80-2 強襲!『シエル・フローラ・アーク』!!
2022.10.13
まさかのミス! サブタイ修正いたしました!
『スケさん! 撤退や!
あ゛――! やめたってイツにゃん! そのつぶらな瞳やめたってえええ!!
スケさん平常心! 深呼吸や! ヒッヒッフー、ヒッヒッフー』
『マリオン』が『スケさん』を呼んだ。
イツカが『えーいっちゃうのー』な顔をすると、『スケさん』の頭蓋骨がぐらり。
『マリオン』の必死の呼びかけはなんとなく何かが間違っているような気がしないでもなかったが、そこは突っ込まないでおく。
ともあれなんとか理性を保った『スケさん』がさっと刀礼――もちろん最後に剣を右真横にする、指揮官としてのものだ――を決めると、彼のアバターがすうっと透き通って消えていく。
このときすでにスケルトン、アンデッドウルフたちは壊滅していたのだが、それでも矜持を込めて放たれた礼に、イツカも同じように返す。
一秒後イツカが刀礼を解くと同時に、あの重い、重い足音が響き始めた。『ゴーちゃん』だ。前進し始めたのだ。
これまで基地上空を旋回し、にらみを利かせていた水の巨鳥が突っ込んでいく。
追うように滑空するミツルが神聖強化をかければ、その輝きと速度がぐんと増す。
『これで、全部!
あとは……がんばって……!!』
一方、ここまで強化を連発していた『ダークソーサレス』は、息を切らせて消えてゆく。
置き土産として渾身の暗黒強化をふたつ放って。
一発は、まっすぐ前にとんで、アダマンタイトの背中に。
もう一発は、ぐっと上空に伸び、竜鱗の腹部に。
「……来たな」
イツカの声が、ぐっと低くなった。
地に落ちた影、空わたる巨体は、ふたつ。
ひとつは、深い緑の竜。
いまひとつは、桃花色の箱舟。
すなわち、『グレート・フォレスト・ドラゴン』となった『フォルド』。
そして、完成した『シエル・フローラ・アーク』の雄姿だった。
その中にあるものは一切のダメージを受けなくなる、究極の防御結界『セント・フローラ・アーク』。
それを空飛ぶ箱舟とした独自進化形が『シエル・フローラ・アーク』だ。
なにものをもってしても、決して撃墜することのできない、空飛ぶ不沈艦。
旗艦とするにはもってこいのしろものだ。
しずしずと空を滑る箱舟の先触れを務めるのは、はばたく竜と地を行くゴーレム。
砦より大きなゴーレムが、軍師にして最強の一角であるうさぎと狼をのせ、ずしりずしりと歩を進める。
その後方には、転がされてしまった戦車にかわり、あらたな戦車が出現。陸戦隊の一部も交代し、虎視眈々と機をうかがう。
前方・上空には森色の竜。地を揺るがして咆哮すれば、萌え出る幾多の若木が、基地の守備結界を食らおうとする――もちろん、そうはさせない。
「『卯王の聖地』!」
基地の屋上に現れるのは、白リボンのおれ。
堂々と発動するのは、なんとか形にした第四覚醒 (仮)。
基地の建物と、その立つ土に、森の聖主の意志がしみこんでいく。フォルドの若木にもじわじわと支配力をそそぎ、その伸びる先をかえてゆく。
「ごめんみんな! 頼むねっ!!」
さあ、もう行かなければ。おれはイツカにつれられ、跳んだ。
『魔王城』で最も堅固な場所。通称『黒猫魔王の地下遊興場』――またの名を、地下実戦用バトルフィールドへ。
もしおれたちが残り戦えば、『フォルド』や『ゴーちゃん』、陸戦隊たちに確実に勝つことができるだろう。
しかし、そこまでだ。
消耗してしまった、そして回復の暇もないおれたちは、次の戦いで――無傷で箱舟からおりてくる『勇者たち』に――負ける。
そしてそうなれば、待っているのはバッドエンド。
だからいまは仲間たちに、相打ち覚悟であとを頼まねばならないのだ。
用意されたミルクポーションを飲んだら、座って体をほぐす。
だいじょうぶ、きっとやれる。
ふたりで唱えて、深呼吸して。
おれとイツカは心を静め、そのときを待つのだった。
・『ブラック・キャッテリー』が厨二病すぎるのは『キャティオ』だとかわゆすぎたからです。
・「やんのかステップ」がじわりマイブームです。
・オコジョちゃんとシマエナガちゃんの画像を見たらかわいすぎてもう。
・企画応募作品が浮かばないよ……なんにもでてこない……!!
次回、アスカ視点で続きの予定!
どうぞ、お楽しみに!!




