81-2-2 お風呂、おやつ、それともバトル? もふもふ牧場へ顔出しました!(2)
おれたちがお風呂に入ってしばらくたつと、トラオがどっと疲れた様子で入ってきた。
「おつかれー」
「試着おつかれさま!」
「大変だったね、トラオ」
かけ湯をして浸かったトラオにねぎらいの声をかけると、まず帰ってきたのは大きなため息だ。
「いやお前らな。
そんなのんきなこと言ってるが、いずれお前らの番が来るんだぞ?」
「僕たちのばん?」
「だから、水着! 入るんだろ俺の露天風呂?」
「や、入るけど、別に着なくてよくね?」
能天気黒猫野郎がサラッとのたまった。
いっしゅんあっけにとられたトラオだが、かんで含めるように説明してくれる。
「あのよ、わかっていってるか? 露天風呂は公開だぞ?
タオルで入ってうっかりズレたら放送事故だぞ?」
「えマジ――?!」
どうやら、公開だということは知らなかったよう。イツカはがくぜんとした顔で叫んだ。
「まーどーせライカあたりがるんるんモザイクかけてくれるだろうがな……」
「まじか~……風呂に水着って邪道だろそれ~……
だってすべてを解き放って満喫すんのが露天風呂だろっ!
うあ~……たのしみにしてたのにトラオの露天風呂~……」
ぐっとこぶしを握って熱く主張したのち、ネコミミを折ってしょぼくれる奴。いや、そこまでこだわらなくとも。
だが、トラオは感に堪えない様子で目を潤ませた。
「おまえっ……そんなに俺の風呂、楽しみに……
わかった!! お前のためにプライベート露天風呂作ってやる!!
思う存分マッパで入れ!! 俺もそうする!!」
「マジかあああ!! ありがとなトラオ!! 心の友よっ!!」
がっと立ち上がり、固く手を握り合う風呂好き白黒にゃんこども。
チアキがぱちぱち、拍手した。
それから、トラオはお風呂の様子を確認。イツカとチアキはお湯をかけあって遊び、おれはのんびりお湯を満喫。
トラオのチェックが終わったら、みんなで上がった。
「俺の場合はサリイが揃いにしたいっていうし、っていうと採寸とかは女子のクラフターがいいからってことで、レオナたちに頼んだってんだが……
お前らはニノあたりに頼んだらいいかもな。野郎同士のが気兼ねねえだろ」
「それはあるね……」
普通の衣装ならまだしも、水着なのだ。その採寸のためとはいえ、可憐な美少女たちの前でギリギリまで脱ぐのは、やはりはばかられる。
しかし、問題もあった。それは。
「まあ問題があるとしたら……」
「ニノっていつみても忙しいよね……」
そう、人数が人数だし、さすがにそんなにホイホイ頼めない。
するとイツカがのたまわる。
「もうスク水でよくね?」
「それだ!!」
といっても、高天原学園のスクール水着ではない。『シンプルなおそろいの水着』ということだ。
とりあえず、まずはそれで。それぞれアレンジをしたり、手持ちを着たり、はたまた個々人で新しく調達したりは自由だ。
これなら、水着ないから公開露天風呂入れない、なんて悲劇も避けられる。
『露天風呂に揃いの水着と。なかなか楽しそうな話じゃな?』
そんな風に話しながら居間に向かっていたら、シャスタさまが迎えに来てくれた。
『どうせなら温水プールやジャグジー、ビーチも楽しめるアクアリゾートエリアなんぞもつくってはどうじゃ。
その暁には、わらわも手を貸してくれようぞ?』
「わー、たのしそう! 僕もやりたい!!」
無駄に女神様モードで神々しさ出しているが、逆にワクワクが浮き彫りだ。
チアキも無邪気に喜んでいるが……悪い話じゃない。
無邪気じゃないおれは、さっそく聞いてみることにした。
「うれしいですけど、場所は『魔王の居城のある島』ですよ。
へたしたら、攻め込まれる可能性もありますが」
『ふっふっふ……わらわを誰と思っておる?
世界のつわものどもがじゃんじゃんやってくるのであろう? むしろ毎日の楽しみが増えるってものよ!!
島なのだからまわりは海。まさしくわらわのフィールドよ。
そこでたのしくバトルして、温泉、プール。まさしく夢の日々ではないか!!
よしっ、島にアクアリゾートを作れ! さすればわらわが島の守護神となってくれよう!!』
「ありがとうこざいます!!」
よしよし。さっそく守護神一名ゲットである。
どんどん話がでかくなっているけれど、わかっていっているのだろう。
なぜって、上機嫌にこんなこといいだしたからだ。
『ようしよし。ビーチ系ならクレイズ、温水プール系ならばルーレアが詳しそうじゃな。わらわから声をかけておくぞ!』
「ありがとうございます!」
するとそこへ、エアリーさんもやってきた。
「あらあら、なんだか面白そうね!
そういえば、島には農場があるのよね?
わたしもお手伝いしに行っちゃおうかしら?」
「え、いいのっ?
それ、僕からお願いしようと思ってたの!
お姉ちゃんが力を貸してくれたら、こわいものないもの!」
チアキがコーヒー色のしっぽをふさふさふって声を弾ませる。
エアリーさんもゆるゆるしっぽを振りながら、チアキの頭を優しく撫でた。
「もちろんよ。
わたしたちは家族ですものね。
たとえ、血はつながっていなくても、心はそのぶんしっかりつながった」
「うん! うんっ!!」
そこへレオナさんたちもやってきて、「わたしたちももちろん、お手伝いしますからねっ!」と言ってくれて。
ホットミルクと焼きたてパンケーキのおやつタイムは、小さな『がんばろう会』と相成ったのだった。
着々とダンジョン経営もののかほりが漂ってきました。
遊びすぎんようにせねば。
次回、ステラ領でのお話の予定。
どうぞ、お楽しみに!




