83-0 魔王島、ふたつの『再会』(回想)
『貴様ティーゲル!! どういうつもりだ!!
もう許さん! 今こそ成敗してくれる!!』
「はっ?! 待てよなんで」
『問答無用!! とりゃあああッ!!』
半透明の御老公は、抜いた剣先をビシッとトラオに向け、啖呵を切るや斬りかかってきた。
どうしてこうなった。そう思いつつもおれたちは、ボスバトルに突入したのだった。
記録によればこの島は、月萌に移り住んだ元ステラ人とゆかりがあるという。
立ち入る名目としては、子孫らによる学術調査。
しかし実態としては、利用価値の乏しさから放棄されて久しい公海上の島の内見。
一回ごと手続きされるのもめんどいし、つかどこの所有とするにもビミョーだし、ちゃんと整備するならもう私有しちゃっていいよ、ということで『おっつけられた』いわくつき物件である。
豊かな自然、たくましく生きる命たちのパラダイス。
そう表現するとリゾート感たっぷりだが、実際のところは廃墟がちょっとあるSランク超の小島フィールドだった。
「やべえ……やべえぞこいつら……」
「神獣に乗ったイツカナに襲いかかるとか、恐れを知らなすぎだろ!」
いつももめてるレンとトラオが意見一致してる。
無理もない。島が見えてからもう五回、パーティーは襲撃されている。
その度ルゥさんの翼で吹き飛ばし、シャシャさんのブレスで追い払い、それでも振り切れないときはおれたちで撃破したのだ。
リンカさんが言い出した。
「かなり数が多いわね……
ここで消耗するのは得策じゃないわ。聖水を使ったほうがいいんじゃないかしら」
「賛成。島の主がどんなつわものかもまだわかってないからね。
話し合いでなんとかなれば、それに越したことはないけれど」
生前の島の主は、哀しみのうちに天に召されたという。
この島がこうなったのも、一つには主の悲しみと恨みがあるらしい。
この先この島に住まうなら、それを晴らすことは避けて通れない―そしておそらく、彼との戦いも。
反対の意見はなく、島の主がおわすはずの居館跡が見えるまでの間は、聖水をたよりに進もうと決めた。
だが、まだ使わない。領域への立ち入り許可を得るためだ。
ルゥさんに島のギリギリまで近寄ってもらうと、その背の上、リンカさんとトラオがぎりぎりまで前進し、優雅に一礼する。
「領域のあるじよ。わたしは――」
『おお、フラン!
帰って来てくれたのか。
お前に閉ざす門はない。さあ、入っておくれ』
聴こえてきたのは、気品ある、老いた男性の声。
船着き場から、一筋の光る道が島内へのびた。
「フラン……?
いえ、ありがとうございます」
主はリンカさんと彼の娘さんを重ねているようす。
ともあれまずは、入らせてもらうことにした。
ルゥさんシャシャさんには待機してもらうことにして、その背から飛び降り、光の道をたどった。
光の道にはモンスターは近寄らず、辿ってゆけばすぐに館が見えてきた
ぼんやりとした光に包まれたその門の前には、ジェントルに装った老貴族が立っていた。
彼の体もぼんやりと輝き、そして半透明。この世の住人ではないことが容易に見て取れた。
『ほんとうによく戻ってくれた、フラン。父さんはうれしいぞ。
ひさびさに親子水入らず、語り明かしたいところだが……
その前に、しなけりゃならんことがある』
資料によれば、生前の名をアルムというそのご老公は、リンカさんにいとおし気なほほえみを向けるが、その横に控えたトラオを見るや、ギロリと目をむいてにらみつけて抜刀。
『貴様ティーゲル!! どういうつもりだ!!
もう許さん! 今こそ成敗してくれる!!』
そうして、激しい戦いが始まった――いや、始まってしまったのだった。
書いてみてプロットの不整合に気づくあるある……。
今回で回想編を終えたかったのだけれど、そんなわけで次回に続きます。
よろしくお付き合いください!!m(__)m
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