83-1 魔王島、ふたつの『再会』
しばし特訓という名のバトルに興じていれば、携帯用端末のアラームが鳴った。
そうだ、今日はアイドル一同、ソレイユ・プロダクション本社に赴き、ご挨拶をする予定になっていた。
もちろんおれたち四魔王が高天原に堂々のりこんだりしたら、どんな混乱があるかわからない。『おこんがー!』『アオゾラミッツ』、マネージャー部のみんな、警備のオウマ&ムネツグは直接本社に出向き、おれたち四人はオンラインである。
身なりを整え、予定の時間に回線をつなげば、なつかしいお顔が待っていた。
一通りあいさつを交わし、優しいねぎらいをいただいた後、社長――ユズキさんはおれにおっしゃった。
『これは私信になるけれど……カナタ君。
ライムを元気づけてくれてありがとう』
「え、あの、はい……」
おれの心境を一言でいえば、えっ、もしかしてもうばれてる? である。
おれは月曜日、ライムにプロポーズの指輪を渡したのだ。
いや、秘密にしてとは言ってないし、いずれはちゃんと言わなくちゃって思ってたけど!!
まあまて落ち着け。こういう時に妙に慌てれば墓穴を掘ることになる。
ユズキさんはそのつもりなのかそうじゃないのか、依然としてほんわかとした調子で言葉を続ける。
『もう知っているかもしれないが、ライムは君たちを待って、毎日『ゼロブラ館』の掃除をしていたんだ。
『自由研究会』もやっと動き出すんだってね。私たちもうれしいよ。
はやくまた、きみたちともうちで会いたいね。その日がくるのを、心から楽しみにしているよ』
「……はい!」
ユズキさんのとなりで、タンジェリンさんがくすくすと上品に笑っておられる。うん、この方には完全に把握されている。
それでもユズキさんの、そしてタンジェリンさんの笑顔は、まるでわが子に向けるかのようなあたたかさ。
胸の内にきゅっと来るものを感じた。
そうだ、星降園がおれたちのうちならば、ソレイユ家だって、うちなのだ。
庇護を求めたおれたちを、温かく迎え入れてくれた、いまひとつの『我が家』。
このひとたちにもう一度会って。そうしたら、ただいまを言おう。
かならず、元気で。イツカのもらった羽根が、消えてしまう前に。
心からの感謝を告げて、あたたかな通話は終わった。
本社――ソレイユ邸に行ったみんなは、そちらでお昼をいただいてからこちらに来る予定。
実を言えば、月萌での予定は今月まだある。月萌のβ居住区にむけてのこの戦いは、あくまで『リアル連動大型イベント』という扱いであるためだ。
だから、会おうと思えばそのあたりで会えなくもないのだが、そこはそれ。
なおおれたちも土曜に『森コン』があるが、新生魔王軍旗揚げ前夜祭も土曜から。二人に増えてて心底よかったと思う瞬間である。
ともあれ、時間もいいころだ。おれたちはコトハさんち特製の美味なるお弁当でお昼にした。
せっかくなので、海辺に出てみよう。ということで、整備の進む海沿いに出てみた。
今朝は基礎工事までだったのが、もう海の家がある。プールも三つくらいできている。空中フロートも五つ浮いているし、船着き場も直ってる。建築ゲームだってこうはいかないんじゃないかという速度だ。
エルメスさんがいみじくも言う。
「皆さんの建築技術もあってのことと分かっておりますが。
やはり、島の主の加護は侮れませんね……」
聞くところによればこの島は、100年前に住民のほとんどを失い、主が悲しみのうちに没して以来、めぐりめぐってソリステラスの国有地となっていた……が、長らく放置されていた。
島周辺の地盤がひどく軟弱で、巨費を投じて整備するだけの利用価値も見出されていなかったことが大きな原因らしい。
周辺の住人は、化け物の出る島と噂して近寄らず、モンスターだけが跋扈する魔境になり果てていたそうだ。
おれたちがこの島に最初に来た日のことが思い出された。
前シーズンのスーツどこ行った……
家中どこ探してもないので途方に暮れてます。
もし明日の投稿遅れたらごめんなさいm(__)m
次回、島の主との出会い。
どうぞ、お楽しみに!




