77-1 黒チェシャ、かく語りき(1)
『よーうモフモフちゃんたちィ。いっちょオニイサンたちと遊んでかねーかい?
いやあ、選択権はないけどよ!!』
ライブの打ち合わせにレッスンに。星降町でのいろいろを終えて基地へと戻るその途中、それは起こった。
前を走る白の乗用車が減速。一方で後ろの赤の乗用車がスピードを上げてくる。まるで、この車――タカヤさんの操る青のワンボックスカーを挟むように。
なんとなく、デジャブのある構図。はたして拡声器ごしにのそんなデカ声が聞こえてきた。
赤の車の後ろ、どんどん追い上げてくるのは白の軽トラック。
その荷台を覆う幌が風に消えれば、そこには鈍く輝く迫撃砲と、黒ずくめのならず者がいた。
ウルフカットにした真っ黒な髪。前を開けた革ジャンを素肌にまとい、目元に濃い色のサングラス。そんな、黒ずくめの男。
テロリストが撃退された際にはただ一人捕まり、にやにやとふざけた調子で軽口をたたき、アタマの中をのぞかせ消えてゆく『黒チェシャ』。その筋では有名な人物だ。
というか、月萌杯突破記念パーティーの直前におれたちはこいつに襲撃されている。
やつは逮捕されたが、取り調べの席で『消滅』している。つまり、いまだ贖われぬ罪を負ったものである。さらにはこっちに向けて砲撃をかけてきた。
結論、遠慮は無用。
タカヤさんがひみつのスイッチをぽちり。同時に車の天井がするすると開いてたたまれ、オープンカーに変形。
これならぐっと戦いやすい。防御力は下がるが、そこは護符と魔法でカバーできるので問題なしだ。
「イツカにゃんっ! 前のやつスルーしちゃって!」
「おう!『0-GX』!!」
楽しそうにかけられた声に従い、イツカが第三覚醒を行使。瞬間移動で前に出る。
こんどはイツカが言った。
「こいつらこのまんま、基地まで引っ張ってっちまおうぜ!
その方がいろいろ手間省けるしな!」
「アイアイ!」
「了解!」
そのとき、イツカは――そしておれは、気づいていた。
今回の『黒チェシャ』は『ホンキ』であると。
タカヤさんのドライビングテクニックで砲撃をかわし、こちらからは斬撃と銃撃をお見舞いしながら、基地へと向かう。
と、タカヤさんが声をあげた。
「あれっ、白ちゃんズと留学生ちゃんズがきゃいきゃいしてる!」
「へ?!」
「あいや、いま基地はいってったけどさ。
だいじょぶ基地の方には連絡す」
そのとき、ふたたび拡声器からあおり系ハスキーボイスが響き渡る。
『オーイオイオイ! せっかく急いできてやったのによォ!
出てきてオニーサンたちの相手してくれよ! ソ』
これを言わせてはまずい。
あいつらはいちおうでも、月萌国民だろう。それがソリステラスの留学生たちを襲ったとなれば、ことは国際問題。最悪では両国間での戦争もありうる。
『瞬即装填』で『サイレントのオーブ』を装填、打ちはなった――が、それと気を同じくして、『黒チェシャ』の手にした拡声器が粉々になる。
見張り塔でライフルを構える、尼僧服のスナイパーによるものとすぐに分かった。
「はーい! 特盛イリュージョンボームっ!!」
「『ダブルアーク・スラッシュ』!!」
「『ロックちょー、プレス~』」
続いて車列を襲うのは、クーリオ、ソウジ、そしてルゥさんによる連携攻撃。
幻影のボムで追手の視界を。青の斬撃でタイヤの機能を。巨鳥の巨体での押しつぶしでHPをガンガンと奪われ、『黒チェシャ』は魔王軍の手に落ちたのだった。
最初次回分を書いたんですが、あれじゃあんまりなんで(バトルがナレ死状態=黒チェシャが完全『だれおま』)急遽この回書きましたorz
なんかいろいろ小説の神様に助けてもらってます。ありがとうございます。
次回! 黒チェシャが語る彼の胸の内。イツカとカナタの判断は?
どうぞ、お楽しみに!




