Bonus Track_80-9 細工は流々、もしくは、地下からの呟き ~『黒チェシャ』の場合~
こういう叙述トリック的なのは好きなのですが、その後『これってアニメでどう表現するんだ?』なんて気になったりもします。(注:書籍化もまだですorz)
細工は流々、仕上げは上々。
これなら、仕損じることはあるまい。
俺たちは携帯用端末の画面を注視しつつ、『魔王城』の地下に身を潜めていた。
『魔王』と『勇者』の会見の様子は、複数の優秀なハッカーたちの手により世界中に流れていた。
もしここに狼藉者が踏み込めば、その姿は即座に、その正体はいずれ、明らかにされるというわけだ。
だがしかし、それは抑止力とはならない。
『使い捨て』の命と体をもつものには。
どことも知れぬ工房で作られた体を、プログラムが動かす。
そんなやつらには、そんな対策ききゃしない。
『魔王』と『勇者』の交渉は、絶対に決裂するはず。
その瞬間、歩くことのできる爆弾がうごきだす。
真犯人は、どっかのテロリストが暴走しましたね、でほっかむりしてオシマイ。
ターゲットは『世界の敵』だ。世界の管理者である女神も下手人を暴くことはない。
すなわち、セカイに許された完全犯罪、というワケだ。
淡々と進む両者の会談はしかし、いつまでたっても決裂する様子がない。
お茶とお菓子をおかわりし、ほのぼののんびり進んでいる。
ついには、『それではこれからもお互いに、切磋琢磨しあいましょう』なんぞと落ち着きかけたところで、指令が飛んだ。
よし、来た。
数秒後、画面に映し出されたのは地獄もかくやの大爆発。
テラフレアボムの改良型が数十発、いっときに炸裂したのだった。
基礎を完全に破壊された『魔王城』は崩落を始めた。
ミツル&ソラの『Wウィングス』も城内に撤収済み。神獣たちも姿を消していた。
フィールドに二人だけ残された魔王たちは、崩落する城を振り返ると、慌てたように駆け込んでいった。
城内からの脱出がかなったのは、『縮地』を使用できる『青嵐公』と、彼の近くにいた突入隊メンバー――ケイジとユキテルのみだった。
……と、これで、作戦完了だ。
俺たちが仕掛けた『網』のなかには、爆発しそこねたアンドロイドたち。
そして隣には、いまだに胸バクバク状態の『勇者一行』と『魔王の仲間』たち。
やがて、我らが主――二組の魔王たちも戻ってきた。
命拾いしたアンドロイドたちに盗聴器・発信機の類が残されていないことを再確認すると、俺たちはみんな揃って新たな城へと『跳ぶ』。
この一時間後、世界はもう一度震撼するのだ。
『勇者と聖女』を仲間に加えた、新生『魔王軍』の旗揚げ宣言がなされたことで。
バトルになり……ませんでした。
次回、こたえあわせと甘く切ない回想。
どうぞ、おたのしみに!!




