79-5 天使談義と、気になることと!
ふたりのおれたちでひととおり、いろいろな素材を引っ張り出して試してみた。
感触は、悪くない。
なにか――おそらく幻想植物の根――を、アストラルレベルで対象に張り、それを通じて操作するのが、おれの『第四覚醒』だろうと思われた。
なぜなら、それを行うたびに、おれはかすかな燐光に包まれる。
けれど、なんとなくまだスッキリはしない。覚醒を告げるシステムメッセージも、きこえてこない。
そのうちに疲れてしまったおれたちは、一休みするために食堂へと足を向けた。
「あらためて考えると、これも妙なかんじがするよね」
その短い道中、おれとおれは話し合った。
「おれたちが『第四覚醒』を果たしたら『女神』と。『第五覚醒』を果たしたら、『大女神』と対等になる。
それはイコール倒せるじゃないけれど、手が届くようになる。
そうしたら、彼女らの計画を覆してしまうかもしれない。
それを防ぐには、『第四覚醒』以上は、させちゃいけない。そのみちは絶対に、閉ざしておかなきゃならないはずだよね」
「そうだよね。
彼女たちはゲームでいえば運営なんだもの。ボスキャラじゃない。
おれたちが同じステージに立てたら、おかしいんだ」
現に一月前の謁見で、『大女神』は言っていた。
もしもミッションに損害を与えるようならば、我は管理者としてお前たちをこの『ゲーム』より排除せねばならぬので、心しておくよう、と。
なのに、おれたちは彼女に逆らえる。
心さえ塗り替えるスキル『大神意』は、おれたち『スターシード』には効果を及ぼさない。
『スターシード』はもともとこの世界のものでなく、『上位世界』から遣わされた者であるから、ということのようだが……それもまた中途半端な、妙な感じがした。
「もしかして。『上位世界』を救うためなら、自分さえ犠牲にしようとしているのか……」
「それとも、実はそれ以上の存在がいたりして」
顔を見合わせると、身震いがしてきた。
ぞっとしない。あの日、自分を抑えたセレネさんにすらかなう気がしなかったのに。
すくなくとも、真正面から戦いたいとは思えない。
そのとき、ハイテンションの声が耳に飛びこんできた。
まっすぐ前方数メートル。大食堂の入り口から。
レティシアさんと『リガー』――本名はトシカズ・クロノさんだが、理性を保つために『リガー』と呼んでほしいといっていた――のものだ。
「ですよね! ですよねっ!
わかります、『ミライツカナタ』は天使です。異論は認めません!!」
「ああ、まったくだな!
わかる、わかるぞ。マジ天使マジ尊いだっ!!」
そーっとなかを覗いてみると、はたして二人が飲み物片手にめっちゃ盛り上がっていた。
たしかにミライはマジ天使だし、イツカもある意味天使だ。けれどおれまで天使といわれると正直なところむずがゆい。
よしここは、名誉ある撤退だ。と決めた瞬間、それをぶっ壊すやつめがあらわれた。
「あーカナター」
「実験終わったのかー?」
後ろからのーてんきな声をかけてくる洗いたて黒にゃんこ、もとい風呂上りほかほかイツカのせいで、おれたちはばっちりターゲッティングされ。
「え、ええとっ!『チェシャ』から連絡来てますかっ?!」
とっさに口から出た言葉。レティシアさんと『リガー』さんは顔を曇らせた。
「……きてるには来てるけど、あまりいい塩梅じゃないらしい」
『リガー』さんはため息とともに携帯用端末を見せてくれた。
表示されたメールによれば、一番アテにしていた『白刃』『レッドセイレーン』が乗り気でないらしい。
『ひきつづき、ほかの連中とも交渉してみる』『おそくとも当日には、そちらに戻る』と結ばれていた。
先週の今日、深夜から日付が変わるころにかけて、ここは『月萌立国党』の関係者と思しき者たちからの襲撃をうけた。
特に損害もなく勝利できたものの、首謀者らは逃亡。捕獲した者たちも、半数ほどはアバター破棄で逃げ去った。
それゆえ再びの来襲があるのではと警戒を強めていたが、とくに何事もなく。
無事に卒シビがおわり、週末がやってきたのだった。
甘いものが食べたい……
次回、ステージを見守るライム、揺れる気持ち。
どうぞ、お楽しみに!




