Bonus Track_79-2 たとえちいさな星であっても~『ドラオさん』の場合~
うまく投稿できていなかったようですのでとりいそぎ!
ご心配おかけしましたm(__)m
『学園モンスターダンサーズ』が参戦したあの日。
ログアウトするなり、マリオさんは盛大に萌えを叫んだ。
「はあああ! ササキさんのダークソーサレス、よかったわぁ〜。
なんやこう、初々しくって! でもってめっちゃかわゆくて!!
うらやましいわースケさん。うちもあんな可愛らしぃおねえさまに支援してもらいたいわ〜」
「そ、そ、そうですか? わたし、変じゃありませんでした?」
「変なとこなんかひとつもあらしまへん!
今後もぜひぜひダンサーズのマスコットキャラクターとして登場したって! カワイイ担当でっ!!」
盛り上がる二人に挟まれて、スケさんはうっとりダウンなう。
その向こうで、ゴーちゃんはこぶしをにぎってふるふるしてる。
「ゴーちゃんもよーやったわ~。まさか『魔王城』に大穴みっつとか! おにいちゃんはほこらしいで~! おーよしよしよし」
陽気なマリオさんはゴーちゃんを抱えておーよしよし。
ほほえましいその姿。いつもみたく、軽口といっしょにおめでとうを伝えようと思ったけど、とっさに言葉は出なかった。
『なにいってん、進化して飛んで出た時点でくっそかっこええわ! ドラゴンなんて古今東西男子の夢やで? タグに入れとくと再生数跳ね上がるって有名なんやで~?』
マリオさんはお世辞じゃなくそう言ってくれた。やさしいヘッドロックをかけて。
そのときは気分も持ち直したけど、部屋に戻ってシャワーを浴びたら、落ち込みがぶりかえしてきてしまった。
確かに、フォレストドラゴンに進化した『フォルド』は純粋にかっこよかった。
でも、それだけだった。
むしろそのかっこいい『フォルド』を活かしてやれなかったことに、悔いが残る。
パワーアップしたブレスも植物操作も、てんで使えなかった。
あそこでいずみんの『時止め』が指示されなければ。俺の技での対処ができてたなら。アオにゃんのミラクルジャンプがハマらなければ。大胆にも背中に乗られてなかったら……
考えはぐるぐるめぐる。しかたないとわかっている。あれはいつものショーじゃない。見せ場をあえてつくる、なんてことはできないのだ――すくなくともこっち側には。
次回は総力戦。ソリステラスの最高峰三人も参戦する。それに比べたら俺はただのにぎやかし。出るスキはない。
ぶっちゃけ言うなら、俺は与えられた手札を尽くしてプレイヤーたちと戦うのが仕事。あたえられた範囲の役目を果たせば――それ以上を求めなくてもいい存在だ。
この胸に渦巻くきもちは、『大神意』によるものだ。つまり、普通の俺のきもちじゃない。わかっている、わかってるけれど。
屋上に出れば、晴れた夜空に星が瞬いていた。
たくさん、たくさんの、ちいさな星たちを見つめていたら、あの人の声が、耳によみがえった。
『……くん。
星たちはね、おやすみはしてないの。
夜だけじゃなく、昼間だって。
ずうっと一生けんめいに、かがやき続けているのよ』
『たとえ、太陽の光に隠されてしまっても。
それでも、星たちはかがやくの。
『ボクはここにいるんだぞ~! ボクは、いきてるんだぞ~!』って。
そうせずには、いられないから。
だから、ね?
日が沈むとすぐに、ああやってキラキラがあふれてくるの』
『わたしたち、ふつうのひとは、スターシードやαプレイヤーたちみたいな、華やかな活躍はできないかもしれない。
それでも、毎日をがんばって生き続けるの。
きっとだから、星たちを好きになるのね。
とおい夜空で、一緒にがんばってくれている……
ぼくの、わたしの、おともだちみたいに、思えるから』
そのとき俺は、なんて返しただろう。
ササキさんにどこか似た、たいせつなたいせつな、あのひとに。
懐かしくてせつなくて、目の前がくもった。
けっきょく俺は、αプレイヤーにはなれなかった。
このさきも多分、なることはないだろう。
スターシードでもない、何かの才に恵まれたわけでもない。
平凡な、ただちょっと道を踏み外しただけの、男だ。
けれど、それでも、気持ちは口からぽろっとこぼれた。
「……挑みたい」
「そういうと思ってました」
「ファッ?!」
そのとき後ろから聞こえてきた声。思わず変な声が出た。
振り返ればそこに、みんながいた。
スケさん、ゴーちゃん、マリオさん。
そして、ササキさん。
みんな優しく微笑んで、俺を見ている。
「今日のバトル、ドラオさん絶対不完全燃焼だったって。
だから、もう一度チャンスをもらえないかって、みんなで話してました。
そしたら、社長が通りかかって。
どうします、ドラオさん?
ドラオさんさえいいなら、社として第四陣への志願を出します」
「やりますっ!」
俺は一歩を踏み出していた。
「あの。それでもし。もしもかっこよく決められたら。
ササキさん。その。
つきあっ……
その、ちがっ、打ち上げ! 俺たちの! 付き合っ、あわわ、いらっしゃってくださいっ!!」
「はい、よろこんで」
ササキさんは何も気づかない様子で、にっこり快諾してくれた。
けれどササキさんが立ち去ったのち、俺はがくっとくずおれてしまった。
「ああああ俺のバカー! なに余計な逃げうってんだよおおお!!」
「ドンマイ」
「次があるよ」
「応援してるで?」
「うう……アザッス……」
そんな俺の肩をダンサーズ三人は、優しくたたいてくれたのであった。
次回、ミライ覚醒……するかもの予定です!
どうぞ、お楽しみに!!




