Bonus Track_77-8 そうして僕らはもっと、チームになる~『スケさん』の場合~
イツにゃんたち『魔王軍』が、国内の何者かによる夜襲を撃退した。
木曜日は一日、そんなニュースで沸いていた。
だから僕たちは、気が付かなかった。
襲撃者の列に、僕たちも加わることになっているということを。
そのことを、隠されているということを。
週明けの第三陣に『学園モンスターダンサーズ』が招集されている。それを知らされたのは、金曜の定例闘技会が終わった後。
頭を下げるササキさんは、ほんとうに申し訳なさそうだった。
「ごめんなさい。もしあらかじめ知らせておいたら、今日のパフォーマンスに影響が出ると思って……」
いつも笑っているような、優しい目をしたゴーちゃんは、はい、ともだいじょぶです、ともつかない声をあげたかと思うと、ミーティングルームをとびだしていった。
笑いを顔にくっつけたまま。いすやらドアやらにぶつかりながら。
僕たちはもちろん追っかけた。運動が得意じゃないゴーちゃんがあんな風に走っていると、ふつうに危ない。それよりなにより、だいじなチームメイトをほっとけない。
ひやひや走って追いつけたのは、すぐそばにある公園。
一体どういう偶然なのか、そこでルナさんと行き会ったらしいゴーちゃんは、ごめんなさい、ごめんなさいと詫びていた。
「俺。俺、しらなくて。
第三陣、俺たちも、……いくって。
『ダンサーズのゴーちゃん』としてイツにゃんたちと、たたかうって……」
第三陣への参戦。もちろん、ヴァルハラフィールドに顕現した特製アバターを使っての戦闘だ。ぶっちゃけて言えば、イベントバトルを野外フィールドでやるようなもの。
でも、実質はそんなものじゃないと、僕たちにはわかっている。
だって、僕たちの心にはいま、大女神から押し付けられたきもちが渦を巻いているのだ――イツにゃんとカナぴょんはターゲットだ。遠慮も手加減もなしに、二人を狩らなきゃならないと。
イツにゃんは、ルナさんの。カナぴょんは、ルカさんの。
最愛の人と、わかっているのに。
「なのに、俺、……へいきで、ルナさんとおどって、……
ルナさんのきもちも、かんがえられずに。
ごめんなさい。ごめんなさい……!」
きらきら夕日をはじく噴水のそば、しゃがみこんで。
涙声で詫びるゴーちゃんの頭を、ルナさんは優しくなでていた。
「いいの。いいんだよ、ゴーちゃんさん。
わたし、気にしてないよ。
それに、ゴーちゃんさんは知らなかった。なんにもわるくない。
だから、ごめんっておもわないで、いいんだよ」
光のなか、白い翼を背にひろげたルナさん。
やさしい微笑みを浮かべたそのすがたは、まさしく天使だった。
「……これじゃあますます、惚れてしまうなあ」
つぶやくマリオさんの声には、いつもの軽さはなかった。
このまま二人でいさせてあげたい気もしたが、相手は多忙なアイドルだ。
さりげなく声をかけ、ゴーちゃんを回収することにした。
さすがはプリーストというべきか、ゴーちゃんの罪悪感は、すっかり拭われているよう。
けれど今度は、熱でも出したかのようにぼうっとなっている。
「これ、逆に大丈夫っスかね……?」
ドラオさんがこわごわおでこに手を当ててみて『うわっあったかっ』なんて言っている。
ササキさんの判断は正しかった。僕はつくづくそう思った。
ゴーちゃんは不器用で優しくて、とても繊細だ。『ダンサーズ』の招集は水曜には決定事項だったときいたけど、もしそのとき知らされていたら、今日の闘技もダンスも確実にガタガタだったに違いない。
けれど、ゴーちゃんは自分から言った。
「だいじょぶ、……だいじょぶ。
ルナさんだって、だいすきなイツにゃんの敵として歌ってるのに、……がんばってふんばって、役目果たしてるのに。
俺も、できなきゃ。
自分の役目、果たさなきゃ。
じゃなくっちゃ、はずかしい。
男として、ルナさんに、顔向けできないから!」
光る瞳で前を見て。優しいこぶしをぎゅっとにぎって。
そんなゴーちゃんを、マリオさんはぎゅーっとだきしめた。
「おっしゃ~! ええ子や! ええ子やゴーちゃん!!
ほな、こっから気張っていくで!!
月曜までばっちり鍛えて、どちゃくそカッコよく活躍したろ!
ルナはんが、いーや世界のかわいこちゃんたちみーんながゴーちゃんに『結婚して~』言いに来るくらいな!」
「そ、それはちょっとこわいかも」
素直すぎるゴーちゃんのことばが可愛くて、僕たちはみんな笑ってしまった。
『じゃあルナさん以外は僕たちみんなで分担するから』なんて冗談全開の約束までして、もう一度笑うと、ゴーちゃんも、そしてササキさんも、いっぱいの笑顔になってくれた。
「ありがとう、みなさん。
わたし、みなさんにすごくすごく、助けてもらってますね。
わたしもマネージャー役として、全力を尽くしますから!
いっしょにがんばりましょう!!」
笑いすぎたためなのか、目じりにちっちゃな涙を光らせたササキさんは、すごくすごく綺麗にみえて――
一瞬、ぼうっと見とれてしまったのは内緒である。
そうして土曜はしっかり鍛え、日曜日にはしっかり休み。
月曜日。『僕たち』は戦場に立っていた。
見ない見ないといいつつ、スマホで見てしまいました……
出先だったんです、出来心だったんです。
ブックマークありがとうございますっ!(((o(*゜▽゜*)o)))
嘘みたいと喜んでおります! がんばれます!!
次回、第三陣に臨んで。
ようやくたどり着いた←
どうか、お楽しみに!!




