。
元気な背中を見送って、チアキとお茶していると、ふと瞼が重くなる。
ちょっとだけ仮眠をとろうか。そう言いあって目を閉じた。
「……ナタ。カーナータ!」
「おーい、チアキー?」
おれたちを呼ぶ声に目を開ければ、そこにはイツカたちとレンとトラオ。
四人の後ろには、暮れなずむ島の空。
結構寝てしまったようだ。うーんと伸びをする。
「トラオの露天風呂、入れるってよ! 行こうぜ!」
「え、早くない?!」
あれから数時間しかたっていない。いくらなんでも早すぎないか。
だが、トラオの言うので納得した。
「ジジイがいうにゃ昔の露天風呂があるってんで、とりあえずそこ復活させたんだわ。
なんか意外と状態よくって、まあまだちょっとボロいが、ちゃんと入れるぜ」
「俺たちと、イワさんとじーちゃんで最後だからさ。のんびりしようぜ。ソーダとか飲んで」
「うん!」
星を見ながら露天風呂。そして冷えたソーダ。
最高の島の夜である。
おれたちはぽんと跳ね起きた。
そんなわけで、イツカたちとレンはコーラ。チアキとトラオとおれたちはソーダ。イワオさんとアルムさんが冷酒で、星見湯プチパーティーが始まった。
気候は温かく、湯冷めの心配はないだろう。
「いや、こんな素晴らしい露天風呂は久々だ!
むかしユキナと入って以来だな……」
「あんたもか!」
お湯につかったイワさんがわっはっはと笑うと、トラオが辟易した顔になった。
ちなみにユキナさんとは、イワさん愛用のインテリジェントアーム『残雪』に意識を宿す、亡き奥様の名だ。
おれとしては、すこしほろっとしてしまう。
『トラオも入ればいいじゃないか。いいものだぞ! 男と女の露天風呂!!』
「アー、ハイ。サリイと結婚したら前向きに検討させていただきますー」
ロマンスグレーの頭にてぬぐいをのっけてゴキゲンのアルムさんに対し、トラオは棒読みだ。頭の白ねこみみも折れている。
「しっかしマジ意外だよなー。お前ら行くとこまで行ってんだろ? 風呂ぐらいもう余裕で入ってるもんだとばっかり」
「それとこれとは別なんだよっ!
ったく、チアキの耳ふさぎながら言うくらいならんな話題に突っ走るんじゃねえ!」
レンがのたまわると、ビシッと突っ込みが返る。
そう、レンはチアキの人耳と犬耳を器用にふさいでいるのだ。
とたんにアルムさんの目じりが下がる。
『おお、悪かったな、チアキちゃんにそんな話を聞かせちゃいけなかったな』
大きな手を伸ばしてよしよし。まるで愛犬でも見るかのような優しい目だ。
なるほど、アルムさんは犬派のようだ。
ミライと会ったらその瞬間にメロメロになるのは予想済みとして、いずれはケイジやユキテルと会わせて反応が見てみたいものである。
「どうしたのみんな?? 僕がきいたらだめなはなし?」
「あー。いや。なんでもないんだ。なんでもな?」
チアキはキョトンと小首をかしげる。かわいい、かわいいのだが彼はそろそろ19だ。これでこの先大丈夫なのか。というかミライを過保護にしすぎでないかと言ってきたのはレンじゃなかったか。あとでレンにそのへん聞いてみることにしよう。
とか考えてたら黒子猫野郎どもが暴露しやがった。
「いやべつにいいんじゃね?」
「いっしょに風呂に入る話だぜ!」
「おい」
「みんなでお風呂、僕すきだよ!
僕ね、ひつじ牧場にいたころ、エアリーお姉ちゃんといっしょにね……」
「っ?!」
チアキはニコニコ話しはじめる。露天風呂にどよめきが走った。
ぴょんぴょん!
わちゃわちゃ遊んでるようなシーンはやっぱり楽しいですね。意外と伸びてしまいました。
次回、ことの真相は。
どうぞ、お楽しみに!




