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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_81 魔王軍のなくなった日~新規開店は来週です~

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Bonus Track_81-6 六獣騎士御前会議、もしくは、たからもののある場所~ライアンの場合~

「えへへ……すごいなあ。すてきだなあ。うれしいなあ……」

「すてきね、エルマー。とても似合っているわ」

「そう?! ありがとう!!

 これね、これねっ。すっごいんだよ!!」


 転移で戻ってきてからもう、何度目か。

 エルマーは、左手の甲につけたエンブレムをためつすがめつしては、うっとりニコニコしている。

 クローリンが優しく声をかけると愛らしい笑みをはじけさせ、機関銃のようにしゃべりだした。


 留学から戻ってきて、エルマーはぐっと明るくなった。

 地神龍の一族は優秀かつ長命。そのためか、数が少ない。

 だからいつもエルマーは、周りを大人たちに囲まれていた。

 そうしてすっかり、遠慮がちの少年となってしまった。

 それがいまや、年相応の無邪気さをもって接してくれるように。

 タクマとエルメス殿、月萌の人々には感謝しかない。


『魔王軍エンブレム』。見た目はうさねこエンブレムに黒の月を加えた洒脱なものだが、この中には『世界最高峰の、すっごい技術』が詰め込まれているという。

 それについて、エルマーは熱心に説明しているが……正直わからない。

 われら平原の民はハンター偏重。それではいけないと、それなりに勉強していたつもりだったのだが。

 若干落ち込んでいると、ステラよりの使者という名目で遣わされてきた愛娘が、ぽんぽんと背中をたたいてくれた。


「大丈夫です、わたしも半分しかわかんないです、父上」

「えー、ベルちゃん半分わかるだけでもすごいわー……あたしゼンゼン」

「それは空の女王として問題だぞ、ルリア。ライアンと一緒に後で学習会だ」

「ええ――!」

「パレーナ、それはもう少し余裕ができてからにしましょう?

 知識は発想の源、たしかにそうね。けれど、いま彼らには専門分野を生かして動いてもらったほうがいいと思うわ。

 とくにルリアとあなたは、『魔王島』への道を切り開く主力となるのだからね」

「う、うむ……うむ。それもそうだな」


 ステファンがほがらかに笑いかけると、パレーナは小さくせきばらい。

 するとそこに、ルリアがたたみかける。


「パレーナはさ、ほかにも大事なことがあるんじゃなーい?

 そろそろマルちゃんと……ねえ?」

「なっ?!」


 けして大っぴらにはしていないが、パレーナとマルキアはよい仲だ。

 そしてそれをとりもったのが、このルリアなのである。


「ふたりがラブラブなら、ソリスとステラの団結もより確かになるってものよ!

 がんばってね♪ 応援するわー♪♪」

「う……うむ。ああ。うむ」


 パレーナは赤くなって咳ばらいを繰り返す。もはや形無しだ。

 そのとき、エルマーが言葉を止めた。


「なので……あ、ごめんなさいクローリン。ひとりでどんどん、しゃべっちゃって。

 あの、もしかして、わかりづらかった……?」


 なるほど、空気が読めるというエルマーの美点は、失われていないようだ。

 ただ、これまでは過剰なほどのそれが、彼を引っ込み思案にしていたものだが……


「そうね、すこーし、むずかしかったかしら?

 でも、もっとわかりたいと思ったわ。

 エルマーがとても楽しそうに話してくれるのですもの。だからわたしも、とても楽しい気持ちになったの。

 ありがとう、エルマー。エルマーの宝物のこと、教えてくれて」

「……うんっ!

 これ、僕のいちばんの宝物なの!

 うれしい。クローリン、わかってくれた!」


 クローリンのあたたかな、絶妙のフォローで、再びエルマーの顔には輝きが戻った。


「……アレは真似できないわ」

「そうね。クローリンの対人スキルは、わたしたちのなかでも抜群だわ」

「敵う気がしないな」

「まったくだ」


 俺たち四人はうなずきあった。

 と、そこへ飛び込んでくる明るい声。ソレア様だ。


「おまたせおまたせー!

 ごめんねみんな。

 エルマー、おみやげくれるんだって?」

「あっ、ハイ! これっ、これです!!」

「これは……!」


 エルマーが差し出すのは、かわいらしい色をした小さな包み。

 中身は『魔王軍』エンブレムである。

 断られてあたりまえのダメもとアタックだというが、結果に俺は驚いた。

 ソレア様は微笑み、サラッと受け取ったのだ。


「ありがと、もらうよ!」

「えっえっ、いいの?! じゃなかった、ですかっ?!」

「もちろん。

 でも、ボクがこれをつけるのは、イツカとカナタがボクに勝ったらだ。

 それまでは、大事にとっておくよ。

 ソリスの地には、ふたりと戦ってみたい子もいる。『大神意』の有無以前にね。

 いまボクがこれをつけたなら、忖度しちゃう子もいるからね?」


 ちゃめっけたっぷりのウインクが飛んでくきて、俺は慌ててしまう。

 けれど、そこに込められた気遣いは、ありがたいものだった。


「だから、はやめに島への道を開き、戦況を進めよう。

 ボクが堂々、大将戦にのぞめるようにね。

 だいじょうぶ。こんどのコレは戦争であって、戦争じゃない。

 ボクらのともだちが誘ってくれた、『魔王と勇者のウォーゲーム』だから!」


 たしかに、ひと月前の動画の中で、カナタは言っていた。

『ウォーゲームをしよう』と。

 そうして歌い、ときには漫才なども披露しながら、目を見張るような戦いぶりを見せてくれた。

 

 ソレア様はあえてそれを真正面から真に受けることで、悲壮な戦争の再来を拒んだ。

 そしてただ、全力で楽しむバトルイベントとしてのみ、その存在を許した。

 その機知と器。さすがは、我らが女神。感謝と敬意をこめ、俺はこうべを垂れた。

 だが、驚きは続いた。


「さてと。

 母上にはわるいけれど、これの『精神支配絶対防御チカラ』は使わせてもらおう。

 ボクたちは戦う。けど、憎しみはいらない。

 そして、しんどすぎるしがらみもだ。

 六人とも、『いますぐ魔王軍陣営にいきたい』って子たちを募っておいて。

 エルマーが戻るときに、連れて行ってもらおう。

 ……ベルちゃん、もし伝えにくいなら、ボクからこのことはご報告するけれど?」


 顔を上げれば、ベルはあんぐりと口を開けていた。

 確かに――『いくばくかの人員を魔王軍に』。それは決定事項だったが、こうまでアッサリサッパリと。

 ソレア様との付き合いはそれなりのはずだったが、これには度肝をぬかれた。


 それでも、俺が立ち直る前にベルは笑った。


「いえ。

 それはわたしの役目ですから。

 ここで、それを果たしたい。それが、わたしの意志ですので」

「よし、それでこそ俺の、自慢の子だ」

「はい!」


 ベルの頭を誇らしく撫でつつも、俺は感慨に満たされていた。

 この地にある我らはかつてみな、魔物であったのだと聞く。

 こうして人の姿を取った今なお、その魂の形は不完全であるのだとも。

 けれど、そこに宿る輝きは、こんなにもまばゆくいとおしい。


 上位世界アースガルド。そこがいかなるものであるかは、ソレア様も知らされていないという。

 だが、俺は誇りを持って言える。

 この世界――中つ国ミッドガルドは、そこに暮らす者たちのこころは、けしてアースガルドの住民たちにおとるものではないのだと。


 だが、ならばこそ俺は進む。

 己を陶冶して。

 救いを待つというかの地。滅びへと向かう、未知の大地へ赴く日をにらんで。


 俺は決意を新たに、はるかな地平からの風を吸い込むのだった。

それでも、平和であるに越したことはないんだと思いつつ。


次回、お風呂なイツカナたちの予定です。

どうぞ、お楽しみに!

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