Bonus Track_80-7 うさぎ王子のスパイシー! 居合勝負は制しても ~白のイツカの場合~
えー、カナタさん、あとで世界のヤンキーさんに謝りましょうね?
「うえっはやっ?!」
俺たちが始めようとした、まさにその時だった。
勝負がはじまり、そして終わった。
トウヤさんが大きな横なぎで、二人を一気にぶった斬ろうとする。
対してイズミはうさ変化しながら下を駆け抜け、ニノは上に大きく跳ぶ。
ふわりと着地し、銃撃をかけるニノ。トウヤさんは銃弾を避け斬りかかる。
が、ヒットの直前うさイズミが腕にバンッ。ぶちかましをかけ、斬りつけを止めた。
そこでニノが銃を突きつけ、チェックメイト。
一秒かかってない。つまり、少なく見積もっても十倍速。
「デタラメだろもうあれ……」
「いやそれ見えてるお前もたいがいだかんなっ?!」
つぶやいたらタクマが目むいてツッコミいれてきた。
「えっ、タクマ見えてねかった?」
「いや感じはしたけど『見え』までは」
「僕は……見えた、かも」
「オウフ」
エルマーが言うと、ガーンというカオになったタクマの頭上にBP5のポップアップがポン。
カナタは確実に『超聴覚』でとらえてる。つまり『気配だけ』というのはタクマだけだったということだ。
「いや、ドンマイ?」
「タクマは気配だけでもあれと闘えるでしょ? おれにはそれは無理。
だからタクマはちゃんとすごいよ」
「カナタ~!! 心の友よ~~!!」
カナタのフォローに、どっかで聞いたことのあるような感動の仕方をしてるタクマ。
ほんとにタクマは面白い。ずーっと一緒にバカやってたくなるやつだ。
だけど、いまはそろそろ。
「じゃ、表出ようぜ」
「だな。ここで闘ったらフツーにぜんぶブッこわれっし」
俺たちは屋上を飛び降り、基地の前庭に。
カナタとエルマーもあとにつづく。
「イツカ、それだとヤンキーだからね?」
「やんきー? おさるさんみたいなの?」
「うん、そうだよっ。ヤンキーはちょっと元気なおさるさんだよ!」
純真なエルマーがピュアな目で問いかけると、カナタは理性が壊れたようだ。
つかこの会話、どっかで聞いた気が。そうだ、昔ミライが同じこと言って、カナタも同じように返したんだった。
その時俺はなんも言えなかったが、タクマはこらーとつっこんだ。
「カナぴょんっ! エルマーに優しいウソを教えちゃいけませんっ!!」
「えっえっ、うそなの? でも優しいうそなら、信じとく!」
「エルマー!! もううちのこにならないっ?!」
「おおおおい!!」
エルマーがかわいくニッコリ笑う姿に、カナタが本格的にブッ壊れた。
どうするか。カナタはいつもまじめな分、壊れるとデカい。
救いを求めて二人を見ると、エルマーが自分から軌道修正してくれた。
「えっとね、僕に勝ったらね?」
「がんばろうイツカ!!」
「えーとあー、ハイ……」
カナタがおめめきらきら。どうしてこうなったんだっけ。
遠い目にならざるを得ない俺だった。
ともあれ、勝負だ。
この二人は、強い。
俺たちが第四覚醒に手をかけてたって、全然安心できるレベルじゃない。むしろヘタを打てば普通に負ける。
それでも俺たちはこの戦いに勝ち、二人を仲間にしないといけない。
あっちの俺たちは、エルメスたちを。
そうすれば、構図は俺たちVS世界となる。そうしてやっと、ソリステラスと月萌での戦争を再開させずに済むようになる。
この二人もその腹積もりのはずが、手抜きの戦いでは世界が納得しない。
ガチでやって、勝たなきゃなのだ。
さっきは、カナタががんばった。今度は、俺がやる番だ。
ちょっと考えて俺は、居合抜き勝負を提案。するとタクマはノリノリで食いついてきた。
「そうだな……居合勝負、するか?」
「するするっ!!
オレ第三陣の居合二連発みてからずーっとやりたかったんだよなー!
さりげにノゾミちゃんセンセにマークされてたからこれなかったけど!!」
「それじゃ、強化いいかな?」
「はじめよう! がんばるからね!」
カナタはすでに、だいぶポイントを使っていた。
それでも、惜しみなく強化錬成陣を展開。頭上に現れた銀色の月の光とともに、俺にチカラを注いでくれる。
頭上に銀の月を浮かべるのは、エルマーもだ。
月の明かりに巨大な龍の影が伸びれば、大地が応じるように陣を浮かび上がらせる。
エルマーの身に秘めた、地神龍のチカラは強大。くわえて、タクマも地属性。
タクマの闘気は目の前でみるみる膨れ上がっていき、奮闘を続ける『ゴーちゃん』の大きさにも届くほどだ。
けれど、俺たちだってともに月との親和性をもつ同士。
カナタの編んだ月光の陣は、注ぎ込んだ力以上のパワーを生み出して、俺を120%以上に変えていく!
第三陣の時と同じ、いや、それ以上の力が満ちてくる。
確信が沸き上がる。そうだ、これなら負けない。
そのとき俺の目にははっきりと、勝利のビジョンが見えていた。
奇をてらうことは、しなくていい。ただ、まっすぐ、素直に。
タクマの踏み込みに呼応して、地が鳴動した。
大丈夫。俺はただ、まっすぐに踏み込み、まっすぐに抜きつけた。
さすがにノーダメとはいかない。大地から伝わる衝撃、ブレスオブプレアデスとイツカブレードの衝突時の衝撃は、どっちも俺のHPをがっつりと持っていく。
足元がドンッと崩れ、クレーターになった。
ぶっとんでった余波が、基地の防御結界を一枚ぶちわった音がした。
それでも、俺は耐え切った。
なんとか倒れず踏ん張れた――イツカブレードを杖代わりにだけど。
「は、ハハハ……やっぱすげーよ、イツカ……
あー。鍛えなおさなきゃなー……」
もっともタクマも地面にバタンとはなってなかった。地面から生えるやわらかな土の腕に支えられている。
もちろん、これはエルマーだ。
それをしたエルマー本人も、急いでクレーターの斜面を滑り降りてかけよってくる。やっぱり優しい。うらやましい。
「タクマー!! だいじょぶー?!」
「おう、HPフタケタだけど生きてるー!!」
「イツカ!」
対してわが相棒はというとまっさきにポーションぶん投げてきた。
いや、それは実際間違った対応じゃないんだけれど。
「なーカナタ。俺もちょっとだけ、うさみみロール……」
「バカ言ってないで! 二人を移送したらすぐ防衛戻るよ!!」
間違っちゃないんだけど。
「キビシイ……」
「あー。ドンマイ……」
「ドンマイだよ?」
優しい二人に励まされながら、俺は『0-GX』発動。四人で基地の一室へと転移したのだった。
チナツ「で、おさるさんの何が悪いのかな^^」
謝るのはワタクシでございましたm(__)mモウシワケゴザイマセヌ……
我らみな、猿様の末裔なりけり。
次回、ゴーちゃんがんばる!
どうぞ、お楽しみに!!




