Bonus Track_81-1 ラグランジュ・ポイント~リュウジ・タカシロの場合~(1)
急用で遅れました! 申し訳ありません!!
まずは投稿まで……!!
『まずは、父と母に。わたくしたちを送り出してくれた、故郷の皆様に。
そして、月萌でわたくしたちをむかえてくれた、優しい方々に申し上げます。
ご心配をおかけして、申し訳ございません。わたくしたちは、生きております。
こうして、無事で。体に傷もありません。
わたくしはもちろん、タクマもエルマーも、こうして元気です』
巨大液晶画面の向こう、青緑の髪も美しい皇女は、白のブラウスと濃緑のひざ下スカートという、シンプルながら気品ある装いで微笑み、丁重に頭を下げた。
彼女の両脇では、これまた白シャツに黒のズボンの少年二人が同じようにした。
娘と同じ年の女性と、甥と同じ年の少年たち。数度にわたり言葉を交わしたこともある相手の変わらぬ姿に――もちろん、こんなことを言う資格はないのだろうが――安堵を覚えざるを得なかったのは確かだ。
だが皇女はやはりというべきか、小一時間前に実行された『作戦』、彼らを抹殺しかけたそれについて、厳しく糾弾してきた。
月萌軍の公式発表によれば、『魔王城』地下から爆破を仕掛けたのは、所属不明の一団。つまり軍とは無関係のテロリストだ。
しかし『魔王軍』はかれらをも救命・保護しており、その口から『これは月萌の高官から指示された極秘作戦であり、自分たちはその指示に基づき動いていた』と聞き出している、というのだ。
『真実はこれよりあきらかとされる。そう言われることでしょう。
それでも今すでに、確かなことがあります。
この地上には、こうした非道の策を弄する者たちがいるということ。
かれらはいずれまた、これを行うことでしょう。
祖国に平和をもたらした英雄たちに。それを永らえんとしたためにただふたり、『世界の敵』とされてしまった罪なき子らに。
彼らは我らが友。そして我らの命の恩人です。
その彼らにこうした攻撃がなされることは、絶対に絶対に許すことができません。
わたしたちがするべきことは、この命のご恩を返すため、いずれ来る卑怯な凶行をここで防ぎとめることです。
ゆえにわたしたちは、ここにとどまります。
これよりは、『魔王の味方』としてともにあり、同じ志の同胞を受け入れるよすがとなりましょう』
そうして今後は、『魔王軍』の一員となると宣言した。
地下突入隊の全員、誰一人欠けることなく背後に立たせ、死んだはずの『魔王たち』と握手を交わす光景に、無礼講に突入しかけた戦勝会は凍り付いた。
やっときた。
私は酒杯を手に立ち上がった。
「しかし、この戦いは我らの勝利だ。
邪魔者は城を失った。この国より去った。
今はこのすがすがしい戦果を祝おう。大いに飲み、食い、勝利をうたおうではないか」
歓声に包まれた会場。いつまでも居座るのは野暮だ。
ゆっくりと楽しんでくれと言い残し、私は会場を出た。
さあ、行かねばならない。もう、引き伸ばすことはできない。
次回、カナタ視点。
決意通り、ソナタちゃんのもとに戻ります。
どうぞ、お楽しみに!!




