Bonus Track_77-6 車中の悪党、密談す~『黒チェシャ』の場合~
『やはり『魔王城』にライカ分体は見受けられなかった、か』
「あァ。
どころかメイドロボの一体もいやしねえ。
よかったな、かわいい白ウサ王子サマは確定でシロだぜ」
『ふん……。
お前、なんとか上手く奴らの『仲間』になれなかったのか。
ルシードはシロガネが解放し、ほかの社畜どもは早々に高天原から逃げよった。
かといって、よもや学生を人質交換には使えぬ』
「無茶言いやがりなさんな。
まさかあんな主人公ムーブしてくるたァおめえらだって予想外だったろうがよ?」
『チッ、やつらめ。ガキであることを最大限利用しやがって!』
「へーいへい。じゃ俺はコレでいいか?
言われた分の仕事はしたぜ。指定の口座に残金50万TP。明日までにきっちりと、耳をそろえて振り込んでくれよ。では、またのご利用を」
任務遂行後のおもりは仰せつかっていない。丁寧にきっぱりとご挨拶を申し上げて通信を切った。
こいつの正体は俺も知らない。男か女か、若いのか年寄りか。判然としない声。口調も時折変わる。つまり回線の向こう側には、複数人がいるのだろう。
まあ、いい。振り込まれた50万を確認すると即時に現ナマに換え、使っていた携帯用端末は適当にその場に捨てた。
裏の仕事をするとき、端末はワンタイムアカウントごと使い捨てる。もし使い続ければ、そこから足がつくからだ。
かまわない、いくらでもコンビニでもらえるものだ。しかも俺は汚したり壊たりしないのだからちゃんと再利用できる。
閑話休題。ハーやれやれとダッシュボードに足を乗せようとすると、運転席からにらまれた。
「もしやりやがったら出禁にすっぞテメエ」
「へーいへい、すんませんでしたー」
やつのリガースキルは天下一品、失うには辛いお得意先だ。
俺がいいこで足を降ろすと、やつは窓際に頬杖をつくようにして、問いかけてきた。
「で? マジで仲間集め~とかやっちゃうワケ?」
「あーねー。
……やんねェ手はねぇんだよな正直。
二か月ちょっとで決着つけるとかぬかしやがったあの黒猫野郎。
どーせならダメモトでのってみても別段ソンはねえ。
イザって時も近くにいりゃあハナシが早えだろ」
するとやつは、しばしの沈黙ののち問いかけてきた。
「…………近くで過ごして。情が移らねえ保証があんのか」
「移っちまったらそん時だろ」
「待てやオイ」
「逆にテメエはどーなんだよ、ええ?
メロメロにならねえ保証があンのか、あの美女イケメンぞろいのモフモフちゃんズによ?」
「なる可能性があるから考えてんだろうがよ。……っと」
そのとき、懐であらたな携帯用端末がうなる。いつものサイトに新着動画だ。
あらかじめ音量を絞ってからサムネをポチる。と、案の定、大仰なファンファーレが耳を打つ。
大音量のクラシックと星空っぽい画像をバックに、ずらりとしたドレスのようなモンを着た、顔隠れてるけどたぶん女なヤツが両手を広げ、自己陶酔入った調子でしゃべりだす。
『この世界を愛する同志の皆様!
現状『魔王軍』22ユニットのうち、9ユニットが魔王城を離れ、高天原学園におります。
それまでの学びを継続するために。あるいは、明後日に迫った卒業エキシビションにむけ最後の仕上げを行うために。
すなわち今『魔王軍』の戦力はほぼ半減しているといってよいでしょう。
叩くなら、今。
これを逃せば、好機はありますまい!』
俺たちは顔を見合わせる。
そのとき、こつこつ、とリアウィンドウがノックされた。
雪が積もりましたー\( 'ω')/
といってももう半分溶けているので特段しなけりゃならないこともない状態です。
やったーやっとちょっと時間ができたー(^^♪
次回、魔王軍の暗闘! の予定!!
どうぞ、お楽しみに!!




