80-3 正しい基地の入り方? 精鋭部隊、魔王城突入!
マインでクラフトな世界では壁は壊して作るものです(キリッ
たまにやりすぎて洞窟が崩落します←
画面の向こう、ソーヤが投げた、あの袋。
その意義は、みっつある。
ひとつめ。高天原に対し、『おれたちをなめるなよ』とクギをさす。
あれの中身は、かれらがよこした腕輪型防具。その実態は、大爆発するトラップアイテムだ。
そいつを投げ返すことで『わかっていたからな』と示す。
ふたつめ。どうせ爆発するべきものならば、先を切り開くため使う。
あの腕輪は本来なら、爆発なんかしない代物だった。プログラムコードにミスがあったためだ。
だがそのままでは最悪、ひとりの女の子――『銀子ちゃん』が悲しいことになりかねなかった。
そのため、おれたちでミスのないコードを作り、設計者の発するコマンドで『ちゃんと』爆発するようにしたのだ。
これならだれも設計ミスを問われないから、『銀子ちゃん』も帰りたければ帰れる。そして、おれたちはタダで戦況を有利にできる。
そして、みっつめ。さらなる行動の合図とする。
ソーヤが掛け声をかけた一秒後、屋上の白イツカがスキル『ブラックムーン』を発動。
全てのスキルを無効化するそのチカラで、スキル製の無敵艦『シエル・フローラ・アーク』を消しさった。
すでにルリ・ツヤマ女史は対『ブラックムーン』用スキル『シュートザムーン』を発動していた。よって本来ならば、白リボンのイツカは甚大なダメージを食らってばったり倒れ、『アーク』は無事であるはずだった。
だが、おれたちにはニノがいた。
ソーヤが掛け声をかけた瞬間、ニノは覚醒技『フリーフォックスフライング』を発動。白のイツカを『シュートザムーン』の効果から守ったのである。
ふしぎの箱舟が消え、宙に投げ出される突入隊。
もちろんこんなものでどうにかなるようなメンツはいないし、『フォルド』もさっと救助に動いてくれたが、白リボンのおれは数名に『フェザーフォール』を投げた。
マルヤムさんとオフィリアさん。ルリ・ツヤマ女史。そして、エルメスさん――を、さっと抱っこしたハルキくん。
もっとも、マルヤムさんとツヤマ女史は鳥装備。予想通りひらりと回避されてしまったのだけれど、これはレディへの礼儀であるからいいのである。
ノゾミお兄さんとトウヤさんは、宙を蹴って平然とこちらへ。復活した防御結界をたたき割り、白リボンのおれたちの立つ屋上へ着地。
タクマとエルマー、ケイジとユキテルもあとに続き、ハルオミはハルキくんといっしょにふわふわ着地した。
精鋭突入部隊、魔王城到達。これでよし。これで、月萌後続部隊には撤退してもらうことができる。
正直言って、こちらもだいぶ消耗している。まだゴーちゃんやアスカたちとのバトルは続いているし、これ以上突っ込んでこられるのはやっかいだった。
画面の向こうのおれもちょっぴりほっとしたようすで、宙に向かって声をかけた。
相手はカルテット。突入のつもりはないようで、滞空してこちらを見ている。
コウとシロウは疲れた様子で『フォルド』の背中から。タマキとダイトは、タマキの『フロート・バブル・リング』で浮遊している状態で。
『すごいね、『シエル・フローラ・アーク』。これだけの人数運べるなんて。
しかもダメージいかないから普通には落とせないし。
ホントに、こっち来ない? いまからでも』
『悪い、コウとシロウは気になる子ができたみたいでさ』
『そうである以上、俺たちも一緒に残ります。……すみませんね、お力になれず』
『いいって、ダメモトだったから。こっちこそ無理言ってごめん!』
ダイトとタマキが、すまなげに謝ってくれた。
もともとダメモトだ。おれもごめんと返す。
と、あっちのおれのとなりで白リボンのイツカも両手をふりふり。
『はいはいはいっ! ほかのみんなもこっち来ねえ? マジに!!』
『悪いな。俺たちも行けない』
『二人やみんなのことは大好きだけどさ。それでもおれはまだ、あの人にご恩を返せてないんだ。……ほんとゴメン』
ケイジとユキテルもおことわり。この『俺たち』は後ろに控えたマルヤムさんとオフィリアさんものようで、ふたりもすまなげながらうなずいている。
『俺が行くとしたら、ミソラとミライ、そして学園の皆を連れて行く時だ。
――今はだから、お前たちを連れていく』
『ちょーちょーせんせー!! こっちのイツカナと戦うのはオレたちだからっ!!
ほらセンセはエルメスたちと先いった!!』
ノゾミお兄さんが腰の『青嵐』に手をかけ、イツカが応じて構えようとしたとき、あわててタクマがストップをかけた。
そう、ノゾミお兄さんはこのおれたちのもとまで『勇者と聖女』をつれてくる係である。
みんなイツカ好きすぎだろ。胸のお餅がちょびっと焼けるけど、それは次の瞬間吹っ飛んだ。トウヤさんがこういったからだ。
『我慢しろノゾミ。俺だってカナタと闘ってみたいんだ。
――イズミ。そしてニノ。お前たちの相手は俺だ。
ほかのやつらでは止められん。ノゾミは皇女たちを連れて先に行け』
屋上に出るドアに向け呼びかければ、ソーヤと入れ替わるようにして、イズミとニノが姿を現す。
鍵をかける音がかちりと響くが、それがむなしい抵抗であることは明らかだ。
ノゾミお兄さん、改め『青嵐公』は抜刀すると、さくさくとドアのわきの壁を切り開いたからだ。
『ちょっ……えええ……』
ツヤマさんをはじめとした月萌軍人数人が、驚く声を上げる。
『基地というのはこうして入るものだと師匠から教わったのだが、間違っているか?』
『いや……はぁ……』
『たぶん、マニュアルには記載されてないと思いますよ』
『ま、いんじゃね?』
向こうのおれたちがフォローする。おれは確実におかしいと思う。ドアの存在意義がない。
それでもとにかく事態は進む。
ツヤマさんとプリーストとクラフター、マルヤムさんとオフィリアさんが突入ベースキャンプメンバーとして『フォルド』の背に。ノゾミお兄さんたちは基地のなかへ。
『ゴーちゃん』と神獣たちが争う様子を背に、二人と二人、ふたりとひとりが向かい合った。
ここ数日うれしいことが続いてもうこれこそがエイプリルフールかそれとも夢かと……!!
ありがとうございます! ありがとうこざいます!!
可及的速やかにお礼させていただきます!!
次回、つづき。ドラオさん視点の予定です。
どうぞ、お楽しみに!!




