Bonus Track_77-5 高天原はイケメン学園?! 定例闘技会プログラムが発表されました! ▼ ~トラオの場合~
「あ! 発表きた!!」
それは、あの『にゃーにゃーダンダン』動画が発表されたすこし後のこと。
俺たちの多くが、ラウンジに集まっていた。
金曜の定例闘技会。つまり、姉貴たちの卒シビの日のプログラムが発表される。その瞬間を、どうせなら一緒に。
そんな、すこしばかりセンチメンタルな気持ちから……ではない。
さあくるぞ。3、2、1
「えっ……えええええ――!!」
小声でカウントダウンをしていれば、0よりちょっと前にシオンがすっとんきょうな声をあげた。
「まってまって、えええ、ほんと?!
ほんとにやるの『湖の乙女』っ?! でも……えええ……」
「約束したじゃないか。シオンの卒業の時には、俺たちで上演すると」
『湖の乙女と七つの魔神』。ずっと延び延びになっていた、そしてこの『大神意』騒動で、約束の上演すら絶望的と噂だった、シオンの新作舞台だ。
うろたえまくるシオンの肩をぽんとたたき、フユキが微笑む。くやしいが、こんなときでも変わらず端正なイケメンでやがる。おかげでコトハがすっかり見とれている。
「でも、でもまだ、準備、とちゅうでとまってて……」
「はーいっ。俺たちみんなでこっそりやっときましたー!!」
ソーヤがへいへーいと立ち上がる。そうそう、こういうドヤ顔でいいんだよ。まあこいつの場合それがハマるイケメンモテ野郎なんだが。
「ふはははー! 今回の衣装アクセもみなさんのカッコ可愛さを全開にするデザインとさせていただきましたああ!!
はーやっぱね! ニノさんしごとしてるときがいちばんしあわせ!! これからもよろしくねーシオたん、いっぱいおしごとちょーだいねー!!」
ニノのやつめに至っては至福の表情でナチュラルハイ。今日明日はふつうに寝るという約束でイズミが徹夜を許したためだ。
だってのにしっかり『見れる』顔。
そのとなりでため息をついて眼鏡を直しつつ、うさみみパンチをよこすイズミはクールビューティー。
そしてことの中心であるシオンも、奇跡レベルのちまカワうさぎ男。こいつも毛色は違うが、確実にイケメンのカテゴリーだ。
いや、マジになんなんだここは。イケメンの巣窟なのかここは。
そういえばレンの奴も、あのクソガキっぷりにもかかわらず見た目はそれなりだった。ワタリガラス換装のデカモードにはこっそり姉貴が見とれていたし、俺も一瞬『負けた』と思ってしまったのは内緒だ。
あらためて思う。この学園はおかしい。入試のかくし選考基準として外見があるんじゃねえかというレベルだ。卒業してみたら調べてみるか。いや馬鹿らしいからやんないが。
不毛な思考をぶった切ってくれたのは、聞き覚えのあるふたつの声だった。
「トラオー!」
「エキシビやらないのっ?! なんかあったの?!」
この間のことですっかり親しくなった、『ヴァイスシュバルツ』イツキとザインだ。
そう、このプログラムには、エキシビ出場者として俺の名前はない。なぜなら。
「ああ、俺たち来週だから」
「ええええ?!」
「どどどどういうこと?!」
「いや、そもそも姉貴たちが早いんであって、これがふつーのスケジュール感だから。
コトハとフユキはちょっと昇格早かったから早くて。」
「びっくりしたー……」
説明すると、ふたりしてほっと息をつく。
親しくなって間もない二人。こんな風に気にかけてくれるとは、うれしい限りだ。
「よかったねトラちゃん。お友達できて!」
「ちょっと待てサクラそれだと俺が友達いねーやつみたいだからなっ?!」
「あはははー」
「こら、サクラ?」
あっけらかんと笑うサクラ。姉貴はたしなめてくれたが、結局その場の(俺含む)全員が笑ってしまった。
「でもうれしいよ。
せっかく仲良くなれたけど、俺たち四ツ星講習まだあるし……」
「あっちとこっちで離ればなれになっちゃうなーさみしいなーって思ってたから。
あらためて、よろしくね!」
差し出してくれた手。景気よくパチンと叩きあった。
「おう、早く追っかけて来いよ?
それとサリイはやらねーからなっ!!」
「トラは貸してあげるわ♪」
「おおおい?!」
サリイが笑顔で放った言葉に、またしてもその場は笑いに包まれたのだった。
雪がちょっとふりました。
というかでっかい雪片が舞ってたのでびびりました。
次回、不穏な会話。
『まおうのほりょ』が卒シビに出る、ということは……?
どうぞ、お楽しみに!!




