75-5 わさわさ! 魔王軍のミッドヌーン・ティータイム!
「おつかれさまです、みなさん。
お茶と軽食を用意しましたので、めしあがってください!」
軍人さんたちはいろいろ大変だ。
現に、前回のバトルで捕虜になったルシードとマユリさんは、いまも軍施設内に留め置かれているという――経過観察ということだが、スパイになりはしないかと疑われてもいるのだろう。
そんなわけで、彼らには丁重にお帰りをいただき。
アスカと彼についてくる者たちを連れて基地に戻ることにしたのだが……
なんと、ハナナさんとルイさんもついてきた。
『これはあくまで表敬訪問ですっ!』
『アスカ君だけに全部を押し付けては、けじめがつきませんし!!』
そんな風に主張して。
いやいや、それじゃ本末転倒だよっ? とアスカも言っていたがふたりは譲らない。
結局『わたしたちバディが付き添い、確実に帰還させます』とマルヤムさんが申し出てくれたことで、ツヤマさんたち月萌軍の人たちもそれじゃあと言ってくれた。
そうなるともちろん、マルヤムさんの恋人であるケイジが来ないわけがない。もちろんユキテルも一緒だ。
予想外の展開だったが、無理に断ることでもない。お茶したらちゃんとおうちに帰ってもらうからねと確認して、ご訪問を歓迎することとした。
遊撃手のひとり、尼僧衣の女性までもがはいはーいと手を挙げたのも予想外だった。
スコープを外した顔を見て納得した。どうもなんか見覚えあると思っていたら、ティアブラでたまに交流のあったシスターさんだったのだ。
なんとなくデジャブを覚えるやりとりののち基地に入れば、笑顔のコトハさんたちがこうして出迎えてくれたというわけである。
「あ、え、いやっ……オレたちはまんま帰っちゃうし、押し掛けた身で悪いからっ」
ケイジとユキテルも、帰る主のある身だ。魔王軍のシールタトゥーはつけてない。
それゆえ敵として、警戒を抱いての同行だったが、これにあわてて遠慮する。
その背を押したのが、一仕事終えて戻ってきたマネージャー隊、というかアイラさんだった。
「ダメだぞ~後輩。すでに数に入っちゃってるからね~。
っていうか月萌軍人さんたちの分も一応用意してたから余り気味なのよ。
そういうわけで遠慮せず飲んだ食った☆」
「え、あ、アイラ先輩――!!」
傭兵組がそろって声を上げる。
きけばアイラさんは、かつてはトップランクの傭兵で、卒業後もときどき顔を出していた『みんなのお姉さん』ポジの大先輩であるらしい。
そのアイラさんに押されてはかなわない。
ケイジとマルヤムさんは恐縮しつつ、ユキテルとオフィリアさんはそんじゃ~とのんきに笑いながらお茶会会場に入っていった。
「はーうまー! コトちゃんこれうんまー!!」
「(もぐもぐもぐ)」
「こっちもおいしーい!」
「ごちそうさま、先に始めさせていただいてたわよ」
「おーいはやく来いよ! うんまいぞこれー!!」
すっかりお茶会モードになった大食堂。そこにはもう、アスカとハヤト、リンカさんとサクラさん、クレハとチナツ、そしてもちろん女神クレイズと幻獣五人衆、さらにはレティシアさんも加わってわいわい。
先に入ってもらっていたメンバーと一緒に、ひとあしさきにお茶をはじめていた。
全員すっかり『勝手知ったる他人の家』状態だ――さっきは配膳などを手伝ってくれていたけど、それでもなじむのはやすぎである。
驚きあきれるやら、頼もしいやらと思っていれば、勤務先での最終的ないろいろを終えた、オウマとムネツグ、トビーとアッシュ、もやってきた。
「おーいかえったぜー!!」
「ただいまもどりました!!」
「あれー? カルテットは?」
「あいつらオーバーヒートで後退しちまったからいねーんだよ」
「マジか!」
「なーんだー、それならしゃーないなー」
と、ふいにやさしく肩をたたかれた。
「おにいちゃんたち?
ほらはやくお席について。リーダーが座らないと、お茶会が始まらないよ?」
かわいく微笑むのはソナタだ。
この笑顔を前に、もうすっかり始まってるなんて野暮なことは言うまい。
おれたちが用意された席に着けば、だれからともなく乾杯の構えに。イツカと二人、タイミングを見て立ち上がった。
「それじゃあ、乾杯しましょう!」
「みんな無事に帰って、お客さんもきて、仲間も増えて!」
「ハナナさんとルイさんも自由になれて!」
「このよき日に!」
「かんぱーいっ!!」
会場のあっちでこっちで、たくさんのカップがかわいい音を立てる。
このあとおれたちはハナナさんとルイさんに「わたしたち、二人の味方になりたい!」「だからやっぱりここにのこる!」と食い下がられて、慌てることになるのである。
だんだんハーレム……ごほん、大所帯になっていきます……!
次回、アスカの暗躍。
どうぞ、お楽しみに!!




