78-2 カレッジで卒シビを! ソラとおれたち、未来への約束!
戦い済んで、日が傾いて。
画面の中のコトハさんは、みんなを優しく許してやった。
魔神に操られ、悪事を働いてしまった者たちが、そろって頭を下げてわびるのも。
負けて捕まり、どうかと命乞いをするレイジも。
もっとも、フユキはおかんむりだ。
『人間たちは百歩譲って仕方ない。だが、レイジは許さない。
ことこと煮込んで、食ってやる』と鬼おこである。
それでもコトハさんが『かわりに、わたしの手作りスープじゃだめかしら? とってもおいしく作るわよ?』といえば、フユキは折れた。
これに感激したレイジは、命の御恩は返さにゃならねえ、今後はお嬢にお仕えするぜと言い出した。
『そんなわけで、燃え落ちた湖のほこらは、みんなの手でこじんまりとした瀟洒な館に建て直されて……
二つの魔神と、その女主人である少女が暮らすようになりました。
いつしかみんなは、コトハをこう呼ぶようになりました。
『心優しき、湖の乙女』と』
美しい湖とそのほとりに立つ館をバックに、グレーの子猫と赤い小鳥を両肩にのっけて立つ、清楚な白いワンピースのコトハさん。
その姿が、絵画風にレタッチされて、大画面を彩った。
ミズキのナレーションとゆったりとしたBGMが、しっとり優しく物語をしめて、おれたちはみんなで拍手をしたのだった。
いつしか、ランチを口に運ぶのも忘れていた。
暖かいものならすっかり冷めていただろう――これ以上冷めようもない、サンドイッチと冷製スープ、アラカルトに水菓子類といったメニューは正解オブ正解だ。
『やー思ったより俺らの打ち合い長くてなー。ふーたんとルーがうまくやってくれて助かったわー』
苦労話を披露するのは、ドール姿のレイジ。こうしてみるとかわいさしかない。
この公演を機にすっかり仲良くなったルーファスも言う。
「つかレイジとフユキの間にオレとかぜってー食われるって思ったけど、意外とそんなんなくってビックリしたわ。『ツーバイ』様様だな!」
そう、加勢の村男村娘役を追加、それにルーファスとアウレアさんを抜擢したのはソーヤだ。
今回卒シビに使うということで、もともとの第一話に第二話の一部――そう、虚飾の魔神まわりだ――を入れ込んだそうだが、シオンの脚本がしっかりしていたおかげで、まったく無理なくできたらしい。
フユキも親しみやすさを増した様子で笑って乗っかる。ナツキはその頭の上に子猫モードで乗っかって参戦だ。
「むしろ食ってただろ、何だよあの突発脱衣!」
「逆にあれくらいしか考えつかなかったんだってー!」
『つか俺がコトハさんおしおき宣言した時のフユキ目が本気だった』
「お前も目が本気だっただろ」
『そりゃーまあ……いっいっいいいえ演技です演技ですってばあああ!! お、お、おれにはそのう、そうっノゾミちゃんせんせいという方があああ!!』
『信じよう、フユキ。レイジはそういううそつくこじゃないもん、ね?』
『あうう……ハイ……』
一方で女子たちも華やかに盛り上がる。
「あーもうコトハちゃんめっちゃヒロインー! もーもーかわいー!」
「サクラちゃんもとってもお姫さまよ! 元気で、かわいくて!」
サクラさんとコトハさんがきゃいきゃいと褒めあうとなりで、リンカさんとアウレアさんも笑顔を交わす。
「リンカちゃんのメイド服、何度見てもいいわ~。ソーやんに絶対って推しまくってよかった~」
「アウレアちゃんもシスター姿すごくよかったわ。初々しくて新鮮で、わたしも初心を思い出したわ」
こんどとっかえっこしたいねー、と言い合うふたりにニノがしゅたっと売り込みをかけに行く。
「そのときは! そのときはぜひご用命をっ!」
「ニノ君、わたしたちもー!」
「またああいうのやるならそのときは!」
そのニノを、ほかの女子たちも取り囲む。
飛び入りでモブ令嬢に加わったユッカさんとレナさん、シラタマと『嫉妬』と『色欲』。
ヒールとして華やかな悪役っぷりを満喫したバニー(現在うさ娘ドールモードでかわいさ全開)。
今度やるなら出たいと言い合っていた、レティシアさんとマユリさん。
騎士隊員として華やかにキメたミクさんとモモカさんも彼氏そっちのけで参戦。ええっという顔のアオバと遠い目のミツルの肩を、ソラがぽんぽんしてやっている。
「ほんと、いい子たちね」
「ええ、ほんとうに」
その様子をアイラさんとトトリさんは優しく見つめてうなずきあう。
ニノは今回モブ令嬢のひとりひとりに至るまで、まったく手抜きせずにドレスをカスタムした。おかげでいまや一躍モテ男だ。
ちなみにさっきの移動に『フリーフォックスフライング』使った。この技、どうやら物理的なすり抜け効果もあるようだ。見事なまでの覚醒の無駄遣いである。
イズミは大きくため息をつく。
「特訓のやり方を失敗した……あいつ、おれの『時止め』もその気になればぬけられるんだ……
早急に新たな覚醒を成し遂げないと……」
そのときとんでもない声が聞こえてきて、食堂は騒然となった。
『必要ならばもうすこし露出を上げてあげてもよろしくってよ!!』
「バニーちゃん大胆ー! でもあたしももうちょっとなら」
「はいもうぜひともよろこんもがっ!」
嬉々として食いつこうとしたニノを、イズミとアオバとミツルとルシード、こぎつねドール姿の『強欲』が全速で制圧したのであった。
「……やっぱいいなあ、こういうの。
みんながいて、こんなふうにわいわいして、……
卒シビか。カレッジいったら、出れるかな……」
ほほえまし気に、けれど少し寂し気につぶやくソラの肩を、こんどはイツカとおれたちで抱いた。
「いこうぜ、カレッジ。いっしょにさ!」
「この戦いを終わらせたら。みんなで勉強して、みんなで行こう!」
「ま、あんまべんきょはしたくないけどさ!」
最後の最後でしょーもないことをいってくれるイツカに、みんなが笑った。
「おーい、あったかいスープもってきたぞー。ほしいひとー」
そこへ笑顔のソーヤがあったかなスープを持って現れ、おれたちはそろってはーいと立ち上がったのだった。
たのしいランチ上映会、これにて終了です!
次回! 孫娘をちょー愛してるあの人が、『魔王城』にやってくる?!
どうか、お楽しみに!!




