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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_81 魔王軍のなくなった日~新規開店は来週です~

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Bonus Track_81-8 雪狼の策士、年下の異母弟を溺愛す~シグルドの場合~

 レムを通じてよこされた話は、予想通りのものだった。

 エルメス殿下の要請で『ステラ杯』が開催される。願われるのは、『魔王軍』との講和。

 本来ならホスト側となるタクマもこれに賛同、『六柱』を辞した。

 さらにはリア様エルナール、ユフィールまでもが『結婚準備のため』とのたまって出場辞退を予定している。

 となると、後釜が必要というわけで。


「つまり、サーヤの婚約者かつ、ステラ開戦派トップ、そして『六柱』レベルに強い私、……というわけですか」

「はい。……ぶっちゃけすっごくめんどくさそうですね兄上」


 レムは半笑いのビミョーな、だがそこがすっごくかわいらしい顔になった。


「あれっ? 耳、出てました?」

「僕がくるとだいたい出しっぱなしじゃないですか。っていうか顔にもモロ出てます。バレバレです。あんたマジに貴族かってレベルです」

「……はぁ」


 遠慮会釈なしのレム。ぶっちゃけ可愛すぎてヤバいレベルだ。思わず口から幸せのため息が漏れた。

 いけないいけない、まだ昼間だ。じゃない、レムはまだ子供だ。というか母違いの弟なのだ。

 気を引き締めなおして伝達に注力することとした。


「まあ、個人的な感情を言えば、その通りです。

 相手が月萌だったらまだしも、あのお二人でしょう? しかもまたさらに強くなっておられる。無理ゲーなんですよ。

 それにどーせこれ、出来レースみたいなもんでしょう?

 私たちが勝ったところでだれも喜びゃしない。だったらもう少数のうるさいやつらなんかバッサリ切り捨てちゃえばいいんですよ。つかむしろそいつらを出場させりゃいい。

 ……って、言ってできる人たちじゃないんですよねえ……」

「あはは……そういうことです」


 ステラ様と、ステラ領ロイヤルファミリー。

 いい方々なんだけど、どうもほわほわしたところがある。

 憎めない、憎めないんだけれど、ときどきえっらい手がかかる。

 ため息をつきつつ、私たちは一緒のタイミングで紅茶を口に運んだ。

 こんな偶然にでくわすと、ああ、やっぱり兄弟なんだなあと再認識できてうれしい。

 願わくば、カナタさんともそうなれる日が一日一分一秒でも早く来てほしい。

 私の前でティーカップを手に微笑むカナタさんを想像していたら、かわいらしい咳払いが響いてきた。いけないいけない、いまはレムとの時間、というか話し合いの最中だった。

 気を引き締めなおして疑問点を確かめることにした。


「あと、気になることもあります。

 今、そんな悠長にお祭りやってられる状況なんですか?

 というか、戦いを始める前に講和ともなれば、月萌ソリスも、国内の開戦派も収まらないでしょう」

「ええ、ですので、魔王島での戦いを通じ、その結果を『ステラ杯』のそれとして使えればと。

 すなわち、島もしくはその周辺で防衛にあたるエルメス殿下、タクマに対して『六柱』メンバーが当たり、その戦いの結果を勝敗とするんです」


 なるほど、よく考えたものだ。

 というか、てきぱき説明するレムが愛くるしい。

『シエル・ヴィーヴル』のメンバーたちはいつもこれを見ているのかと思うと毎度のことだがくそうらやましい。

 いっそ素直に私が従軍すればよかったのか。そうすれば成長していく可愛いレムを間近で見られたのだろうか。

『シエル・ヴィーヴル』のメンバーは『エルメスの家』の親なき子たち。ならば私も父母に縁を切ってもらったうえで若返り薬を大量摂取したならば……

 そこまでシミュレーションしたところでむこうずねを蹴られた。さすがは現役軍人、結構な威力がある。だがそれがまた気持ちいい。

 嬉しさに包まれながら私は返答を返した。


「なるほど。それならさしたる文句も出ないでしょうね。

 わかりました。では、伝えてください。

 カナタ・ホシゾラを挑戦者に加えてください。

 かつてわたしを下したあの男との対戦がかなうというのであれば、その任、お引き受け致しますと」

「……………………冗談なら、今のうちにそう言ってくださいね?」


 レムが立ち上がった。引きつり笑った顔がかわいらしい。

 さあ、思案のしどころだ。

 ここはそのかわいいこぶしで一撃してもらってから種明かしをし、胸ときめく呆れ顔を拝むべきか。

 それともさらりとかっこよくわが腹案を開陳し、ひねくれ交じりの賞賛とツンデレな尊敬のまなざしをこの身に浴びるべきか。

 どっちも捨てがたい。考えていたら、レムは「ご馳走様」と出ていくところだった。

 ああ、さすがは我が最愛の弟。兄の想像などナナメ上で軽々と超えてくる。

 私はほっこりしながら、愛してやまぬ彼を引き留めるのだった。

没サブタイ:『ダメ犬兄さん、むちゃぶりしてみる』


次回、ルクのつぶやきでこの章を締める予定です。

どうぞ、お楽しみに!


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