Bonus Track_77-3 放たれしもの、留め置かれしもの〜ルシードの場合〜
木曜に高天原に戻って以来、俺とマユリは施設内に留め置かれていた。
最初は、検査入院。その後、事情聴取。その後は、経過観察。
まあ、予測はしていた。そもそも高天原に戻れるとは思っていなかったので、週末が潰れたことは諦めもついた。
それでも、一週間も経とうかというのに、任務もなく、満足にトレーニングもできないとなると、流石にどういうことなのかと問いたくもなる。
気持ち的には、俺たちはイツカとカナタの側だ。ただ二人、世界中に付け狙われることになった同窓生に、刃は向けたくない。
それでも、俺たちはいまだ、月萌空軍の所属――そうある事を選んだ人間のはずだ。
というのにここまで疑われねばならないのなら、いっそ戻らなければ良かったのか。
そんなもやつきを上官に訴えたその翌日、俺たちはミーティングルームに呼び出された。
「入れ」
ドアをノックすると聞こえてきたのは、まさかのエクセリオンの声だった。
室内にいたのは、彼だけだった。
ピンクの髪に、白いうさみみ、イチゴ色の瞳の背の高い男――トウヤ・シロガネ。
いつもの白と水色の軍服風じゃない。基調の黒を金が縁取り、青の月のエンブレムを左胸に抱く大きな立折襟のスーツ。中には真っ白なワイシャツ。すなわち、彼に与えられた正式の軍装だ。
いやがうえにも高まる緊張のなか、背後の扉が閉まる。
だが、形式通りの敬礼を交わすと、彼は席と飲み物を勧めてくれた。
そうして、さくりと、言ってきた。
「お前たちが『魔王軍』の捕虜という立場にあることは理解している。
そのうえで聞く。
俺の指示を受け、第三陣に加わるか。
ブランクを埋めるだけの指導はする」
「……選択権は」
と、マユリもずばんと聞いた。
怖いもの知らずすぎる発言に俺も突っ込もうとしたが、トウヤ・シロガネは小さく笑った。
「……ない、といった方がよいならば、そう言うが」
「では、ない、という方向でお願いします」
「よし。
お前たちは今をもって、なにひとつ疑義のさしはさまれざる月萌空軍の一員と認められた。
責任はすべて俺が持つ。次の月曜、第三陣に加わるように。
俺はまだあちらにはいけぬ。だから……
あいつらを、頼む」
嘘がつけないと評判の最高指揮官は、まっすぐなまなざしで俺たちに頭を下げてくれた。
「はい!」
俺たちはもちろん、素直に声をそろえたのだった。
イケメン美女の軍服姿はごほうびじゃな!!!(クソデカ声)
はい、トウヤさんの正式軍装考えるのめっちゃ楽しかったです。
この部分は本来なら昨日セットで出したかったのですが……すみませぬm(__)m
次回、ルシマユからの連絡でほっとしたミズキと、彼を含めたうさねこ首脳陣の一幕の予定です。
どうぞ、お楽しみに!




