Bonus Track_75-7 VR世界のアナウサギたちはデジタルな秘密基地で笑う~アスカの場合~
また来た、お宅訪問会と見せかけて……です^^
それから僕たちは、基地内をざっと見せてもらった。
広く大きな正面入り口から入ると、昇降口を経て中央通路が伸びている。
外用の靴から履き替えて進んでゆけば程なく大食堂があり、そこを中心にさまざまな施設がある……といった構造だ。
中央通路を左に折れる角には医務室がある。回り込むように曲がってゆけばその先は、銭湯風の大浴場と、それに隣接した畳敷きのお休みどころ。大きく明るい窓からは、ちょっと落ち着ける和の趣の内庭がみえる。
ゆったりとした通路を抜けると、どこか高天原の寮をほうふつとさせる居住棟に入った。
各室にしっかり居間寝室バストイレミニキッチン、洗濯乾燥機とバルコニー完備のあたり、三ツ星レベルかちょっと上といっていい。
一方で勉強部屋はあっさり。寝室や居間の一角にシンプルなデスクセットふたつが置かれている程度のもので、本格的なやつは専門施設部にあった。
中央通路を右に折れる角は二つある。最初のものは応接と客室のある迎賓館へ続く通路だ。倉庫を挟み奥側のそれが、専門施設部に続いている。
専門施設部の左壁には図書室風のスタディルーム、大小の多目的室の扉が。右の壁にはクラフターズ・ラボ、ログインブースコーナーの扉が順に並ぶ。
スタディルームの奥には資料室が続き、多目的室群をパスしたどん詰まりには、上への階段が見える。戦略会議室があるとのことだ。
一方、ラボとログブコーナー、さらには医務室は室内奥の階段で、ジムとプールを有する地下フィールドフロアにつながっている。即時実験や実戦訓練、メンテができるし、けが人が出た場合には当番のプリーストが直行するのも可能というわけだ。
現行の月萌軍基地も構造としてはこれに近いが、こちらは規模の小ささがアクセスの良さに貢献している印象である。
ぶっちゃけとても『何かあったら逃げる』前提とは思えぬ作り込みよう。
このときの画像を見たお偉方の何人かは笑った。
たいした自信だ。今のやつらの有利は、われらがやつらを『肥育』しているからであるにもかかわらずと。
かれらは大事なことを忘れている。
あの基地が『ある』のはヴァルハラフィールド=VR空間。
ドアは単なるポータルで、その向こうははるか彼方に、なんてことだって容易なのだ。
そう、リアルのあの場所に『本当にある』のは、防衛システムと壁などの外構だけ。
ドアや窓の『内側』はすべて、まったく別の場所に存在している。
最悪、ドアも窓もぶっ壊してつくりなおしてしまえば、簡単に避難引っ越しができるのだ。
僕は当然それに気づいていたし――
そのことにカナタももちろん、気づいていた。
けれど、僕たちはそれを言葉にしない。
ただ、にっこりと笑みかわすだけだ。
敵対する者たちのココロに、根を張りめぐらせてゆくために。
甘く有毒なまぼろしを。きたるべき日にその土台を、脆く崩れ落ちさせるために。
基地って土足なのか靴を履き替えるものなのかを調べるのに一時間。もの知らないとこういうとこで時間とられます……
いやすくなくとも日本は土足じゃないだろとは思ってましたけどっ(/_;)
いちおう『リアル感をだす仕掛け』部分ですのでこだわりました。
次回、ちょっぴりしょんぼりモードの『もうひとりのイツカとカナタ』と、ノゾミお兄さんの会話の予定です。
どうぞ、お楽しみに!




