Bonus Track_80-1-2 シオンの献身(ただし極太)!~ミズキの場合~(2)
【速報】スケさん生存【剣ひとすじパネェ】
「……なにあれ」
「なんだアレ!!」
「シオちゃん案件、ですかね……」
「シオちゃん案件ですよね!」
何が起きたのか。『魔王城』の防御フィールド表面に『メギドフレア』の錬成陣が出現・発動したのだ。
シオンの『パステル・パレット』、もしくはその応用だろう。
「でもどうやってよ? あんな宇宙戦艦の主砲みたいのぶっぱなすったらBPTPとも、数十万は下らないぜ?」
そう、問題はこれを打ち放つのに必要なポイントを、いったいどこから捻出したかである。
「わーかったあああ!
アレっスよ、これ! モモカちゃんと『トーラス』っス!『BPトランスファー』っスっ!!」
「どーゆーコトよ?」
ぽんと立ち上がったミキヤが、ハイテンションで解説するには。
「いやほら、ティアブラシステムでのバトルって、TP切れはまだしもBP切れってほぼないじゃないっスか。与えたダメージはBPになるから、無駄うちとかしない限り。
なのに、月萌軍相手にあんだけダメージ稼ぎまくってた3人のBPがすっからかんになるとしたら。
それは別のところに引っ張られていったからとしか考えようがないっス。
つまり……」
「Bトラで、基地のタンク行って、メギフレのエネルギーになったってこと……?」
「イエっス!
もちろんTPも必要なんで、そこは一部『ブラッドサッカー』の回路にまわして変換してるはずっス!
もち処理回路はそれなり耐久度の高い素材でつくんなきゃっスけど!」
「おおおお!」
「なるほどー!」
至れり尽くせりの解説に、そこここから上がる納得の声。
なるほど、シオンならそうしたことをできて不思議じゃない。
『トランスファー』も『ブラッドサッカー』も、基本的にはプレイヤーが使用するスキルだが、それを発動させる錬成陣を描き出して護符とし、好きなタイミングで使うことは可能だ。
さらにこの護符を、耐久性の高い素材を用いて作れば、処理設備として継続的に使うことも可能だ。
数十万単位のポイントを扱う回路なんて言ったら、もうりっぱに工業用レベル以上だけれど、それを扱えるのがシオンなのだ。
あの小さな体で大きく羽ばたいていく様子に、誇らしさが沸き上がった。
かなうなら、俺の隣の小さな巨人も、すこしでもはやく羽ばたかせてあげたい。
そのためにも今は、仲間たちの雄姿をしっかりと目に焼き付けておこう。
俺は画面のむこうに意識を戻した。
圧倒的な光が消えるとまず見えたのは、無傷の『スケさん』の姿。そして彼を頂点とした三角形を描いて続く、スケルトンの群れだった。
先ほどとはまた別の戸惑いが俺たちを満たす。
「え……えっ?」
「これっていったい……」
「なにがおきたの??」
そのほかのスケルトンたち、大型以下のアンデッドウルフもほとんどが、あとかたもなく消滅していた。
にもかかわらず、『スケさん』とその後方だけは無傷である理由。
それは、彼の剣の切っ先が指すさきを見たときに分かった。
フィールドの地面。刃先から続くのは、底知れぬ地裂。
「まさかだけど……」
「『メギドフレア』を受け流した??」
「おいうそだろ? ノゾミちゃん先生とかしかできねえレベルだろこんなん……」
そう、『スケさん』はその剣技で、『メギドフレア』を目の前の大地に流し落としたのだ。
真っ向から受け止めたら当然アウトだが、普通に受け流せば後ろの仲間たちに当たるという状況でのギリギリのチョイス。
全員は守れずとも、できる限りを守る。
それをとっさに思いつき、実行する実力は、平均的なSランクを超えている。
さすがは、イツカのライバルというべきか。
一瞬、静止した先鋒戦は、イツカの声で動き出す。
『すっげええええ!
すげーよスケさん!! っしゃ、俺も――!!』
スケさんに向けて、赤リボンのイツカが笑顔で走る。
二人はすぐさま剣を合わせ始めた。
事前に決めていたのだろう。不死者の軍団は、二つに割れてそのわきを駆け抜ける。
迎え撃つは、右翼のリンカさんとサクラさん。左翼のアオバとミツルとミクさんだ。
右翼、聖なるバトルヒロインコンビはまさに無双だ。
リンカさんが『シャスタの水撃』でスケルトンたちを流し去れば、サクラさんは、身の丈を超えるウルフを『わんぱんち』。右翼の陣容をみるみる溶かす。
左翼のアイドルトリオも負けずに善戦する。
アオバとミクさんが、身軽な動きでウルフたちをかき回して離脱。
そこへミツルが空から『ルーレアの雷霆』をたたきつけ、アンデッドウルフの群れを一網打尽。
その間に先に進んだスケルトンたちには、中央に出てきた『もふもふカップル』が食いついた。
コトハさんの投げた聖水が強化をはぎ取り、すかさずフユキが銃と剣で仕留めるというコンビネーションにより、基地防壁への到達を許さない。
だが、この有利を喜んでもいられない。
消えゆくアンデッド軍団の後ろにはもう、月萌軍戦車部隊がじわじわと忍び寄っている。
戦車の数は、第三陣と同じく五台。
だが同じ作戦では来ないことは、容易に推測された。
スケさんも順調にインフレしてます!
次回、戦車隊に隠された仕掛けとは。
どうぞ、お楽しみに!!




