Bonus Track_77-9 ミッション:戦車を操るものを探せ!~シオンの場合~
まずは中央から、『スケさん』と『ダークソーサレス』が。
左翼からは『トーラス』が、右翼からは『ナナユキ!』が。
定められた相手を目指し前進。数秒で近接戦闘を開始した。
それらに続くのは、銀と緑の竜を押し立てた『ドラゴンライダーズ』。
さらにすこし遅れて、戦車とスケルトン軍団と月萌工兵さんたちで編成された『月萌陸戦隊』がのっそりと動き出す。
開幕直後の撃ち合いで足元の安全を確認した『月萌陸戦隊』は、自転車ほどのスピードで前進してくる。
対するは、『もっふるず!』フユキとコトハさん、『オーレ・オーレ!』ルーファスとアウレアさん。そして『ナンゴクボンバーズ!』クレハとチナツと五人の召喚獣たちによる『魔王軍陸戦隊』。
一の太刀をふるったのは、すでに覚醒フォームのフユキとルーファス。露払いのスケルトン軍団を十数体一気に吹っ飛ばす!
『月萌陸戦隊』はというと五台の戦車のうち、左右の四台を粛々と展開。おもに基地を狙っての砲撃をはじめた。
激闘始まる両軍陸戦隊を横目に『ドラゴンライダーズ』はゆうゆう飛翔。お目当ての『アイドル軍団』を射程圏内にとらえた。
正確には、左翼中央よりに展開しているソラ、『クランレパード』アオバとミツル、『おこんがー!』ミクさんとモモカさんを、だ。
オレはこの管制室にいて、データ分析を。ソーやんはオレのボディーガードをやっている。
ほんとならアオバたちもあそこにはいなかったのだけれど、うん、そこはいまはいいか。
「まゆりーん! やっと出てこれたね!」
「よかったわね! 後でみんなでいっしょに遊びいこう!」
「そちらが勝ったらね!」
モモカさんとミクさんはマユリさんに明るくよびかけて、手を振っている。
対するマユリさんはまだ空軍のエンブレムを付けているのでそうもいかないみたいだけれど、その顔は明るい。
「ルー、いくわよっ!」
「おう!」
そしてマユリさんとルシードは、声を掛け合い、第一覚醒を発動した。
「『比翼・翔竜』!」
二人の姿が光とともに溶け合い、銀の飛竜はさらに力強く美しい姿に変わる。
銀とナイトブルー、二対の翼をもち、流麗な体に走るラインも二色が絡み合い、溶け合うみごとな天の竜に。
「すごい……でも、俺たちも負けないからっ!
『ドラゴンイーター・プラス』!」
ソラもまけずに覚醒技。輝く水のタマゴで身を包んだけれど、今回は両手にミツルとモモカさんの手を握っている。
戦場にさなかにすきとおる水の巨鳥が生まれ出れば、三人はその体内をエレベーターのように急上昇。
頭のてっぺん、冠羽の輪の中に到達すると同時にソラが手を離し、ミツルとモモカさんはスッポ抜けるように空へ飛び出した!
『月萌陸戦隊』、その主力である五台の戦車のうち、動いているのは四台。
一番奥に控える一台は指揮車なのか、動かない。
とりあえずは動いている四台を止めようと、神獣たちが奮闘していた。
巨大な獣の姿に変身し、あるいはつかみかかろうと、あるいは弾き飛ばそうとするが、戦車はちょこまか逃げ回っては砲撃をかけてくる。
あきらかに、おかしかった。なぜって、さっき――展開し静止した瞬間を狙い、アウレアさんたちがその鼻先に、特製の状態異常ボムを山盛り投げ込んでいるのだ。
さらにそのあとペイント弾に音響弾、チャフ弾まで追加して、もう戦車自体が見た目からして大変なことになっているのだから。
ついに陸戦隊リーダーのフユキから通信が入った。
『シオン。あのタンク、奥に控えた一台が有人で、操作者はそこにいるかと考えたが確証がほしい。分析頼めるか』
「わかった、しばらく観察させて!」
戦車のうごきはどれも滑らか。リモートコントロールしているとしたら相当の手練れだ――月萌側の一番奥、本陣後衛でスケルトン軍団を操っている花魁ふうの装束の『マリオン』みたいに。
この激闘では『超聴覚』は使えない。やっぱり、さがしものがとくいなヴァラさんをこっちに残してもらうんだったなとちょっと後悔しながら、おれは全体にも目を配りつつの観察と分析を始めた。
水の巨鳥から飛び出したミツルは、モモカさんをしっかりと抱えていた。
背中の大きな大きな翼で力強く羽ばたいて、さらなる高みに引き上げていく。
そうはさせまいと吐かれる銀のブレス、襲い掛かる狙撃を見事な身ごなしでかわし、うえへ、ひたすらうえへ。
モモカさんの覚醒必殺技はアカネさんの『にゃんにゃん☆すたんぴーど』に通じるものがある。すなわち、一度解き放たれたら手が付けられない、もふもふの暴力。阻止する側も全力だ。
はやくも『イーブンズ』に『時止め』の発動命令が下った。
「くっそマジかっ! はいはいやりますよ! イズミ!」
「信じよう。……『時止め』!」
「『アトラパ』ッ!!」
イズミがおれたち『魔王軍』の時をとめる一瞬前、ソーやんがオレたちを究極もふもふバリアで包んでくれた。
だから、見えた。
ミツルを狙う砲撃が。
もっというと、五台の戦車の砲塔が、全部まったく同じタイミングで動いていたのが。
その五台に均等に目をやっている人たちがだれなのかも。
――そしてもちろん、ミラクルジャンプで間一髪相棒を押し上げた、アオバの勇姿も。
だからオレは一秒後、時が動き出すと同時にフユキたち『陸戦隊』にこう伝えた。
「陸戦隊に報告!
タンクは全部リモコン。コントローラーは本陣クラフター隊右から二番目。真ん中の人がバックアップと判明したよ!」
『了解!』
力強い声が返ってきたときにはもう、フユキとルーファスは戦車を操るクラフターたちにまっすぐ剣を向け、アオバは次を見据えて宙を蹴っていた。
ようやく集団戦におけるシオンの本領発揮がかなった気がします。
2集団のバトルをおりまぜる編成、少し工夫しました。
脳を酷使したためかいつも以上に(爆)人の名前が出てきません。ヤバス!
次回、つづき。カナタ視点に戻ります。
そろそろけりをつけたいです。予定です。
どうか、お楽しみに!!




