81-1 涙のただいま! 星降園への帰還!!
「お、……にいちゃんたち?!
ほんとに? ほんもの? ゆうれいじゃない??」
約束の時刻、転移したおれたちはもう、星降園の全員に囲まれていた。
ソナタが目を潤ませる。もちろんおれは言う。
「ほんものだよ。さわってごらん?」
ソナタはぎゅーっと、痛いくらいにおれたちを抱きしめてくれて。
そこからはもう、もみくちゃだった。
おれたちはひたすらに、ごめんねとありがとうと、ただいまを繰り返したのだった。
今頃、みんなもご実家で同じことをしているはず。
大丈夫、『魔王軍』はなくなった。『新生魔王軍』の本格稼働は来週からだ。
おれたちはしばしの安らぎにひたるのだった。
こうすることは、一か月前から決まっていた。
この戦いを国家間戦争にしないためには、おれたちは月萌国を離れなければ。そのために一度、大敗してみせないといけない。
けれどそうなったら、ご家族の皆さんが死ぬほど心配する。
だからいったん新拠点に引き上げたあと、もう一度ご実家に戻り、直接無事な顔を見せてきてもらおうと。
第四陣の前に一度、みんなに帰ってもらったのはそのためもあったのだ――すなわちご実家に、特別製の転移の護符を持っていってもらうため。
『魔王軍』エンブレムを持つ者と、その者が触れている相手しか運ぶことができないが、オマケとして立体映像でのやり取りも双方向でできるという渾身の作。
もちろん丈夫な素材で作っているので、しばらく使い続けられるお得な品だ。
ただ、さすがにこのレベルになるとおれが頑張らなければだったので、自分たちの分はちょっとズルをした――星降園の集会室の床に『おまじないのわっか』として直接設置してしまったのだ。
これで、非番の時にはここに戻れる。
もちろん戦いの本番はこれからなので、もう少しの間心配をかけ続けることになってしまうけれど、できるだけこまめに戻るつもりである。
「夜はここで寝ていいのよ? ご飯だって毎日、食べにもどって来ていいんだから。
四人になったからって、遠慮なんかしないでいいんだからね!」
『母さん』はそんな、優しく太っ腹なことを言ってくれた。
けれど、おれたちは謹んで遠慮した。なぜって。
「ありがと、母さん。
すごくうれしいんだけど、あまり入りびたるとここが危険になるかもだし……」
「いま、ちょっと生活不規則なんだ。
夜中に帰ってきて、年少組起こしちゃうのは避けたいから」
「えーいーよー!」
もちろん年少組たちはかわいくこう言ってくれるけど。
「うれしいけど、夜はちゃんっと寝ないと、おっきくなれないぞ?」
「そのかわり、休みの日にはまた遊ぼうぜ! 遊園地は行ったしさ、またどっかいーとこ考えて!」
そこは、イツカたちがお兄ちゃん力を発揮してくれた。
「うーん……しょーがないなー」
「イツカお兄ちゃんのせいちょうにめんじて、ここはなっとくしてあげよう?」
「そうだね~!」
「あたしたち、こころはおとなだもんねっ!」
その言いよう、けなげなはずなんだけどたまんなくかわいくて、おれたちは笑いながら『ぎゅー』してしまったのである。
ここから一週間。おれたちは心と体を休めつつ、『新生魔王軍』旗揚げの準備をするのだ。
拠点を整え、新規加入希望者を迎え、記念公演も行う予定だ。
さいわいなのは、室内と管理用ネットワークは今までのものをまるっと使えること。
ライムにエンブレムを渡せたおかげで、彼女が管理する『ゼロブラ館』に出入りができるようになったのも大きい。
今まではライカの体を借りての実験ぐらいしかできなかったが、これからは直接ポータルをつなげて転移、その施設を使える。
在学中の仲間たちとも、ここなら安全に会える。
『ゼロブラ館自由研究会』、ようやくの再スタートである。
戦いの本番は、これから。
それでも、楽しみなこともたくさん。
夢は大きく、ふくらんでいくのだった。
『かえってソナタちゃんぎゅー』達成です^^
次回、フォローに走るアスカ視点の予定です。
どうぞ、お楽しみに!!




