表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_80 『魔王軍』消滅? 激闘の第四陣!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

946/1358

Bonus Track_80-8 超えてはならない壁! ゴーちゃん、限界突破する?! ~マリオさんの場合~

 わかってる。ウチらは、勝っちゃいけないのだ。


 巨虎フォームのスゥちゃんと、ソラっちの水の巨鳥。

 さらにみつるんまで加わったら、ゴーちゃん一人じゃ勝ち目はない。

 つまりこれは、退くべき戦いなのだ――いつものように。



 このセカイの花形と、土の下の住人。

 αの軍人と、基本Ωの『モンつか(モンスター使い)』。

 社会的立場は対極の両者だが、そのおしごとはよく似ている。

 ティアブラシステムを利用して、アバターに意識を載せて、戦う。


 違うのは、求められる強さ。

 軍人たちは、青天井。

 対して『モンつか』には、ハッキリとした天井がある。

 アバターはもちろん、お仕着せのモンスター。レベルアップや成長は基本、しない。

 アバターとのユニゾンレベルにもキャップが設けられており、どれだけなじんだとしても、イコール自分の体のように、とはならない。


 だから、ゴーレムを操作して、こんなことはできないはずなのだ。

 まるで人間のように両手をぶんぶんふりまわし、ぐるぐるパンチをしようとする。なんてことは。



 わかってる。ウチらは、勝っちゃいけない。

 勝つべきは、『魔王軍』なのだ。


 感情をわきに置き、冷静に考えればわかる。おかしいのだ。

 イツにゃんもカナぴょんも、なんにも悪いことはしてない。


 ゴーちゃんもつねづね言っていた。

 おかしいと。かわいそうと。

 イツにゃんは恋敵で、いまは『敵』なのに、それでも。


 やさしい、やさしすぎるゴーちゃん。

 ほんとうに、不器用で、あったかで。

 争うくらいなら自分が譲ってしまうような、バトルの相手が無事だったことにひそかにほっとしてるような、そんなゴーちゃん。



 ――けれどいまはなにかが違った。



「まけられない……俺はまだ負けられない!! 負けられないんだ!!

 みんな、がんばってる!! 俺も、俺もやるんだ!! やらなきゃなんだ!!」


 叫びながら、ぶんぶん『ゴーちゃん』の両手を振り回す。

 画面の向こう、あーちゃんハヤトきゅんまで驚いてゴーちゃんをみてる。


『お、おい?!』

『まず距離とろう! 離れるよ!! フォルドさんたちも高度上げて!!』


 ターラ姐さんと『オコネコ!』とともに、避難するように距離をとる。

 気圧されてるのは、スゥちゃんたちものようだ。

 ソラっちがみつるんをかばいつつ言う。


『ミツル、離れて! 危ないから!!

 これ。『ホワミグ』で何とかできそうか?』

『いや。

 これは、このひとの意志に基づくものだ。

 3Sでも、『大神意』でもない』

『了解。つまり正面から行くしかないってことか!』


 スゥちゃんも賛成を示しつつ確認をとった。


『賛成一票!

 ねえシオちゃんヴァラちゃん、何が起きてるかわかるっ?』

『ここは私が。

 アバター『ゴーちゃん』に設けられたユニゾンキャップが、無効化されているようです。

 現在の彼は我々神獣と同程度のポテンシャルを発揮しうる状態。原因は、不明です』


 戦場に流れた知的セクシーボイスは驚くべきことを告げていた。

 ササキさんがインターホンを手に取った。


「そんな、……

 社長、どうしましょう。……はい、かしこまりました。

 技術チームのほうではもうストップを試みているそうです。

 スケさん、マリオさん。わたしたちも呼びかけて、ゴーちゃんさんを止めましょう。

 ユニゾンレベルが上がればアバターの活力が増す代わり、精神力と生命力の消耗も大きくなります。

 万一、限界を超えて消耗しきってしまえば、……」


 ログインルームが、恐ろしいばかりの沈黙に包まれた。

 その静けさをぶち破ったのは、『ゴーちゃん』が振り下ろしたこぶしによる轟音。

 アダマンタイトの鉄槌が、フィールドにもうひとつクレーターを作っていた。


「……ゴーちゃんさん!!」

「だめだよ、ストップ!!」

「あかんて、落ち着いて!!」


 ログイン中の人間に危害を加えたとなれば、軽くて無期懲役。よって、手は触れられない。

 ウチらは三人で必死に声をかけた。

 けれど、画面の中の『ゴーちゃん』は暴れ続け、ゴーちゃんはつぶやき続ける。


「やれる、俺はもっと、やれる……やらなくちゃ……

 ドラオさんはかっこいい。

 スケさんはすごいことやった。

 ササキさんは全力くれた。

 マリオさんはすっごく、すごかった。

 俺も、俺ももっと、……もっと……つよく、つよくっ!!」


 けれど、こぶしの一発ごとに。一言をつぶやくごとに。

 急速に、ゴーちゃんの顔色が悪くなっていく。


「……わかった」


 もう、やるしかない。

 立ち上がった。ログインチェアのヘッドセット部分に手をかけた。


「ちょっ! だめですよ?!」

「ええんや!

 ゴーちゃんがどうかなるくらいなら、無期でもなんでも食らったるっ!!」


 迷ったとこを見せればササキさんに、へたすればスケさんにも累が及ぶ。あえて乱暴に、二人を振りほどき、ヘッドセットを引っ剥がす!


 それでも、ゴーちゃんは止まらなかった。

 ぶつぶつとつぶやきながら、『ゴーちゃん』を操り続けてる。

 まるで、魂が画面の向こうに行ってしまっているかのように。


「そん、な、……」


 だれかの泣きそうな声が聞こえた。

 だめだ。諦めたらだめだ。また、繰り返しになってしまう。


 だから、ゴーちゃんをぎゅうっと抱きしめた。


「繰り返させるかああ!!

 発動! スキル! 『慰撫パシフィケイション』ッ!!

 ゴーちゃんにできるならウチにもできるんや!!

 でてこいスキルッ!! ゴーちゃんを落ち着かせろっ!!

 ウチの気合!! すきなだけくれてやるわぁっ!!!」


 常識で考えたらそんなことできるわけもない。

 いかに前世はモンスターだった可能性があるといったって、今はただの人間。

 いくらティアブラネット敷設域にいるといったって、装備もアバターもない状態で、スキルが使えるわけもない。

 けれど、できると思ったのだ。できろと思ったのだ。


 はたして、体の中から何かが抜けてった。

 ゴーちゃんの体がふわんと光ったと思うと、画面の向こうが静かになった。


「マリオさん……?」


 腕の中から、どこか眠たげな、やわらかい声がきこえたのを最後に、意識は沈んでいった。


やっとこのセカイの軍人ズがどう闘ってるか(の一端)が、まとめて具体的に語られたような気がします。

基本、ティアブラシステム利用して、アバター介してバトってます。生身で戦うようなのは少数です。

それについてはまた、いずれ。


次回、『魔王城』内部の仕事人たちががんばります。

決着まで、あとすこし。

この章でなんとかしたい(願望)

どうぞ、お楽しみに!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ