82-5 カナぴょん、剣を覚えてみるってよ!(1)
整備前とはいえ、わが島を荒らしたくはない。
ふたりのおれとエルメスさん、ハルキくんはシミュレーションモードで特訓を行うことにした。
ハルキくんが口火を切った。
「とはいえカナタさんって、もともとオールラウンダーですよね?
錬成はもちろん、神聖魔法も使えるし。射撃や投擲、『ムーンボウ・サンクション』の跳び蹴りはそもそもハンタースキルですからね」
「あー……」
おれとおれは顔を見合わせた。跳び蹴りの使用頻度は低い。射撃や投擲は逆に必須すぎて意識していなかった。けれどたしかにどれも、ハンター系スキルだ。
エルメスさんも言う。
「そういえば、お聞きしていたな。
カナタ殿はもともと、ガンナー志望でいらしたと」
「そうそう、二丁拳銃を操る身軽でかっこいいハンターうさぎ!
それがイツカさんをフォローするためにクラフターになって、ミライさんだけに負担がいかないように魔法も覚えて……すごいですよねっ!」
ハルキくんはキラキラのおめめを向けてくれる。これだけ素直に尊敬のまなざしを向けられるとひねくれもののおれたちでも、もはや照れるしかなかったりする。
「まあ……そこはほら。イツカはあぶなっかしくてほっとけなかったし、ミライはがんばりやだからさ」
「できることをしたくて進んでたらそうなってた、っていうか」
「わかります!『ミライツカナタ』のむかしの映像みてるとこう、画面の中入って助けてあげたくなっちゃいますからっ!」
「あれは……うん。人類の至宝だな」
なぜかエルメスさんがほほを染めてそんなことを言い出した。さすがにちょっとはずかしいので軌道修正することにした。
「あのっ、それで!」
「えーとまあ、そういうわけでなんですけれどっ」
「……おれあまり近接武器ってやってないので、そのへんやってみたら新境地が開けるかなと思ったんです」
「具体的には、そこそこわかるナイフや手斧、もしくは、長剣、かな……と」
「なるほど、ご自分でもイツカブレードのふり心地を見られることがあるためですね」
「ええ、そういうことです」
ナイフと手斧は、採取に必須の小道具たちだ。ときにはこれで身を守るため、スキルもある程度までは自然に身につく。
それら以外でいちばん身近な近接武器はというとやはりイツカブレード。両手でも扱えるタイプの長剣だ。
学園闘技場の初試合、あるきっかけでぷちきれたおれはイツカブレードを手にイツカをおっかけまわしてしまったのだが、あれはちょっとした黒歴史だ。触れてくれなくて助かった。
ともあれ、エルメスさんとハルキくんは顔を見合わせ、うんとうなずきあった。
そして、提案されたことは。
「お二人さえよいならば、だが……
『ソードダンサー』を使ってみませんか。
刀剣スキルパスを通してみるにはよいかと。
ご不要になったなら、アンインストールもできますし」
『ソードダンサー』は、ステラ領にて使われている刀剣スキルパッケージ。剣を使う軍人や貴族はみなこれをインストールしている。信頼性は高い。
「そう、ですね」
「やってみます!」
『ほいほい、そーとなったらおれの出番だねん☆』
と、おれたちの胸元が強い光を放つ。
光が引いてみればそこには、いつものねこみみメイド服のライカ分体たちがいた。
スキル体系についてもいつかまとめてみたいものです。
バトルアクション系はハンター系スキルという感じです。
クラフターは採取中のバトルにそなえ、投擲や射撃をとることが多いです。
次回、引き続きつづきっ! お楽しみに!!




