Bonus Track_79-4 悩み溶かしてテイクフォー! 『みずおと』予告編レッスン中!~ハルキの場合~
「『だから』、……えっと、なんだっけ……」
「カットー!!
きーくん、だいじょうぶ? 少し休む?」
「え、……あっ、ハイ……すみません……」
これで三回目だ。
俺は、またしてもセリフをトチってしまった。
シオンさんの新作『みずおと』こと、『湖の乙女と七つの魔神』。
本来なら来週、おれたちはその第二話を卒シビとして演じるはずだった。
けれど三週間前、すべてが変わった。
おれたちのこころは、『グランドマザー』により強引に塗り替えられた。
スキル『大神意』によって、イツカさんとカナタさんを敵と思わされるようになった。
そして俺たちは、これを好機とした大人たちにより、戦いに駆り出されることになってしまった。
俺と兄貴はだから、通常より一週間早く卒業することになり。
『みずおと』第二話は、予告編のみを先行公開することになって。
ただいま俺たちはその練習をしているのだけれど、俺の調子はよくなかった。
みんなにごめんなさいと頭を下げた俺は、飲み物買ってきますと理由をつけてベンダーへと走った。
対外的には、これは単なる大規模イベント、ということにされていた。
けれど、何かを感づいている者はいるのだろう。
それでも、入学者数はがくっと落ち込んだ――ただでさえ少ないのに。
一方で四ツ星・五ツ星たちは、『対魔王戦』で次々去って。
教室もグラウンドも学食も、気づけば寂しくなっていた。
かくいう俺も、金曜のエキシビで卒業。第四陣でここを去る。
このさきここは大丈夫かなんて、生意気な心配を抱いたりもしていた。
うさねこのアキトさん、セナさん。騎士団の長も兼ねるミズキさん、ミーたん。
みんなたよれる人たちだとわかっていても。
『にじいろ』『マーセナリーガーデン』をまとめて面倒見てるチカさん(チナツさんの双子の妹さんだ)ヤヨイさんも、俺よりずっとしっかりしてると、わかってても。
三週間前よりずっと人も減った購買。ベンダーで並ぶこともなく、俺は『おつかいメモ』の缶とボトルを仕入れていった。
「えっと……トラオさんとソーヤさんはブルーマウンテンのホット。サリイさんとユキさんはディンブラのアイス。クレハさんとチナツさんはみかんティーソーダのコールド。兄貴とナナさんは抹茶ミルクセーキのぬるめ、シオンさんはつぶなし粒コーンスープ……いやこんなんあるんだ……」
コーヒー紅茶の銘柄が学校のベンダーとしちゃ詳細すぎなのは百歩譲っていい。みかんティーソーダとか抹茶ミルクセーキって何だコレ。『ぬるめ』があるのはまあいいとして、つぶなし粒コーンスープっていったい。
みょうなところで気分転換してしまった俺を、さらなる驚きが見舞った。
「あー! きーくんいたー! きーくんにもおすそわけー! えーい!」
ミーたんのかわいらしい声が後ろから迫ってきたと思ったら、いきなりキラキラして、気持ちよくなった。
いうなれば、適温の温泉にどっぼんとつかったみたいに。
「み、みーたんこれ?」
「えへへ! おれたちね、覚醒できたの!
とってもすてきだから、おすそわけ!!」
「安心して、先生に許可はもらってあるから」
ニッコニコのミーたんの横、癒しのスマイルのミズキさんもいい笑顔。
それを見た瞬間、ぽろっと口からこぼれてた。
「……だいじょぶだ」
きっと、ここは、大丈夫だと。
イツカさんとカナタさん。そして、ふたりの仲間として『魔王城』に集ったメンバーが、高天原を陥落してくれる日まで。
きっとみんなは、無事でいられると。
「よかった。ハルキくんの心配、溶けてなくなったみたいだね」
「はい、ミズキさん!
ミーたんも、ありがとうございました!!」
優しい、頼れる先輩たちに頭を下げて、俺は走り出した。
そして臨んだテイクフォー。俺は完璧な演技をキメることができたのだった。
ようやくPCの前に座れました。
ここのとこせわしなすぎて、日本語がうまく出てきません……orz
そろそろサイレントニャーをおぼえたいニャー(げんじつとうひ)
無愛想が重なり済みませぬ……orz
次回、第四陣を見据えてエルカさんと話すイツカナの予定です。
どうぞ、お楽しみに!




