Bonus Track_78-1-6 『湖の乙女と七つの魔神』第一話『湖の乙女と暴食の魔神』第四幕『燃えるほこらとみっつの魔神』(3)
『たぁぁっ!』
『まだまだ!』
サクラさんが先陣切ってバニーに突撃。その背中にリンカさんの強化がまばゆい光となって降り注ぐ。そのままふたりは丁々発止と打ち合い始めた。
かたや扇子、かたやこぶしのせめぎあい。サクラさんが押していくが、バニーも余裕の様子であおる。
『こっちですみなさん!! お急ぎください!!』
一方で、もふもふ騎士隊員たちが令嬢たちを避難誘導。
しかし、コトハさんは動かない。
ここは危ないからとミクさん、モモカさんに優しく促されても首を左右する。
『わたし、あの子を置いてはいけません。
姿を変えても、どれだけ強くても、あの子はわたしの猫ちゃんなんです!』
『でも……』
困るふたりに申し出たのは、ルーファスとアウレアさん。
『はあ、もうしゃーない。
コトハはこうなったらゼッタイ聞かねーからな!
ここは俺らが一肌脱ぐか!』
『騎士さんたち、コトハはあたしたちが守ります!
村のみんなをどうか、お願いします!』
『わかりました、できるだけ急いで戻りますので!!』
ミクさんとモモカさんも駆け足で去ると、二人は悪ガキの顔を見合わせ笑う。
『さーってっと!』
『ひっさびさに、あばれますかぁ!』
アウレアさんがシスターの頭巾をぽーいと脱ぎ捨てると、輝く光があふれだす。
すると、彼女の姿がいつもの金色モフリキッドアーマーに。
ルーファスが着ていたTシャツに手をかけると、黄色い歓声が沸き起こる。
すると……
『いやちょっとまちなさいアンタ。』
もちろんアウレアさんの肩ポンストップがかかった。
ちなみに舞台上でもさり気に女子全員そっち見てる。
コトハさんも指の間から、バニーも扇子の上から目だけのぞかせて、恥ずかしそうにちらちらと。
男子はほぼほぼ全員ぽかんとした様子だが、なぜかシオンの目をソーヤがふさいでる。
なにやってんですかみなさん。いや元凶はルーファスだけど。
ルーファス、『えっほん!』と咳ばらいをすると仕切り直し。すらりと抜刀すると全身輝き、アウレアさんとおそろいの金色モフリキッドアーマーにチェンジ。
『加勢すんぜ猫ちゃーん!』と景気よく叫びつつ、フユキとレイジのほうへ。
『おっほん! おなじくー!』つづいてアウレアさんもせきばらい。相棒の背に強化のポーションを投げまくりはじめた。
『おれたちもいくぞ!』
イズミがバニーに向けて一瞬で距離を詰め、袖口の仕込みブレードで打ち掛かる。
きれいに決まるかと思ったその時、新たな扇子がブレードをうけとめた。
『なっ……?!』
そうして嫣然と微笑むのは、いつのまにか二人に増えていたバニーだった。
『だぁーいじょうぶっ! こーゆーときの~ソーヤさん見・参ってえええ!』
ソーヤがハイテンションで抜刀。打ち掛かればバニーはさらに増えた。
『しゃーねえ俺も、ってええええ?!』
つづくはニノ。これまたバニーは増える。
『よーしそれじゃあオレが!』
シオンがよいしょと巨大スイカ型ボムをどっからか取り出すと『やめて――!!!!』全員が声をあわせた。
『どうしよう……この世界、携帯用端末ないからチアキやヴァラさんよべないし!』
『考えましょう、何か方法を!
騎士さんたちが戻ってくるまででも、なんとかもたせなくっちゃ……そうだわ!』
シオンはメタ発言でカオスに拍車をかけるが、コトハさんがきれいに軌道修正。アウレアさんに呼びかける。
『アウレアちゃん! 聖水を! 聖水をバニティに投げてみてー!』
『アイサー!』
アウレアさん、またしても見事なボトルさばきを魅せる。
はじける聖水の瓶たちは、つぎつぎバニティを消していく。
ダブルショット、トリプルショット。イツカがおれをキラキラした目で見た。
「すげー! すっげええ!! なーカナタもアレできる?!」
「ダブルはできるけどトリプルは……いや、がんばれば、できなくないけどさ」
「すっげええええ!!」
がんばればっていうか、だいぶがんばればだけど。
でもこのピュアな子猫のような目の前で『ほぼ無理』なんていえなかった。くそう。
ともあれ画面の中ではアウレアさんの大活躍で、すべてのバニーが消え去った。
『はいこれでオ・シ・マ・イ!』
ぱんぱんと手をはたくアウレアさんだが、すぐにぎくりとした顔になる。
どこからか、不気味に響いてきたのだ。くすくすと、聞き覚えのある笑い声が。
『な、なに、これ……』
『ふふ、ふふふ……あーっはっはっ!
こざかしい、こざかしくって笑っちゃうわ!
その程度で偉大な七つの魔神が、どうにかなるとでも思って?
さあ、そろそろいいでしょう。
覚悟なさい、小娘たちっ!』
地面から湧き出すように現れたのは、ひとり、ふたり、数え切れぬほどのバニーたち。
そのうちひとりがアウレアさんに、もうひとりがコトハさんにむけて滑るように歩を進める。
『アウレア!!』
『コトハァァァ!!』
ふたりのパートナーは、レイジの猛攻でその場を動けない。
ほかの六人も、うじゃうじゃとあたりをうめつくすバニーがじゃまで助けに向かえない。
狙われた少女たちがじりっとあとずさった、その時だ。
『『ホワイト・ミグレーション!!』』
凛と響いた声とともに、真っ白な光の鳥が列をなして飛来。横手からバニーの群れに突入した。
輝く鳥に触れたバニーは次々消滅。魔神の群れに、ひとすじの道が穿たれる。
鳥たちを導くのは、白い装束と銀の騎士章もまぶしい、翼持つ少年――ミツルだ。
『いまだ、アオバ!』
ミツルの呼びかけに、元気いっぱいの答えが返ってくる。
『サンキュ、ミツル!
『アムール・ミラクル・ジャンプ』!!』
そしてその主は、ひと飛びに跳躍。
アウレアさんとコトハさんを安全な高台へとかっさらい、身軽に飛び降りてきたのだった。
犯人は『あくまで一肌脱いだだけであり、悪気は』と供述しており(ry
次回、二人の魔神との決着、からのエンディング! 予定!!
どうぞ、お楽しみに!!




