82-7 聴こえた! ラビット・サンクチュアリ完成形!!
回線不調にて遅れました……泣きたいorz
「まず、セレネがこれくれて!」
「俺もぐるぐるしてたらパーンてなって、つながって、降ってきた!」
……うん、ぜんぜんわかんなかった。
でっかい子猫たちは『ほめてほめてー』っておめめキラキラしてしっぽ立てているので、とりあえず撫でておく。
ターラさんとクレハの説明によれば、
1.赤イツカがセレネさんのことを考えつつ錬成していたら『月女神の木』ができた
2.ターラさんとクレハが「これは偶然じゃない。月の女神の名を持つセレネさんからのメッセージ」と解釈。
3.「ルナも月の女神とのつながりが強いため、彼女のことを考えてやってみれば」と白イツカにアドバイス。
4.それを受けた白イツカが、ルナのことを考えつつ錬成を行ったところ、光の柱が発生。時空をつなぎ、ルナの祈りが物質化して降ってきた
……ということだ。
ぶっちゃけめまいがしてきた。
イツカは錬成初日の超ルーキーだ。それがはるかな時空をつないで祈りの物質化とか、もう泣いていいですかの世界である。
ざっくり言うなら、おれだってそうそうやろうと思わないレベルのことだ。
ターラさんが明るく優しく言ってくれる。
「まあでも。ありえなくはないよ。
イツカはセレネ様の愛を受けた存在だからね。しかも装備も月と関連の深い『猫』。
それが『ダイアナの木』のそばで一心にぐるぐるしてたからね」
「つまり、どちらかというと神聖魔法に近い機序だったってことですね……それならまあ、納得もいきます」
神聖魔法は神に祈って清き心の力――ぶっちゃけいうならTPをささげ、ひきかえにその神の力を顕現させる。神の力で時空をつなげ、パワーを下ろす技法、とまとめてさしつかえないものだ。
どっちがより高度、ということはない。いうなれば、アプローチが違うのだ。
何かを何か別のものに『変換し、安定的に存在させておく』ということはそれこそ『奇跡』か、それ相当の超高位神聖魔法でしかできない。
たとえば毒消しでは文字通り、毒が『消える』。聖水だってモノとしては厳然として『一時的に聖なる力を宿しただけの、水』でしかないのである。
「ということはその羽根、ずっととってはおけないものかも……ちょっと『聴かせ』て」
白イツカが大事に持っている羽根に『超聴覚』。するとやっぱりの結果が出た。
『白光の鳩羽:プレイヤー・ルナの第三覚醒の産物。何物にも妨げられぬ、愛の祈りが顕現した白き光の羽根。込められた祈りの力を放射しながら溶けてゆくので、長くともひと月で溶けてしまう』
「そっか、……そっか。ルナ、第三覚醒、したのか……!!」
白のイツカは嬉しそうに、光の羽根を胸に抱く。
それで納得がいった。さきほど聞き取ったルナの祈りに『大神意』の影響がききとれなかったこと。つまりそれが、彼女の第三覚醒だったのだ。
「よっしゃ! こいつは大事な時に使う!
っで、全部溶けちまう前に、ルナに会うっ!!
っしゃあ! おーいみんなー! これいっこ使ってくれー! ルナがくれたー!!」
と、白イツカはぶんぶん手を振り叫びだした。
おれは聞き返さずにいられなかった。
「いっいや、いいの?! ルナのプレゼントでしょ?」
すっとんできたトビーとアッシュもさすがに遠慮する。
「あの、たしかに俺ら、イツカさんのアイテム、建築に使えたらって言ったけど!」
「さすがにそれは、俺たちが使っちゃ申し訳ないっていうか……」
するとイツカはにっこり笑った。
「こいつ触ったときに、ルナのきもちが伝わってきたんだ。
俺だけじゃなくって、みんなのことも心配してた。
島の整備が早く進めば、その分安全になるじゃん?
つか俺的には、むしろこっちを使ってやってほしいかなって。
そうすれば、ルナも俺たちの仲間でいれるだろ?」
「…………イツカさぁぁん!!」
「俺たち! 一生ついていきます――!!」
「っしゃあチナツさんもついてくぜ――!!」
ノリノリ三人組がうわーんと抱き着いて、その場はいい雰囲気に。
納得した。イツカはこういうやつだ。
どこまでもピュアで、まっすぐ。
だから、奇跡も起きるのだ。
ちらっと錬成釜に目が走ったが、やめておくことにした。
おれはもう、錬成を知りすぎている。その枠組みに縛られてしまう。『奇跡』は起きない。
だから、おれはおれで。人の手になる努力で、進んでいくのだ。
大丈夫。おれにはもうとっくに、素晴らしい贈り物がある。
おれのうさみみに結ばれたふたつめのリボンは、あの日ライムがくれたものだ。
たとえ、ステータス的にはただの『レースのリボン』だとしても、愛する人が結んでくれたのなら、最高のお守りである。
もうひとりのおれはというと、ほんの小さく鼻歌を。
ルカとルナが作った『風となれ翼となれ』。これはもともと、ルカがこいつに贈ったものだ。
これもまた、最高の贈り物。
だいじょうぶ。おれたちももうちょっと、がんばれる。
うなずきあった時、イツカ――赤リボンのほうだ――が「そうだ!」と声を上げた。
「俺の第四覚醒、真の姿がわかったぜ!
『0-G『エクストラーダ』』。
エクストラで、ラダーで、エストラーダだったんだ。
天へと伸びる星の木のはしご。あと一歩をつないでくれる、希望のはしごってやつだった」
「あと一歩を、つなぐ……?」
「ああ!
これがちゃんとできるようになったらきっと、俺もみんなを手伝える。
たとえば、みんなを覚醒させたりさっ!」
うれしそうに言うイツカは、またすこし大人びて見えた。
もうこいつは、目の前のモンスターに突撃することしか頭になかった『突撃にゃんこ』ではないのだ。
ぽろっと口から出ていた。
「お前さ。でっかくなったね」
「おうっ!
だからさ。これ、カナタたちにやるよ。
俺はもう、セレネからのメッセージを受け取った。
こんどは、お前たちの番だから」
差し出されたのは、イツカが錬成した『ダイアナの木』。
その瞬間、ひらめきがまわりはじめた。
「あ、ごめん。ちょっとそのまま、そのままもってて!」
「こんなかたち、どっかで……木……ツリー……スキルツリー!」
「人のうちに根を張り、それを操り、導くもの」
おれがそれをみて連想したのは、イツカたちとは逆。
さっきインストールした『ソードダンサー』の、スキルツリー。
そして、それに(正確には、それが、だが)似たもの――地のうちに伸びる、根っこだった。
「おれたちの覚醒みたいだ。根を張って、草木を生やして」
「操って、感覚を共有して、チカラを与えたり、もらったりして」
ついには大地以外にも根を張った。
自分にも。ゴーちゃんのカケラにも。そのほかのいろんなものにも。
「動かせるようにもなったよね。まるで自分の体みたいに」
「根を張って、力をめぐらせて、…………」
思うまま、おれは地に膝をつく。
大きなたれうさ耳は豊かな土にふれると、すいと地の内に滑り込んだ。
「……あ」
そのとたんおれは、まさしく神の視点というべき知覚を手に入れた。
「『聴こえ』る! この島の様子がぜんぶ!!」
「地上も、地下も、……すごい、この島の地下レアメタルめちゃくちゃ埋まってる!! 温泉も出るよこれ!!」
うれしくて叫ぶと、地下測量担当のルーレアさまがすっとんできた。
いつも眠そうなお目目もパッチリだ。
『カナタ、こっからそこまでわかるの?!
ホワイトスパイダーウェブ、ブラックダイヤキューブ、クリムゾンブライトメタル、全部あるけど大深度地下だよ!』
「はい!」
「ちゃんと『聴こえ』ます。もってくることも……」
そのとき、頭がぐらり。おれはうさみみを引き上げた。
やばいやばい、オーバーヒートするところだった。
これは早く加減をマスターしなければいけない。
それでも、おれの中を占めるのは九割が喜びだった。
さっきのおれは、間違いなくこの島の大地と一つになっていた。
第四覚醒の全貌がようやくはっきりしたこともそうだが、大地に抱かれ、一つになった感覚そのものが、おれに大きな大きな喜びをくれたのだ。
イツカがおれをかかえて、よかったなーよかったなーと背中をポンポンしてくれた。
さすがにこの状態で意地を張る気にはなれない。いや、張らなくっていい。
おれはあったかな相棒の支えに、しばし甘えることにしたのだった。
「今日は朝のうちに書きあがったワーイ!」→母の日グリーティングカード作っていたら回線不調→なんとかなおって作り直し原稿チェックして投稿←イマココ
投稿しようとすると回線トラブるのなんとかしてくれほんとまじ( ̄∇ ̄;)ハッハッハ
次回! エアリーさんをはじめにどんどんみんなやってくる予定!
どうぞ、お楽しみに!




