81-2 お風呂、おやつ、それともバトル? もふもふ牧場へ顔出しました!(1)
それから最初にしたことは、月萌公民館に行き、町の皆さんに無事のご報告とお礼を伝えることだった。
アイラさんが『講演会』と称して予約を取っておいてくれたので、そこはスムーズだった。
星降町は小さな町だ。おれたちの帰還の報はあっという間に広がり、大ホールに入りきらないほどの人が詰めかけた。
赤リボンと白リボン、四人で演壇に出ればもう、スタンディングオベーションに万歳三唱。
へたするとそのままどんちゃんさわぎになる勢いだったのだが、そこは『母さん』やサンジさんが『今日はイツカもカナタも疲れているし、改めて一席を設けよう』と声をかけてくれて、いったん解散。
最有力候補は、金曜の夕方。上映会の席をパーティーにするというものである。
もちろん、星降園での『おかえりパーティー』は今夜。
『主役たちは休んでて!』と言われ、その間におれたちはしなければならないことを済ませておくことにした。
それは、ミッドガルドにも顔を出しておくことだ。
おれたちは、五歳のときから『ティアブラ』をやっていた。
その舞台ミッドガルドは、おれたちにとってもうひとつのふるさとといっていい。
今回もたくさんの人たちが、心配してくれた。助けてくれた。
関係先すべてを回るのは無理でも、すこしでも顔は出しておきたい。それぞれさっそくダイブした。
赤リボンのおれとイツカが最後にログアウトした場所は、『エアリーのひつじ牧場』だ。
いまは学校も終わったくらいの時間。リアルでは学生だというレオナさんたちも、そろそろインしていることだろう。
はたして牧場前庭には、そわそわうろうろしている三匹のくまちゃん……ではなく、熊装備の美少女クラフタートリオが待っていた。
「お、おふたりともおお!!」
「よかった、よかったあああ!!」
「エアリーさん! シャスタさん! ひつじちゃんたち!
イツカナさんたちいらっしゃいました――!!」
レオナさんがとびついてきて、アシュリーさんが歓声を上げ、ミシェルさんが牧場奥に向けてよびかけると、二人の女神と羊たちが土煙を上げる勢いで走ってきた。
「まあ! まあ! 疲れているでしょうに! よくきてくれたわ!!」
『風呂か? ホットケーキか? それともわらわと一戦するかっ?』
「わり、今日はもうカンベンして……」
『いやいやじょうだんじゃて。いくらなんでもそこまでの外道はせぬわ』
このやりとりにレオナさんたちも驚き半分納得半分だ。
「イツカさんがバトルをことわるなんて……」
「はじめての事態です……」
「心底お疲れなんですね……」
ちなみに現在おれたちはもふもふふわふわのひつじたちにかこまれて、もみくちゃなのか癒されてるのかもうよくわかんない状況である。
「あー! ふたりとも来てるー! わーい!!」
「あっと……おいーす」
するとそこに響いてきたのはチアキとトラオの声だ。
チアキはぽーんと飛び込んでくる。後ろで照れ臭そうにしてるのはトラオだ。
「チアキとトラオも! 疲れてるんじゃないの、大丈夫なの?」
「だいじょぶだよ! だってここも僕にとっては『うち』だもの!」
「あー。俺はとりあえずあいさつと。風呂、様子見ときたくてっ?!」
そのときトラオがレオナさんたちに捕獲された。
そのおめめはきらっきらだ。
「魔王島に露天風呂! 作るんですよね?!」
「作るということは入るということですよね?!」
「水着着用ということですので、やはりかっこいい水着が必要ですよね?!」
「え……いやっちょっまっ?!
だめだぞ?! 脱がねえぞ?! んなことしたらサリイに俺が丸焼きにされるからな?!」
「いえ、仮縫いはもう終わってます。あとは着ていただいての微調整とお色の選択をっ」
「なんでサイズとかわかってんだよ?!」
「そこはそれ、サリイさんにご協力をいただきまして」
「なあああ?!」
「大丈夫です、サリイさんともおそろいデザインですから」
「怖くないですから、こっちで試着しましょうね?」
「ぎゃ――!!」
「ついでにお風呂はいってらっしゃーい、あがったらパンケーキだからねー?」
トラオが洗われる猫よろしく拉致られていく。
おれたちが顔を見合わせていると、エアリーさんとシャスタさまが声をかけてくれた。
「三人も入ってらっしゃい。シャスタもいるし、今日はお手伝いなんかいいから」
『うむ! ここは任せて風呂に行け!』
なぞのテンションで親指を立てるシャスタさま。
最初はひたすら神秘的だったはずなのになんか雰囲気かわったな、と感じるおれだったりした。
昨日歩いていたら猫さま親子にお会いしました。マジ天使( *´艸`)
次回、ソリステラスの一幕の予定です。
どうぞ、お楽しみに!




