77-5 アイドル、ゴーレム、骨軍団、戦車だってそろえてます! 第三陣開始、五秒前!
月萌側の作戦は、前回の反省を生かしたものになっているようだった。
おれたちを近づかせない。そうしながら、守るべきは守る。
つまり、後衛は『セント・フローラ・アーク』で守りつつ、『絶対爆破防御』の効果を受けた斬りこみ隊(主に骨)をどんどん攻めこませる。
おれたちの前に展開するのは、そんな意図が明らかな一群だった。
なんと、今回は陸軍戦車×5までずらり並んでお目見えだ。
『キャタピラ履いた装甲車』なんて優しいチョイスじゃない――砲塔あたりのガッチリぶりからして間違いない。
しかしその勇姿さえ、あの威容の前にはかすんで見えた。
前線にひときわ高くそびえ立つのはあの『ラピッド・フォートレス・アダマン・ゴーレム』。愛称を『ゴーちゃん』という、高天原うまれのネームド・モンスターである。
気は優しくて力持ち、無自覚におちゃめなそぶりも見せるところが可愛いと評判の『ゴーちゃん』だが、今日はなんだか気迫が違う。
それは、ゴーちゃんの足元に立つスケルトンフェンサー『スケさん』も同様だ。
彼の目は――というか目玉がないので、正確には眼窩がだけど――ひたすらまっすぐにイツカを見ている。
こうなればイツカは彼にくぎ付けだ。少なくとも、勝負がつくまでは。
しかも今回、見覚えのないモンスターも後ろに控えている。基本的な見た目はA級モンスター『ダークソーサレス』だが、装具とカラーリングが豪華だ。そして露出の具合がより良心的。こちらもナカノヒトがいるようだ。
つまりここで想定されているのは『剣士同士のおたのしみタイムからの、バディバトル』という黄金のパターン。
『魔王』という究極アイドルの座にあるおれたちが、これをブッチするわけには行かない。心憎い対策である。
レンとチアキの『テラシャイコンボ』にもまた、同じ対策が打たれていた。開口一番、ある少年が拡声器使って吠えたのだ――『よう『爆殺卿』! そっからの眺めはキモチイイか? 今から撃ち落としに行ってやっからカクゴしやがれ! でもってチアキは俺たちでもらうからな!!』と。
こんなことを無理なく言えるのはただ一人。今日は一段と華やかな装備でキメてきたトラオだ。これみよがしにペア装備のサリイさんの腰を抱いている。
うん、演出と分かっていても爆撃したくなる姿だ。
すぐそこでルーファスとアウレアさんがお互いを見て赤くなってぱっと目をそらしあった。こっちはまだ許せる。うらやましいけれど。
なお同じラブラブカップルでも、フユキとコトハさんはつられない。ふたりともに緊張の面持ちで敵陣を見据えている。たぶんこっちが正しい反応である。
もちろんレンは拡声器をぶったくって吠え返す。
『はぁァ? 月萌じゃあとりあえずオレらをディスるのが既定の流れになってやがんのかこのエロ猫野郎!! お前なんか三回ぶっ飛ばしてチアキのベッドの敷物にしてやるからカクゴしとけやゴルア!!』
『うん、絵的に悪くないわね』
『やめろくださいサリイさんっ!!!』
なぜかレンが叫んだとたん、サリイさんはじめ数名のお姉さま方の目がキラーンとなった。皆さんの脳内では一体どんな絵面が展開されているのだろう。まだ16歳のおれたちは知っちゃいけない気がしないでもない。
リンカさんが微笑んで言ってくれた。
「ごめんなさいね、うちの子たちが。後でお仕置きしておくわね?」
『待てリンカ俺は悪くねえええ!!』
なんでわかったのか、トラオが涙目で叫んだ。
投稿しようとすると回線さまが機嫌を損ねる気がします。
猫さまのご機嫌を損ねるよりはいいと自分を納得させてます。
次回、バトル開始!
お楽しみに!!




