Bonus Track_77-1-2 ソリステラスの『突撃にゃんこ』! タクマ、魔王城に突撃する!(2)
前衛スタートラインについた二人が、それぞれ抜刀。音もなく剣先を触れ合わす。
かたや、神剣イツカブレードを構えた黒猫騎士。
かたや、星霊剣ブレスオブプレアデスを手にした魔剣士『絶地』。
黒のモフリキッドアーマーと、かつて見た軽鎧装備の二人は、「はじめ!」の声ももどかしく激突した。
イツカが高く地を蹴りとびかかれば、タクマが勢いを生かして斬りあげる。
二つの剣が交差すると、イツカは反動を使ってくるんとバク宙。そのまま距離を取ろうとするところへ、タクマが追って突きかかる。
互いに、必殺技はまだ出さない。剣士らしく、剣技でのやり取りを確かめ合っている。
こぼれる笑顔で、声を掛け合って。
「すげえなタクマ! ちょっとしか経ってないのに! また強くなってるっ!!」
「そりゃあ俺も! 頑張ったし、なっ!
イツカとおもっきし闘れなかったらつまんねえじゃんっ?!」
「へへ、サンキューな!!」
これだけ聞くとのんきそうだが、一太刀ごとに周囲に衝撃が飛びまくって、フィールドの隔壁はギャリギャリ音を立ててるし、地面もえらいことになっている。自己強化を使ってなくてこれとか、マジ危なくて近寄れない。
正解だった。荒ぶる剣士二人組だけでやらせといたのは。
そしてあらかじめ、携帯用端末のタイマーを起動しておいたのも。
変幻自在の斬りあい、あっという間に三分が経っている。
必殺技の応酬、そこからのシメと撤収を考えれば、そろそろぎりぎりのタイミングだ。
「ふたりともー! そろそろ決めよう!」
「おっしゃあ!」
エルマーが声をかければ二人は快諾。斬りあう手を休めないまま相談しあう。
「ストラーダ来るか?」
「いいぜ! タクマは?」
「もち新技だぜ! まだ粗削りだけどっ!!」
「やったああ!! そんじゃお客様ファーストで!!」
「りょーかいっ!」
まずはタクマが大きく後方に飛び、着地と同時に咆哮、チャージ。
タクマの気の高まりに、天地の力が呼応し、集い、その全身をすばるの星色に染める。
「おおおおおっ! いくぞっ、第二階梯! 辰・地・斬っ!!」
解き放たれた衝撃は、地を割りすすむ星色の流星となって、イツカを直撃。
これはやばい。HPの八割が一気にぶっ飛んだ。
まあそれを平然と、というかむしろ嬉々として食らいに行くイツカもたいがいやばいが。
本番ではどうなるか。もちろんおれたちも強化や補助は入れるけれど、あちらには月萌軍、そしてなによりエルマーがついている。
エルマーの視線の配り方を見れば一目瞭然、二人はすでにいいバディとなっている。
バディバトルはこの二人の性にあっているようだし、二人の相性もいい様子。
二人と戦場でまみえる第四陣までに、ガチでやりあえるよう。おれたちもいっそう鍛えておかなきゃならない。
だって、二人は今日、『おれたちと』やりに来てくれたのだから。
タクマとエルマーはおれたちを見た瞬間、白のリボンを確認してうなずきあってた。それが何か、知っていたのだ――ほぼ確定的に、アスカ経由で。
「それじゃあおっかえしー!『0-G*』――!!」
イツカはというと気楽な様子で、金に輝く闘気のリボンをタクマにおみまい。これまたHPの八割をぶっとばした。
同時に、アラームが鳴り響く。
「はい、そこまでー!」
土煙もまだ晴れぬフィールドを開放。エルマーともどもイツカとタクマに歩み寄る。
仲良く余韻に浸ってる二人にお疲れを言って、ポーションを渡して。
「さ、それじゃあ基地見てって。おやつも用意するからね!」
「やったー! ゴチになります!!」
「ありがと。ごちそうになります!」
そして基地の門をくぐった三秒後、無粋なほどの大音量が響いてきた。
声の源は、迫撃砲と一緒にトラックの荷台にのっかっていたならずものファッションの男だ。
『オーイオイオイ! せっかく急いできてやったのによォ!
出てきてオニーサンたちの相手してくれよ! ソ』
資料によれば『黒チェシャ』のあだ名がついたテロリスト。当然、指名手配済みだ。
待ち受けていた警備たちの総攻撃――レティシアさんによる狙撃、クーリオの特盛イリュージョン・ボム、ソウジのダブルアーク・スラッシュ、さいごに巨鳥形態ルゥさんの『ロックちょープレス』が炸裂、車列ごと地に伏した。
語り手はくぐつのカナタの方でした。
けしてミスったわけではないのです^^
ほんとはこっちは本体カナタにしようと考えてましたが難しかったんでやめときました。
次回、ちょっとだけ『チェシャネコ』がしゃべってくれるようです。
どうぞ、お楽しみに!




